ステーブルコインはなぜ価値が安定する?仕組みと将来性をわかりやすく解説

安定した価格の実現を目的としてつくられた「ステーブルコイン」という仮想通貨(暗号資産)に、いま注目が集まっています。

ステーブルコインとは

ステーブルコイン(Stablecoin)は、米ドルなどの法定通貨や金などの資産価格と連動し、安定した価格となることを重視した仮想通貨(暗号通貨)です。ビッドコインなど従来の仮想通貨は大きな価格変動があり、投機的な取引が一般的でした。ステーブルコインは法定通貨に価格をペッグ(法定通貨の価値に連動)し、安定性を保つことを目的としています。これにより、ステーブルコインは仮想通貨の利点を保ちつつ、実用性と安定性を兼ね備え、決済手段としても活用されています。

ステーブルコインができた経緯と現状

2009年にビットコインが誕生したことに始まった仮想通貨ですが、ステーブルコインが本格的に利用されるようになったのはここ数年のことです。ビットコインなどの従来の仮想通貨は、価格の変動幅が大きく、そのデメリットを解消する目的で生まれたのがステーブルコインです。

一般的に仮想通貨は不安定な資産であるため、価格が大きく上下する傾向がありますが、トレーダーにとってこの点は変動幅の大きさを活かし、投機的に利益をあげられるチャンスです。そのため、株式ブームのようなものが生まれ、投資する人が大きく増えたのです。

しかし、実生活においての決済や長期的な資産としてみた場合には、安定性を欠くため、不適格だとされていたのです。そこで、安定性をもっている現物資産の価格と連動させることで、価値を一定に保つことを目的にできたのがステーブルコイン。投機的な特徴は薄れますが、その分世の中での普及を促し、実用性が高まっています。

業界関係者の間で「クリプトウィンター(冬の時代)」と囁かれた2022年は、仮想通貨(暗号資産)市場が大きく冷え込んだ1年となり、総時価総額が2021年のピーク時と比べ1/3以下の1兆ドル割れとなるなど、大幅な減少がみられました。一方で、ステーブルコイン市場は違う様相をみせています。ステーブルコインの総供給量は、2022年のピーク時からさほど減少しておらず高止まりしている状況です。これは、DeFi(分散型金融)サービスの台頭や、Apple payでUSDCが利用できるようになったなど、決済手段や銀行入金といった実生活に紐づく利用の場が増えることで、ステーブルコイン保有のインセンティブは更に高まっています。

ステーブルコインの特徴

ステーブルコインは英語の「stable」から名づけられており、これは安定した・変動のないという意味です。これはうえで説明した誕生の経緯を反映した名称になっています。それでは、どのようにして安定した通貨にしているのかといえば、法定通貨との交換比率を固定化することで対処しています、例えば、対象が米ドルの場合には特定の条件を満たせば通貨との交換で一定の米ドルの入手が可能です。この仕組みにより普通の仮想通貨よりも抑制が働いて安定しており、価格変動は少なくなっている特徴があります。

ステーブルコインの仕組み

ステーブルコインは他の仮想通貨と同様にブロックチェーン技術を用いて成り立っています。ブロックチェーン技術は現実世界の銀行のような金融システムではなく、分散台帳に数値を記載していくことで全体のシステムを形成しています。また、一般的な取引のように買い手と売り手がやり取りを行うことで価値が上下する仕組みです。仮想通貨では既存のドルや円のように国家が保証しておらず不安定であるため、通常はまずみないような暴騰、下落が起こりえます。そのため、ステーブルコインではドルなどと交換できるようにしたり、売りが多ければ買い、買いが多ければ売りの取引者が現れる仕組みを採用したりして、価格の変動幅が小さい安定的な仮想通貨にしています。

ステーブルコインの将来性

他の仮想通貨が持つ資産の不安定性をステーブルコインは軽減しており、将来性という点では未来を感じ取れます。ただし、同種の通貨の1つである「TerraUSD」が暴落した事例から見るように、システムとして完全に安全なものではないことも現実です。なお、TerraUSDの暴落については通貨自体の仕組みが抱えていた問題が、米ドルとの連動を失っていったことで信用不安を生むことで起りました。この種の暴落は過去にも同様の事案というのが存在しているので、今後似たようなことは起こりえるでしょう。そのため、いま日本を含めた世界各国ではTerraUSDの暴落を受け、続々と規制強化を進めています。これによって、より安全性が増すのであれば今後も利用されるかもしれませんが、規制によって利用が進まなくなる可能性もあるため、どうなっていくのかは推移を見守っていく必要があるでしょう。

