デジタルシフト未来マガジン 〜D2Cブランド「AWAY」の成功を紐解く〜

AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどだ。「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
今回、ご紹介するのはD2Cブランドとして注目を集める「AWAY」です。AWAYはD2Cブランド出身の2人が立ち上げた企業で、初年度の受注額1200万ドル(約13億円)、これまでの資金調達の合計1億ドルと、大きな成功を収めています。

そんなAWAYのビジネスモデルとなる「D2C」は、Direct to Consumerの略で、卸売業者や小売業者などを介さず、メーカーが直接消費者に製品を販売することを指します。ECサイトやソーシャルメディアの普及で、メーカーも消費者との接点を簡単にもてることから、近年注目されている分野です。通常のメーカーと比べ、製品以外に必要なものが少ないことから参入障壁が低く、日本でも増えてきている形態です。

・【概要】AWAYのビジネス

AWAY」は2015年に創業した、スーツケースを扱うD2Cブランドです。創業者の2人はメガネのD2Cブランド出身で、スーツケースの専門家ではありません。それにもかかわらず、初年度の受注額は1200万ドル(約13億円)で大きな成功を収めています。販売開始から2年目には10万個の販売を達成し、今までの資金調達の合計は1億ドルに至ります。

ちなみにですが、アメリカのスーツケース市場は2018年の販売金額で55億ドル(約6000億円)、市場の成長率は1%未満です。バッグ市場における主要ブランドのシェアは、サムソナイトが17%、ルイ・ヴィトンが5%、デルセー、リモワなどが続きます。

AWAYが扱うスーツケースは高性能かつ、充電ができたり位置を探せたりと多機能です。
ただし、類似商品はあり、製品自体の優位性は低いと言えるでしょう。

AWAYのブランドコンセプトは「First class luggage at a coach price」、直訳すると「普通客車の料金でファーストクラスの手荷物を」で、類似の高級ブランドの製品より、安い価格設定にしています。
中間業者を通さないD2Cブランドらしく、中間マージンを削減することでコストを下げ、高級ブランド並の品質を低価格で実現しているのです。

・“デジタルシフト”なポイント

AWAYのビジネスモデルを語る上での大きなポイントは、「未経験」「非・差別化」「ブランディング」の3つです。これはD2Cブランドの強みとも共通するものです。
■ポイント1:「未経験」
創業チームはマーケッターで、企画はプロですが、スーツケースの製造経験はありません。これはD2Cブランドの創業に多いパターンで、資金調達後に製造ノウハウを持ったメンバーを入れるのです。

■ポイント2:「非・差別化」
AWAYのスーツケースは、競合と比べて明確な差異があるわけではありません。機能面では類似商品もあるのが実情です。しかし、卸売や小売といった中間業者を通している他社と比べれば、中間マージンが無いAWAYは低価格を実現できます。D2Cブランドは、製品レベルの差異や差別化が無くとも成功できるという好例です。

■ポイント3:「ブランディング」
製品自体に独自性がある訳ではありませんが、「低価格で高品質を実現する」というブランドコンセプトは明確です。製品で差別化しにくい反面、ソーシャルメディアやECサイトなど消費者と直接的なチャネルを持つD2Cブランドは、自らの世界観を伝えやすいと言えます。

・AWAYが仕掛けた「ブランディング」施策

AWAYは上述の3つのポイントの中でも、「ブランディング」を上手く活用しています。

先ず、製品販売前には、人づてで集めた40人に協力してもらい、それぞれの旅のエピソードや魅力をまとめた本を製作。この本を1200人に先行販売し、購入者には製品の割引クーポンを渡すというマーケティングを展開しました。

また、YouTuberとコラボレーションし、「away travel review」でレビュー動画をあげています。インスタグラムでは、「#travelaway」で製品の写真を募り、投稿数は5万件を超えました。その中には、女優のジェシカ・アルバやマンディ・ムーア、ラッパーのJay-Zなど海外セレブも含まれています。

この他、記事広告も含め、積極的にPR施策を実行し、メディア露出を増やしているのです。

SNSを中心にデジタルマーケティングを仕掛けたり、製品の販売前にプレマーケティングを実施したりと、積極的にブランド施策を展開することで、「価値のある製品をリーズナブルに提供する」というポジショニングで、AWAYというブランドを確立したのです。

プロフィール

石原 靖士(Yasushi Ishihara)
株式会社オプト 執行役員
株式会社オプトホールディング 執行役員

ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)にてネットワークエンジニアとして従事。2006年にオプト(現オプトホールディング)入社。2010年にデジミホ(旧オプトグループ)取締役に就任。2015年にオプト執行役員に就任し、テクノロジー開発・オペレーション・クリエイティブ領域を管掌。2019年からは事業開発領域を管掌。2019年4月よりオプトグループ執行役員を兼務しデジタルシフト変革領域管掌。