徹底したデータ分析で、広告予算の適正配分を実現。 不動産業界に合う媒体評価を追求し、リアルとWebを繋げる。

特徴ある不動産業界のデジタルシフトを支援

―まずはじめに、事業内容や、藤井さんと野田さんが取り組まれている業務について教えてください。

藤井:三菱地所レジデンスでは、不動産の中でも新築分譲マンションの開発・販売を中心に賃貸マンション事業、リノベーション事業、海外事業など住宅の分野で幅広く事業を展開しています。その中でも我々「販売業務部顧客コミュニケーション室」が担当している領域は、分譲物件の広告活動のフォローがメインです。

不動産物件は、小売店のように販売方法が統一されているわけではなく、個々の物件で違った方法をとらなければなりません。そのため、細かい業務は集約や統一を図ったほうが効率的なんです。私たちは主に、広告の細かい部分など、集約した業務のルール決めに取り組んでいます。

野田:私はソウルドアウトから出向し、藤井さんの部署に所属しています。特にWebプロモーションのサポートに取り組んでいますね。運用や媒体の細かい部分の知見を提供し、ソウルドアウトとの橋渡しをしています。

藤井:不動産業界では、これまで紙や看板といった広告物が主でしたが、近年ではWeb広告の比重が高まっています。Web広告の専門性を持つ人材が社内で限られているため、ソウルドアウトさんに出向という形でお手伝いいただいています。

ーその中で、ソウルドアウトとはどのような施策に取り組んでいますか。

藤井:私が約2年前に配属される前から、ソウルドアウトさんとは、主にチラシなどのリアル媒体からWeb広告へのデジタルシフトを進めてきました。現在は、首都圏の大部分と、札幌から九州までの地方6エリア全てで、分譲マンションのWebプロモーション全般に取り組んでもらっています。お付き合いを始めた頃は、物件が持つ広告予算の中の10~20%だったWeb広告の予算が、今では60~70%とかなり増加しています。

不動産は、一生に1、2回しかない大きな買い物なので、他の事業とは少しユーザーへのアプローチが異なります。例えば、EC(インターネット通販)であれば、ずっとサービスを使い続けてくれるユーザーがいるので、その方々に合わせてサービスを最適化していきますよね。でも不動産は、一度購入すれば最低でも5年は買い替えない場合がほとんどですし、一生住み続ける前提の方もいます。そのため、常に新しいユーザーを探し続ける必要があるのです。

現在、Webプロモーションはソウルドアウトさんの他にもう一社お願いしていますが、ソウルドアウトさんは不動産に詳しい方が多い印象です。その分、不動産業界のある種特殊な集客に関しても話が早く、担当者もやりやすさを感じていると思いますね。物件ごとにニーズややりたいことも違うので、フットワークの軽さも重宝しています。

大西:そう言っていただけて大変嬉しいです。ソウルドアウトでは2018年度より、不動産業界の顧客企業様の成長を加速させていけるよう、不動産業界に特化したWeb広告の営業部門および支援部門を組成しています。

ー2018年には、三菱地所レジデンスの、販売物件のプロモーションに最も貢献したWeb広告代理店の担当者に贈られる「グッドサポート賞」をソウルドアウトが受賞しましたよね。

藤井:賞は各物件の販売責任者の意見をメインに選んでいますが、やっぱり不動産プロモーションへの理解度の高さが理由にあげられたんじゃないでしょうか。現場にもよく足を運んでくださいますしね。

データ分析で、最適な広告予算配分を可能に

ーWebプロモーションの中でも、特に注力して取り組まれている領域はありますか。

藤井:特に、広告予算の適正配分に力を入れています。不動産だと、例えばこの新築マンションならいくら、というように、プロジェクトごとに広告予算が決まっています。売上が上がったから広告費を伸ばす、というモデルではないんですよね。あらかじめ決まった予算をどう振り分けるかで、効果が大きく変わってきます。そのため、広告を効率化するために、予算の適正な配分を重視しました。

ー具体的に、どのように行なっていったのでしょうか。

大西:データを基に、厳密に媒体評価をできるようにしました。これまでは、マンションの見学にきたお客様に、どの媒体を見て来場したかのアンケートのみを重視していました。リアル媒体なら「XX新聞の折込チラシ」「〇〇新聞の紙面広告」「駅の看板」、Webなら不動産ポータルサイトの名前、Web広告を見た媒体名、といった具合です。

ただ、そうするとお客様の印象によるところが大きいので、実情と異なる場合が多かったんです。例えばテレビCMを打っている不動産ポータルサイトは印象に残りやすいので、丸をつけやすい。でも実際にそのマンションの資料請求をしたのは、違う媒体である場合もありました。お客様の印象に頼るのではなく、どの媒体に接触したのか、どの広告がきっかけになったのかをもっと精緻に判断するため、データを取れるようにしていきました。

野田:通常は、媒体ごとに一つのアカウントを作り、色々な物件を一括で管理しているんです。でも、それでは物件1件ごとのデータは取れません。そこで、物件ごとに入り口と出口を分けて繋いで、個別にデータを取れるようにしていったんですよね。ただこれは、技術的にとても手間がかかることなので、あまり踏み込んでやっている企業はありませんでした。業界全体でも、ここまで細かくやっているところはないと思います。