ステーブルコインと従来の仮想通貨との違い

ステーブルコインと従来の仮想通貨の最大の違いは、価格の安定性にあります。

ステーブルコインは、法定通貨(本物のお金)や金などの資産に価値がペッグ(連動)されているため、価格変動が抑えられています。例として、日本円と1:1で連動しているステーブルコインにはJPYC株式会社が運営するJPYCがあります。

一方、ビットコインなどの従来の仮想通貨は、売買に応じて価格が大きく変動するボラティリティの高い金融商品とされています。

例えば、ビットコインは取引処理に時間がかかり、価格も大きく変動するため、日常的な支払いや資産の保全には適していません。また、多くの仮想通貨プロジェクトは分散管理されているため、トラブル発生時の責任の所在が曖昧になるという問題もあります。

これに対し、ステーブルコインは法定通貨との連動により価格が安定し、また特定の企業や団体が管理しているため、支払いや価値の保存により適した設計となっています。そのため日本の資金決済法では、ステーブルコインは仮想通貨とは別の「前払式支払手段」や「資金移動業者の口座残高」として位置付けられ、規制の対象となっています。

以上のように、ステーブルコインは従来の仮想通貨の抱える問題を解決し、価格の安定性を実現した新しい金融商品といえます。

ステーブルコインの4つの種類

ステーブルコインは裏付けの資産があるのか、またはないのか。裏付けをどのように行っているのかを分類することで、次の4つに大別できます。

・法定通貨担保型
・仮想通貨担保型
・無担保型
・商品担保型

ここでは、詳しい分類方法と各種のステーブルコインについて解説します。

ステーブルコインの分類方法

ステーブルコインは裏付け資産の有無と担保方法によって分類することが可能です。まず、裏付け資産の有無とは、通貨に対して資産の裏付けをしているのか、それともしない方法で通貨が成り立っているのかどうかです。特に後者の裏付けを行わない「無担保型」では取引のアルゴリズムを工夫することで、ステーブルコインにしています。次に、裏付け資産の担保方法とは、米ドルなどの法定通貨や金などの価格に結びつけてステーブルコインにするものです。なお、この種のタイプは「法定通貨担保型」、「仮想通貨担保型」、「商品担保型」の3つが存在します。これらを踏まえて以下からはそれぞれのタイプについて解説しましょう。

法定通貨担保型ステーブルコイン

法定通貨担保型とは、現実で利用されている法定通貨を担保とする方式です。米ドルなどの法定通貨を担保にしてコインを発行し、一定の交換比率を設定することで通貨の変動率を抑制し、安定性と信用度を高めます。代表的なものとしてはUSDT(Tether)、USDC(USD Coin)などが法定通貨担保型のステーブルコインとして有名で、特にUSDTは、2023年12月現在、仮想通貨・暗号資産の時価総額上位にランクインしています。

仮想通貨担保型ステーブルコイン

仮想通貨担保型とは、他の仮想通貨を担保とする方式です。具体的にはビットコインなどの通貨を担保にコインを発行して価格を連動させます。ただし、そもそも仮想通貨は変動幅が大きい傾向があり、裏付け資産としてはあまり適切ではないため、発行の際にはなんらかの工夫が必要です。でなければステーブルコインのメリットの価格の安定性がなくなってしまいます。代表的な仮想通貨担保型のステーブルコインは、DAI、sUSDが挙げられます。
が代表的です。

無担保型ステーブルコイン

無担保型とは、法定通貨や仮想通貨などを担保にせず、アルゴリズムによって通貨を成り立たせる方式です。具体的には発行主体が需要と供給のバランスを取る、買いが多ければ売り、売りが多ければ買いの取引が行われるようなシステムを組み入れます。これによって価格の変動幅は縮小し、価値を保てるようにしています。代表的なものとしてはベーシスやESDなどが無担保型のステーブルコインです。なお、「ステーブルコインの将来性」で触れたTerraUSDも無担保型です。これはLUNA(ルナ)との裁定取引により供給量を調整して価格の安定を図るアルゴリズムによって成り立っています。

