自動運転技術の実用化で変わる12のこと 自動運転が巻き起こす、移動・物流革命

自動運転の実証実験が加速し、国内でも少しずつ実用化の段階へとシフトしはじめている。いよいよ、自動運転社会の始まりだ。

自動運転技術の実装により社会や生活はどのように変わるのか。来るべき自動運転社会における変化について解説していく。

1.自家用車が減少する…?

自家用車の保有台数は国内だけでも6,000万台を超えるが、その稼働率はわずか5%程度と言われている。1日当たり1時間ほどしか使用されず、95%は車庫や駐車場で眠っているのだ。

自家用車の使用目的は、通勤通学や日常的な買い物が大半で、観光目的などで長時間利用するのはわずかだ。通勤に使用すると、出社してから退社するまでの時間、マイカーは基本的に駐車場で待機している。大半の買い物もせいぜい1~2時間程度で用が済む。オーナーが思っている以上にマイカーの待機時間は長いのだ。

それでも自家用車が支持されている理由は、移動サービスが未発達な地域で自家用車でないと移動が不便な場合や純粋な所有欲、乗りたいときに乗ることができる安心感などが主となる。地方では「一家に一台」ではなく複数台所有していることも珍しくない。

では、自家用車に完全自動運転が導入された場合、どのような変化が起こるのか。ドライバー不在の無人走行が可能となるため、不使用時に有効活用する取り組みが注目を集めるようになる。

米EV(電気自動車)大手のテスラは、こうした需要を見越したロボタクシー構想を打ち出している。リース形式でオーナーに自動運転車を販売し、不使用時に自動運転タクシーとして活用するアイデアだ。タクシー事業の収入の一部はオーナーに還元される。

既存のカーシェア事業が隆盛を極めているように、1台のクルマをシェアして稼働率を上げる取り組みは有効だ。このシェアリングの考え方が自家用車に及ぶ可能性があるほか、自動運転技術が導入された移動サービスが大幅に利便性を増すことが想定される。

カーシェアでは駐車場に赴くことなく利用者のもとへ自動運転車を呼び寄せることができ、乗り捨ても可能となる。別の項で触れるが、タクシーなども含め、移動サービスの料金も低価格化が進行するのだ。

MaaS(Mobility as a Service)の進展と合わせて自動運転技術が各交通手段の利便性を向上させ、次第に自家用車需要は落ち込んでいくものと思われる。将来、自家用車は「所有欲」や「運転する楽しさ」を持ち続けるオーナーを中心とした存在となり、純粋な移動用途目的の多くは他の移動サービスを利用することになるのかもしれない。

2.移動時間の使い方が変わる…?

自動運転技術によって、ドライバーは「運転」という作業から解放される。マイカーであってもタクシーに乗っているような感覚で移動時間を自由に過ごすことが可能になるのだ。

スマートフォンの使用はもちろん、パソコンを用いた作業や食事、睡眠、映画鑑賞など、移動時間に合わせた行為を行うことができる。各種用途向けに内装を整備し、より快適な移動を実現することも可能だ。

例えば音楽や映画鑑賞、ゲームなどに特化した、エンターテインメント仕様やリクライニング仕様、仕事仕様などだ。EV化される自動運転車は車内空間の自由度が高まるため、自身が求める設えを施すことも容易になりそうだ。

また、こうした需要を見越した車内向けサービスの市場も拡大することが予想されている。エンタメなどに用いられる各種モニターや通信サービスをはじめ、各種用途に適した内装そのものを製品化する動きなども出てくるかもしれない。

3.保護者の子どもの塾の送り迎えが不要に…?

ドライバーを必要としない自動運転車は、高齢者や障がい者、子どもなどにも自由な移動をもたらす。学習塾をはじめ、習い事に通う子どもは多く、近年では保護者が自動車で送り迎えする機会も多いが、無人で走行可能な自動運転車であれば、保護者はこうした送り迎えから解放されることになる。炊事や洗濯、仕事などを中断して外出する手間を省くことができるのだ。

あらかじめ「いつどこへ、誰を迎えに」など自動運転車に予約をしておけば、自動運転車が自動で走行し、子どもを乗せて戻ってきてくれるイメージだ。

保育園の送り迎えなどをはじめ、自身で運転するのが難しくなった高齢者らも病院や買い物などに気軽に赴くことができそうだ。

けがや病気などで直ちに病院を受診したいものの自力移動が困難で、かつ救急車を呼ぶのは大げさに感じる――といったケースも、自動運転車が受診可能な病院を検索し、自動で連れて行ってもらうことが可能だ。移動中に病院スタッフと連絡を取り合い、病状などを説明することもできるかもしれない。

4.運転免許制度が大幅改正…?