藤井:他がやっていなくても、正確な数字がわかることが大事だと思ったんです。データがあると、どこに予算を投下するかの判断がしやすくなります。

不動産は昔からある古い業界ですが、例えば若い世代の中には、資料請求やチラシなど、昔ながらのプロモーションの仕方に疑問を持っている人もいます。データがあることで、物件によっては自信を持って、チラシをやらないという判断もできるようになりました。

また、コストの削減にも効果があります。我々が出している広告は、看板やチラシなどのリアル媒体、Web媒体、不動産ポータルサイトの大きく3つ。この中で、不動産ポータルサイトは非常にコストがかかります。そこで、公式サイトへの誘導を重視して予算を配分するようにしました。データがあるからこそ、ポータルサイトに割いていた予算を公式サイトへの誘導に回す決断ができたんです。この2年間では、特にそういった部分に取り組んできましたね。

大西:藤井さんは、効率化は大切にされていますが、ガチガチに固まっている感じはしないですよね。チャレンジに対して前向きに考えていただけているのが、代理店の立場としては非常にありがたいです。

藤井:効率化ばかり追い求めると、どうしても新しいことへのチャレンジがしにくくなってしまうので、そうならないように気をつけています。お客様も変わっていきますし、PCからスマートフォンへ移行するなど環境も変わっていきますから。そういった変化に敏感になって、新しいものは試すようにしています。特にWeb広告は、少額から試せる場合も多いので、トライしやすいですね。

Web広告の成果から物件の成約まで、広範囲のサポートを

ー最後に、今後の展望について聞かせてください。

藤井:今後は、媒体を複合的に評価できるようにしたいと考えています。今は、CV(コンバージョン=Webサイトにおける最終的な成果)の直前に見ていた媒体を評価する「ラストクリックモデル」を基本にしています。

しかし、お客様はWeb上でさまざまな行動をするので、CVの直前に見た媒体が全てではないですよね。最初に見た媒体に重きをおくのか、見た媒体全てを均等に評価するのかなど、「アトリビューションモデル」で色々な評価手法を検討していきたいと考えています。

加えて、ソウルドアウトさんにはWeb広告の運用だけではなく、マーケティングオートメーションツールを使ったサポートもしていただいています。これによって、Web広告の成果を物件の購入まで繋げて見られるようにしたいと考えています。

不動産広告は、その他の業界とCVの定義が異なります。ECだったら購入がCVですが、不動産広告では資料請求や来場予約なんですよね。だからこれまで、実際の購入と広告の効果は分断されている状態でした。理想としては、Web広告の成果を、モデルルームへの来場や物件の契約まで繋げて、確かなデータで見られるようにしたいです。そうすることで、広告の出し方も変わってくると思います。

大西:そうですね。マーケティングオートメーションツールの導入は、ものすごく大きいと思います。これまでは、資料請求などWebで完結する部分しかお付き合いさせていただくことができませんでした。しかし来場、契約というオフラインの成果を含めた広告の成果と物件の購入を繋げて計測が可能になれば、物件の契約まで一括してサポートできるようになります。

また、三菱地所レジデンスさんは地方にも支店をお持ちなので、弊社の地方での知見を生かしたサポートもできればと思っています。

藤井:実際に、関西では連携の話が進んでいます。地方は、首都圏とはプロモーションの仕方もお客様の購買活動も、媒体の価格のバランスも違います。

例えばテレビCMは、首都圏だと単価が高すぎて、物件単独ではまず行いません。これに対して地方は、物件単独でもテレビCMが打てるんですよ。単価が比較的に安いし、見ている世帯も多いですから。大西さんがおっしゃったように、Web広告だけではなく、不動産広告全体に知見がある、バランス感覚のある代理店さんにお任せしていきたいですね。

加えて、地方で連携することで、シナジーを生み出せればと考えています。地方には、地方でしか発見できない良いやり方があると思うんですよ。そういった好例を吸収し、首都圏にも転用していきたいですね。

プロフィール

藤井 佑至(Yuji Fujii)
三菱地所レジデンス株式会社 販売業務部顧客コミュニケーション室 広告企画グループ リーダー
2006年に新卒で入社後、新築マンションの販売・開発・福岡支店勤務等を経て2017年より現所属。販売時代に携わった広告領域の本社業務に従事。不動産広告の中でも特にWeb領域を主幹として、販売物件の広告活動の分析・支援などのフォローを行う。
野田 周作(Shusaku Noda)
ソウルドアウト株式会社 メディアテクノロジー本部メディアパートナー部
他業種から2011年にオプトグループ入社後、不動産領域のデジタルマーケティング支援に従事。その知見を活かし、2017年より現在において三菱地所レジデンスに出向し、社内のデジタルマーケティング全般・分析業務等の支援を実施。2018年よりソウルドアウトへ転籍。
大西 勇行(Isayuki Onishi)
ソウルドアウト株式会社 第一営業本部不動産営業部エグゼクティブコンサルタント
住宅メーカーを経て2006年にオプトグループ中途入社、2018年ソウルドアウトへ転籍。一貫して不動産領域のデジタルマーケティング支援に従事。不動産領域特有のオフライン効果を見据えたプロモーション支援を行う。
※プロフィールは2019年7月22日時点のものです。
※対談内容はインタビュー時点のものです。
※本記事はソウルドアウト株式会社が運営するSOUL of SoldOutの記事の転載です。

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