商品担保型ステーブルコイン

商品担保型とは商品の価値を担保にした方式です。例えば、安定の資産である金は世界経済がどんな時でも価値が目減りすることがなく、価格は安定しています。そこで、商品担保型のステーブルコインでは、いまあげたような商品の価格と連動させることでコインに安定性を付加します。ただし、コインを発行して成り立たせるためには相応の商品保有が必要です。また、どのような商品を担保にするのかも大切になってきます。代表的なものとしてはテザーゴールドが商品担保型のステーブルコインとして有名です。こちらはTerraUSDの暴落でもいち早く価格を戻しており、通貨としての安定性が高いことを証明しました。

ステーブルコインの4つのメリット

ステーブルコインには次のような4つのメリットがあります。

・価格変動のリスクを抑えられる
・資産の避難先にできる
・低コストで国際送金できる
・法定通貨の代替としての可能性がある

ここでは、それぞれについて深掘りしていきます。

価格変動のリスクを抑えられる

ステーブルコインは資産を裏付けするなどして発行するため、変動幅(ボラリティ)も安定しているというメリットがあります。仮想通貨の中には少し前までは一定の価値をゆうしていたのにも関わらず、今日になって大暴落し、結果価値がなくなってしまうものも中にはあります。また、変動幅が大きくなれば実生活の決済にも利用しづらいです。例えば、昨日までは1,000円相当の通貨で支払えばよかったが、今日から2,000円相当の通貨が必要になった場合では、損をしているように受け取れます。しかし、ステーブルコインであれば変動幅が小さくなり安定した価値を維持でき、担保があるため暴落のリスクを低く抑えられます。これならば日々の決済でも問題なく利用できるでしょう。

資産の避難先にできる

一般的な話として資産は分散させた方がリスクは減ります。1つの銘柄の株式よりもたくさんの株を所有したほうが長期的に安定します。他にも通貨を円だけでなく、米ドルやユーロなどで所有すれば、予期しない為替の暴落などにも対応しやすいです。ステーブルコインはそのような資産の分散を行う際に、避難先として利用できます。例えば、米ドルで担保された通貨を保有すれば、事実上ドルを保有していることと同じになります。したがって、将来のリスクに備えたいのであれば、ステーブルコインを活用することが有効です。

低コストで国際送金できる

ステーブルコインを利用して国際送金をすると、銀行よりも手数料が安くすみます。これは他の仮想通貨にも共通しているのですが、国際送金をする際には仮想通貨の海外取引所を利用したほうが安いです。なぜなら、銀行での送金を行う際には送金手数料と関係銀行手数料などがかかるため、意外にコストが高くなりがちです。一方で、仮想通貨では、国内から海外の取引所を利用した手数料しかかからないため、結果として銀行よりも安く送金できるのです。現在、海外で暮らしていたり、送金をする機会が多い人などはステーブルコインを利用したほうがよいでしょう。

法定通貨の代替としての可能性がある

法定通貨と連動するステーブルコインには、担保となる通貨の代替機能があります。例えば、旅行などでアメリカに訪れた場合には、日本円を米ドルに両替する必要がありますが、米ドルと連動させている通貨の場合は入手することで、米ドル保有と同じ効果があります。そのため、ステーブルコインを利用できる場所であれば、日本だろうがアメリカだろうが、両替の必要がなく決済が可能です。このような法定通貨のデメリットをなくしたいのであれば、ステーブルコインを保有するのがよいでしょう。

ステーブルコインを入手できるおすすめの国内取引所5選

ステーブルコインを入手するには、国内の取引所を利用するといいでしょう。
次の通り、ステーブルコインを取り扱っている取引所を紹介します。

Coincheck
DMMBitcoin
bitFlyer
GMOコイン
LINEBITMAX

それぞれの国内取引所がどのような特色をもっており、利用するとどのようなメリットがあるのかをよく考えながら一読してください。

手数料無料で手軽に取引「Coincheck」

Coincheckはマネックスグループ傘下の国内取引所であり、2023年12月調べでは取り扱い通貨数国内最大級の27種類となっています。Coincheckでは取引所の取引手数料は無料、最短1日で取引が開始でき、スマートフォンからの購入が可能であるなど、すぐに仮想通貨を手軽に手に入れられるでしょう。なお、Coincheckというと暗号通貨流出事件で世の中を混乱させてしまったことがありますが、現在は体制も変わり関東財務局登録済みの暗号資産交換業者として日々邁進しています。

