Society5.0とはどんな社会?期待される変化をわかりやすく解説

Society5.0とは

Society5.0とは、簡単に説明すると、仮想空間と現実空間を融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する社会を目指す取り組みのことです。読み方は「ソサエティ5.0」です。近年、FinTechや不動産、金融、輸送業界、教育現場に至るまであらゆる現場でスマート化が進みました。その変化に伴い、AIなどを活用することで最適化をはかった社会を実現しようとするのがSociety5.0です。

Society4.0までの社会が抱える問題

狩猟社会のSociety 1.0、農耕社会のSociety 2.0、工業社会のSociety 3.0、情報社会のSociety 4.0と社会は変化してきました。Society4.0までの社会では、情報の共有や作業工程を分野ごとに分断し、高度にシステム化した結果、効率化が進んできました。

しかし、少子高齢化によって労働力の総数が減少し、それに伴って行動範囲は狭まり、こなせる工数は減少してしまいました。属人的な要素で不足が発生したために十分な対応ができなくなってきていることが問題点としてあげられていました。そして、こうした課題は今度ますます拡大すると考えられており、人的リソースの限界が経済発展の限界を意味してしまうと考えられています。

Society5.0が実現する社会

Society 4.0までの社会では人の能力が必須でしたが、人的リソースには限りがあるということが課題でした。さらに、知識や情報が共有されず分野横断的な連携が不十分であり、あらゆる情報から必要な情報を見つけ分析する作業が大きな負担になっています。

そこで、Society 5.0では、全ての人とモノが繋がり、あらゆる知識・情報を共有することで課題や困難を克服する社会を目指します。

さらに、AIなどのロボットの導入で必要な情報がすぐに手に入るようにし、自動車の自動走行などの技術を駆使し少子高齢化の問題の解決や地方の過疎化、貧富の格差を克服しようとしています。

Society 5.0が実現することによって、一人ひとりが快適に生活を送ることのできる社会を実現します。

Society5.0のしくみ

従来のシステムでは、人間が仮想空間に存在する情報にインターネット経由でアクセスし、必要な情報を選び取ったり、分析していました。その一方でSociety 5.0では仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムを取り入れることで、ビッグデータをAIが解析し、その結果が現実世界の人間にフィードバックされるようになります。

今までは、情報を探し出すことも解析することも人間の役割でした。そこをAIに任せることができるようになると、これまでに実現できなかった新たな価値を産業や社会のさまざまな局面にもたらすことができます。

Society5.0の到来で期待される変化

ここまでSociety 5.0の社会の実現によりSociety 4.0の社会が抱える多くの課題を解決することが期待されていることを説明してきました。ここからは具体的にSociety 5.0がどのような課題を解決するか解説していきます。

持続可能な産業化の推進・人手不足

SDGsが目標としている持続可能な世界の実現もSociety 5.0の重要なテーマの一つです。

そこで必要とされるのが、食糧生産やエネルギー供給、物流などさまざまな場面で効率的で質の高いインフラの整備です。

現在の日本の少子高齢化は深刻で、人手不足によってインフラが行き届いていない場面がたくさんあります。そこで、IoTやAIを導入し、人間が行っていた作業を代わりに任せることで人手不足の解消を目指していきます。

食料の増産やロス

商品の増産や食品ロスの削減もSociety 5.0の目標のひとつで、SDGsで掲げられている飢餓や貧困を2030年までに解決することを目指しています。

この解決に向けてSociety 5.0では最先端技術とデータを利用しスマート農業と呼ばれる新たな農業を推進しています。

スマート農業とはロボット技術や情報通信技術の活用で省力・精密化を推進する新たな農業のことで、農作業での労力の軽減と栽培技術の向上が期待されています。

すでに一部ではスマート農業が実際に行われており、スマホで管理する水田の水管理システムなどの自動化が行われています。

スマート農業が本格的に普及することで、食品の計画的生産が可能になり増産や、無駄な食料を減らすこともできるとされています。

温室効果ガス(GHG)排出

地球温暖化は長年問題視されている課題で、日本の温室効果ガスの排出量は12億9200万トンで世界でもかなり上位に位置すると言われています。

日本は温室効果ガスの排出量を2050年までに80%減達成を目指しており、Society 5.0はその達成のためにもさまざまな取り組みを行われています。

スマートシティの取り組みを通してエネルギーを効率的に利用することで温室効果ガス排出を抑える取り組みを進めています。

高齢化に伴う社会コスト

総務省の調べによると日本は2019年9月の時点で65歳以上の高齢者の人口割合は全体の28.4%を占めており、日本は世界で最も高齢化率が高い国とされています。

そして、この少子高齢化が進行することで医療・介護の需要が高まり医師の高齢化や医療従事者の人手不足が深刻化してくると予想されています。さらに、全体の人口の減少によって地域の医療格差が引き起こされていることも懸念されています。