ドライバーを必要としない自動運転車は、大人不在で子どもだけでも乗車することが可能である。従来、ドライバーに課せられた運転技能を証明する運転免許証がなくとも、自動車を走行させることができるようになるのだ。

条件付きで自動運転が可能になる自動運転レベル3や、ハンドルやアクセルなどを備え手動運転・自動運転の両方を可能にする自動運転レベル4・レベル5は別だが、自動運転オンリーの車種であれば、運転免許証の存在価値は事実上なくなる。

まだまだ先の話だが、完全自動運転車が普及しスタンダードな存在となれば、運転免許証を取得しなくても自家用車を活用することができるようになる。運転免許証の国内保有者数は現在8,000万人を超えているが、遠い将来、運転免許証を取得する人の方が少数派となる時代が訪れるのかもしれない。

ただし、保安上クルマに関する一定の知識が必要となる可能性があるため、運転免許証ではなく自動車取扱免許証のような新たな免許が創設されることも考えられそうだ。

5.交通違反が限りなくゼロに…?

2018年度における車両などの道路交通法違反(罰則付違反)の取締り件数は約600万件だ。一時停止違反と最高速度違反がそれぞれ100万件を超え、携帯電話使用違反、信号無視、通行禁止違反などが続いている。近年問題視されている酒酔い・酒気帯び運転は約2万6,000件だ。

意図的なものであれ無意識のものであれ、基本的にドライバーの過失によるもので、ドライバーそのものの人格や知識、技能が反映されているケースが多い。

では、自動運転車では交通違反を犯すのか?犯さないのか?――と問われれば、一部例外が出る可能性もありそうだが原則として交通法規を順守して走行することになる。

システム上、正確に制限速度を守り、一時停止もぴったり止まる。酒も飲まないし、あおり運転もしない。システムにエラーが発生した際は何とも言えないが、義務付けられた交通法規を順守するようプログラムされており、コンピューターの意思でその義務を破るような命令を下すことは原則としてあり得ない。

このため、自動運転車の普及が進むにつれ交通違反件数は反比例して減少していくことが想定されている。

6.交通事故も激減…?

交通法規を順守する自動運転車が普及すれば、当然ながら交通事故も激減することが予想される。交通事故は2019年中に約38万件発生しているが、このうち9割超はドライバーの過失によるものと言われている。

仮に道路上を走行する車両すべてが自動運転車になった場合、すべての車両が交通法規を守り、安全に走行する。見通しが悪い場所や歩行者らが混在する交差点においても、車両同士や道路インフラなどと通信し、可能な限り事前に周囲の状況を把握して走行するのだ。

安全走行の象徴とも言える自動運転車だが、懸念もある。自動運転車と手動運転車が混在する過渡期における特有の事故だ。ゆっくり走行する自動運転車を後方の手動運転車が無理に追い越そうとするケースや、挙動がはっきりしない自動運転車に対し、手動運転車や歩行者が思い込みや誤解による予測で接触する可能性などが考えられる。

自動運転車に対する正しい理解、社会受容性の向上や、自動運転車と外部とのコミュニケーション手段、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)技術の向上などが欠かせないものとなりそうだ。

7.道路関連予算が枯渇する…?

別項で触れた交通違反の激減は、交通反則金の減少につながる。内閣府が発表した2020年度の一般会計歳入予算概算見積書によると、反則者が納付する反則金による警察庁の収入となる交通反則者納金は、2019年度決算額で約508億円となっている。

この反則金は特別交付金などとして都道府県などの自治体に渡され、信号機やガードレールの整備といった交通安全対策に使用されているが、自動運転車の普及により、こうした財源の縮小につながるかもしれない。

もう1点は、ガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)の減少だ。自動運転車とも密接にかかわる自動車のEV化により、年間2兆円規模のガソリン税が消えるかもしれない。自動運転車は基本的にEVがベースとなる。移動サービス用途の自動運転車の社会実装が充電ステーションなどの整備を促進し、充電インフラが充実することで、自家用車のEV化も加速する可能性が考えられる。