最短1時間で口座開設「DMMBitcoin」

DMMビットコインは、DMM.comグループが運営する国内の仮想通貨取引所です。2024年5月現在、取り扱っている仮想通貨は38種類にのぼります。

また、「スマホでスピード本人確認」を利用すれば、最短30分で口座開設が完了し、すぐに取引を開始できます。取引はPC版とスマホアプリの両方から行えるため、ユーザーの好みに合わせて使い分けることができます。

DMMビットコインでは、以下の2種類のステーブルコインが取り扱われています。
・ダイ(DAI)
・ジパングコイン(ZPG)

ダイはイーサリアムブロックチェーン上で発行されている算出型ステーブルコインで、1DAIが約1米ドル相当の価値を維持することを目指しています。一方のジパングコインは、金(ゴールド)の価格にペッグされた商品担保型のステーブルコインです。

1円から購入可能「 bitFlyer」

bitFlyer(ビットフライヤー)は、bitFlyer株式会社が運営する国内の仮想通貨取引所・販売所です。2016年から2021年まで6年連続で国内取引量No.1を獲得しています。bitFlyerでは、BitMatch取引を除いて取引手数料や口座維持手数料、出金手数料などの各種手数料が無料となっています。少額から手続きをスピーディーに済ませて仮想通貨の取引を開始したい場合は、bitFlyer(ビットフライヤー)がおすすめです。

bitFlyer(ビットフライヤー)では、DMMbitcoin同様に以下の2種類のステーブルコインが取り扱われています

・ダイ(DAI)
・ジパングコイン(ZPG)

満足度と銘柄数No.1「 GMOコイン」

GMOコインはGMOインターネットグループ傘下の国内取引所であり、顧客満足度と取扱銘柄数で国内1位を獲得しています。GMOコインでは各種手数料が無料、取扱い銘柄は21種類と豊富です。また、アカウント登録から口座開設までが3ステップで行えるため、最短10分で取引ができるようになります。インターネットに精通している企業が母体の取引所であるので、GMOコインならばコストを抑え、迅速な取引が可能になるでしょう。

同様に、GMOコインでも以下の2種類のステーブルコインが取り扱われています。
・ダイ(DAI)
・ジパングコイン(ZPG)

LINEで簡単取引「 LINEBITMAX」

LINEBITMAXはアプリで有名な「LINE」のグループ会社が運営する国内取引所です。LINEBITMAXでは手数料は出金手数料以外は無料であり、仮想通貨を1円から取引できます。また、保有している仮想通貨を貸し出すことで利益を生むことも可能です。そして、最大の特徴はLINEを介して口座開設、取引ができる点にあり、普段からLINEを利用することが多いならば、LINEBITMAXはうってつけのサービスでしょう。

同様に、GMOコインでも以下の2種類のステーブルコインが取り扱われています。
・ダイ(DAI)
・ジパングコイン(ZPG)

取引所を介さず直接買う方法もある

日本円と連動するJPYCであれば、公式サイトから直接購入できます。

今後、国内取引所での取り扱いも検討されているようですが、現状では公式サイトで直接購入するか、スワップで入手するしかありません。

安定性と利便性を兼ね備えた新しい暗号資産

ステーブルコインは変動幅の大きさからもたらされるデメリットを解消する目的で生まれた仮想通貨であり、ブロックチェーン技術などを用いて米ドルや金などを担保にして発行されます。また、ステーブルコインには法定通貨で裏付けた法定通貨担保型、仮想通貨で裏付けた仮想通貨担保型などの4つに分類できます。これらのステーブルコインを入手すれば、ボラティリティの小さい運用を行えたり、資産の避難先にすること、もしくは国際送金の手法や法定通貨の代替機能として利用可能です。ただし、国内ではそのまま入手することができないため、国内の取引所から仮想通貨を入手し、それを海外の取引所で交換して入手しましょう。大切なのは上記で解説したステーブルコインの特徴やメリット、入手方法などを理解してから入手することです。正しく理解せずに飛び込むのは無謀なのでやめましょう。

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