そこで、Society 5.0では医療・介護の需要にこたえるため、オンラインでの遠隔診療や医療現場へのロボットやAIの導入を促進しようとしています。

働き方や学び方の違い

ITリテラシーという言葉がありますが、新しいテクノロジーは便利な反面、使い方を間違いと思わぬトラブルに発展してしまいます。そのため教育の分野でも、テクノロジーの使い方とあわせ、子どもの頃から、デジタルとの向き合い方や個人情報に対する考え方、デジタルコピーなど著作権に対する教育など、学校や家庭で知識やマナーを教えていくことが必須になります。

地域間の格差

日本では地方の人口減少によって財政力や所得の格差が発生しているのも大きな問題の一つです。総務省の調べによると東京や埼玉などの関東圏では人口が増加している一方で、一部の地域では人口の減少が著しいのが現状です。

人口が減少するとその地域の財政力は低下し、公共サービスなども十分に行うことができずにさらなる人離れを引き起こしてしまうという悪循環になってしまいます。

Society 5.0では、こうした地域間の格差の問題を解決するために自動運転のバスによる交通手段の確保などを進めています。

自動運転のバスの就航は高齢化社会の問題も同時に解決できる策として地域住民の快適な暮らしを実現するためにも積極的に進められています。

Society5.0の実現を支える技術

では、ここからSociety 5.0の実現を支える技術を解説していきます。

IoT

IoTはInternet of Thingsの略で、モノがインターネットを経由して通信を行い、その情報に基づいて最適な制御を実現する仕組みのことです。

ここで指すモノとは、物理的なモノだけでなく自然の現象や生物の行動なども含んでおり、それらをインターネットを経由して繋ぐことで、あらゆるモノのデータを人の手を介さずにインターネットで送受信できるようになります。

簡単な例を挙げると、通信機能により「今、扉が開いています」「機械の調子がよくないです」という情報を受け取ることで、見守りの必要な育児や介護に役立てたり、機械の故障による事故や損失を未然に防ぐことが出来るようになります。

IoTの技術が進歩し、上手く導入することでモノのデータの収集、分析、活用、連携が人の手を離れたところでできるようになり、人手不足の問題解消などに大いに役立つことが期待されています。

ビッグデータ

ビッグデータとは、データの量、データの種類、データの発生頻度や更新頻度からなるデータ軍のことで、一般的なデータ管理システムで扱うには困難なほどの巨大なデータの集合です。

このビッグデータは日々リアルタイムに更新され続けており、それらを解析していくことでこれまでにない新たな仕組みを生み出すことに役立つと期待されています。

事業の拡大に役立つ膨大なデータとして重要視されているビッグデータは、業務フローの最適化やコスト削減、売上予測や問題や課題の特定に役立つとされており、産業成長でとても重要です。

効果的にビッグデータを利用することで、売上を伸ばした企業も多く、現在では中小企業もビッグデータを活用する例も多くなってきました。

AI

人工知能と訳されるAIは学習機能を有し、必要な情報を必要なタイミングで提供できる仕組みとしてSociety 5.0の社会の実現に際して大きな期待が寄せられています。

IoTによって膨大なデータが蓄積されていき、そのデータを解析して最適な情報を導き出すAIが社会にもたらす影響はとても大きいと見られています。

5G

高速且つ、大容量のデータの送受信を可能にする5Gには、通信のタイムラグの解消や一度に多くのデバイスとの接続を可能にすることから今後のIoTの発展には欠かせない技術とされています。

人的リソースを離れ、AIなどのロボットを活用していく中で通信速度や大容量のデータ収容はとても大切で、5Gは社会の発展に多きに役立つとされています。

ロボット

ロボットとの共存も目指しているSociety 5.0では、工場内でモノ作りを行う産業用ロボットやAIを掲載し介護や育児などに役立てられるスマートロボットなどの導入しより人の手を借りずに人を助けるロボットの開発に力を入れています。

従来のロボットは、人間が操作しなければなりませんでしたが、Society 5.0ではロボット自身が考えて動くことで物流や介護の現場で活躍させようとしています。

遠隔医療

極端に少子高齢化が進んでいる日本では、医療体制の変革も大きな課題です。とくに地方では公共交通機関の採算があわず、限界集落化が進む地域もあります。病院が近隣になく、どのように診療・治療していくかは深刻な問題です。AIやデジタルテクノロジーを導入することもひとつのアイディアでしょう。高齢者に日常的にデバイスを装着してもらい、血圧や体温など健康情報を収集し、AIが健康の悪化を事前に予測します。必要なら医師がテレビ電話などで診察し、医薬品はドローンで自宅まで無人配送する。そんな遠隔医療が構築する必要があります。

ドローン

無人航空機のドローンは、趣味としての活用のイメージがあると思いますが、近年は個人での利用からビジネスでの利用に世界的にもシフトしてきています。

農業にドローンを活用する例では、広範囲に及ぶ農薬の散布に利用されたり、物流では人手不足の過疎地域への郵便物の宅配を行う実験も進められています。

従来農業には畑仕事、物流には配達員の人的リソースが必要とされてきましたが、ドローンの導入で、これらの社会問題の解決に役立つとされています。

自動運転

自動運転技術を搭載する自動車は、CMや日常生活で見るなど、少しずつ身近なものになってきました。

そして、この身近になりつつある自動運転の技術もSociety 5.0の社会を実現するには欠かせないもので、自動運転の技術がより発達し、生活に取り入れられることで交通事故の発生数は減少し、過疎化や高齢化が進む地方での交通インフラの整備にとても効果的とされています。

キャッシュレス決済

現金以外のクレジットカードや交通系ICカード、QRコードによる決済をキャッシュレス決済と言いますが、このキャッシュレス決済が発達することで厳禁に関する業務の負担軽減が予想されています。

すでに、レジや店員の一切を廃止したショップも試験的に生まれています。

無人店舗

無人で店舗を運営できれば、人手不足の課題もクリアでき、ビジネスの効率化にもつながります。問題は会計やセキュリティ、商品の補充ですが、それらにデジタルテクノロジーを導入し、解決するというアイディアがあります。たとえば、入店は顔認証や手のひら認証で行い、商品を棚から出すだけで自動的に金額を計算する仕組みもあります。またそのまま電子決済ができれば、おつりの用意も不要です。さらに自動倉庫システムによって不足した商品を自動的に補充する、そんなシステムを構築できれば、完全な無人店舗の運営も可能です。

リアルタイム翻訳

リアルタイム翻訳の技術の発達により言語の壁がなくなり言語の壁がなくなり円滑なコミュニケーションが可能になります。

相手の話したことをリアルタイムで翻訳できる機器を耳につけるなどして、タイムラグなしでの意思の疎通が可能になります。

重要な国際会議ではもちろん、私たちの日常生活の中でも多きに役立てられることが予想されます。

VR(Virtual Reality:仮想現実)

現在ではゲームへの導入されているVRですが、このVRの技術もSociety 5.0の社会の実現に大いに役立つと注目されています。

住宅の購入や賃貸の契約の際の内見を、VRを使用して行ったり、企業の安全研修などで実際に経験はできない事故のシミュレーションにも活用ができます。

Society5.0への移行が進んでいる分野の事例

では、実際にSociety 5.0社会実現のための各分野の事例を紹介していきます。

医療・ヘルスケア分野

インターネットで情報をリアルタイムで見られるようにしているスマートハウスでは要介護者の生活を支えています。

ベッドのセンサーで対象者の呼吸や動静の計測、排泄にもセンサーを取り付け尿の異常がないかなどリアルタイムで情報を収集し、異常があればすぐに知らせることができます。

さらに、タブレットを利用したオンライン診療や、無人運転による薬の配布も医療現場で大いに役立っています。

すでにアメリカでは自動車の運転技術の研究を進めているNuro社が無人自動車を使い、3時間以内に処方箋を注文した人への薬の配達を行うシステムを試験的に導入しています。

移動・モビリティ分野

日本は自動車産業が基幹産業のひとつであるため、積極的にデジタル化・効率化が進められています。代表的なのが、MaaSです。電車やバスといった公共交通機関に加え、タクシーやカーシェアリング 、レンタルサイクルなど、あらゆる交通機関を一元管理し、最適なルート検索から座席の予約や支払いまでをひとつのアプリで完結できるサービスを目指して、各地で実証実験が行われています。

製造分野

モノづくりの現場では技術や経験を持った団塊世代の定年退職や、若年層の人口減少などにより、人手不足が深刻化しています。日本では移民を受け入れていないため、外国人労働者によってカバーすることもできません。そこで、AIやロボットを積極的な導入する動きがあります。作業を効率化し、人件費を削減できるという効果もあります。

金融分野

人生100年時代では、計画的な資産運用は重要です。しかし、適切な資産運用を行うのは難しく、ましてや長期的に必要となると難しいと感じることが多いでしょう。

そういった資産運用の場面でウェルスナビ株式会社はロボアドバイザーと呼ばれるAIで資産を管理し、適切な運用を長期的に行うサービスを展開しています。

公共サービス

公共サービスでも人材不足のなか、サービスの質を落とさず、より効率化した業務体系を構築するため、デジタルテクノロジーの採用がはじまっています。たとえば、福島県会津若松市ではAIを使った自動応答サービスをスタート。よくある問い合わせに対して、ボットが対話形式で回答してくれます。窓口の開庁時間に限りがあった従来のサービスと比べ、24時間365日いつでも対応が可能なため、むしろ満足は高いと言われています。今後はデータを集積し、分析することによって、より精度の高い案内ができるようになっていくはずです。ほかのも、市内の道路の損傷状況をAIが測定するシステムなどを試験的に導入する自治体もあります。橋や道路、トンネル、水道管などライフラインは全国で老朽化が進んでいるものの、点検やメンテナンスが追いついていないと言われています。こうしたAIの活用が効果をあげれば、導入する自治体も増えていくはずです。

農業分野

農業分野も、耕うん、栽培、収穫、出荷など人手がかかる一方で、効率化や生産性の向上がなかなか進んでいなかった分野です。近年はセンサーやAIのコストダウンによって、デジタルテクノロジーを導入しやすくなったこともあり、さまざまなIT技術が導入されています。たとえば、クボタは2台のトラクターを連動させ、一台は有人で、もう一台を無人で操作できる自動走行トラクターを開発しています。作業時間の大幅な短縮に貢献しています。さらにAIの画像認識機能を使って、収穫・出荷作業での効率化が進められています。ベルトコンベヤーで流れてくる収穫したトマトをカメラで撮影し、色や形から選別し、仕分けしていきます。完全に無人で作業できるようになれば、24時間、稼働させ、効率的に出荷ができるようになります。

エネルギー分野

温室効果ガスの排出量を減少させる必要があると先述しましたが、実際家庭向けに温室効果ガスの排出量を減少させる技術を導入しているのが三菱電機株式会社のマイサートと呼ばれるスマートメーターです。

マイサートを設置することで、住宅全体の電力使用量や、家電ごとの電力使用量を計測、データ化し、利用者の省エネ意識を高める狙いがあります。

観光分野

観光分野では、空港で専用のQRコードから自分の顔やクレジットカード情報を登録することによって、訪れた飲食店や観光施設での支払いや入館が顔認証で完了し、支払いも財布を出すことなく、事前登録したクレジットカード情報で決済することができるサービスの検討も進められています。財布を出す必要がないということは防犯の面でも優れています。そのほか、スマホアプリを利用して、ニーズの高いタクシーでの送迎ルートをAIで割り出し、利便性の高いサービスを提供しようと模索する自治体もあります。

防災分野

日本は地震や台風、火山噴火など、災害のリスクが高い地域だと言われます。天気の予測とともに、地震の予測も精度が高まっていると言われていますが、そこにはAIを活用した防災、減災システム、被害予測や避難経路の予測などが、活用されています。今後も首都直下型地震のリスクや、南海トラフ沖地震が発生する可能性が指摘されるなど、AIの活用はますます求められるはずです。

Society5.0で求められる人材とは?

AIやビッグデータの収集・解析など、これからの時代に活躍する人材には、理系的な専門知識が求められます。また、同時に人々に技術の重要性や導入する理由など、対話し、参加を促すコミュニケーション能力も求められます。さらに、これまでの常識や古い慣習にとらわれない自由な発想を持つことが、求められていきます。課題を自分で見つけ、解決する方法を模索できる、そんな人物が重宝されるはずです。

Society5.0時代の到来に期待しよう

今回は、Society 5.0の社会や現在抱える課題や、解決策、具体例をご紹介しました。

Society 5.0の実現に向けて、これからさらにAIやロボットと共に協力する社会になっていくことでしょう。さまざまな分野で最適化を図った世界で人を中心とした便利で持続可能な社会の実現が期待できます。

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