日本国内では2030年代を目途にガソリン車の新車販売をなくす検討が進められており、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、EVが主流となる時代が到来する。欧州や中国などでは先行して進められており、EV化は世界的な潮流だ。完全EV化が達成されれば、ガソリンが不要となるのは言うまでもないことだろう。

道路特定財源制度の廃止によりガソリン税は一般財源化されているが、道路関連予算に関わる大きな収入であることは間違いない。劣化した道路の整備など、毎年必要となる道路予算を確保するためには、これに代わる別の財源が必要となるのだ。

こうしたことを踏まえたわけでもなさそうだが、政府は自動車に関する税制改革の一環として、走行距離課税の新設を検討している。走行距離に応じて課税をする仕組みだ。

道路をより多く利用すればするほど課税される点は、受益者負担の観点に一致するが、その他の自動車関連税と2重3重で課税されることだけは避けたいというのが本音だ。

なお、関連して、全国約3万カ所のガソリンスタンドも変革を迫られることは間違いない。給油や簡易点検、タイヤ交換、洗車などさまざまなサービスを提供しているガソリンスタンドだが、メインである給油需要の減少はスタンドの統廃合に直結する。

ガソリンスタンド事業者にも新たなサービス開発や事業展開が求められることになりそうだ。

8.自動運転の普及で駐車場が不要に…?

自動運転の普及により自家用車が減少することを前述したが、これは駐車場需要の減少にもつながる。これに加え、自動運転にまつわる興味深いデータがある。EV化され燃費の良い自動運転車は、駐車場に停車させておくよりも走行させ続けたほうが費用を抑えられるというものだ。

自動運転メディアの自動運転ラボが「ガソリン車で1時間走行」「EV(電気自動車)で1時間走行」「東京都心で1時間駐車」の3パターンの費用を算出したところ、1時間当たりのコストはガソリン車が307円、EVが235円となった。都心の駐車場は概ね1時間300~1,000円であることから、ドライバーを必要としない自動運転車であれば走行させ続けた方が割安になる――という計算だ。

厳密には車体にかかる負担なども加味しなければならないが、郊外から都心へ自動運転車で買い物に行った際など、有料駐車場に停めずに走行させ続ける――といった可能性はありそうだ。

また、タクシーが自動運転化された場合なども、稼働率の向上から必要とされる駐車場の面積を少なくすることが可能になるかもしれない。ドライバーが不要なため24時間稼働が可能となり、充電やメンテナンス時以外は走行し続けることも不可能ではなくなるのだ。

9.移動サービス料金が激変…?

バスやタクシーが自動運転化された際、その恩恵は運賃に反映される。米調査会社のARK Investment(アーク・インベストメント)が2019年に発表したレポート「BIG IDEAS 2019」によると、その恩恵は想像以上に大きいようだ。

レポートによると、消費者が支払う1マイル当たりの移動コストは、従来のタクシーが3.5ドルであるのに対し、自動運転タクシーは約13分の1の0.26ドルになるという。同様の結果は他社からも出されており、ロボタクシー構想を掲げる米EV大手のテスラも、ライドシェアサービスに自動運転を導入することで、1マイル当たりの運営コストは10分の1以下の0.18ドルに下がるとしている。

タクシーにおける人件費は、営業費用の7割を占めると言われている。バスでも5割強だ。この人件費がゼロとなる効果は思いのほか大きいようだ。イニシャルコストは当面高額なものとなりそうだが、普及が進むにつれて自動運転車そのものの価格や特殊なメンテナンス環境など導入課題もクリアされていくものと思われる。

バスやタクシー料金が本当に10分の1まで低下すれば、自家用車を持たずとも低価格で自由な移動を実現することが可能になりそうだ。

10.物流サービス料金も低下…?

移動サービス同様、物流サービスも低価格化が進行する可能性が高い。現在、長距離輸送を担うトラックの隊列走行やラストワンマイルを担う宅配ロボットなどの開発や実証が盛んに行われているほか、倉庫のスマートファクトリー化なども進められている。

こうした物流分野への自動運転技術導入による恩恵は、配送・宅配料金などに反映されることになる。現在、EC需要の高まりから宅配需要が増加し、ドライバー不足が社会問題となっているが、自動運転技術がこのドライバー不足の問題を解決し、その上で宅配需要をいっそう加速させることが予想されている。

こうした変化は、小売業にも波及する。全国の消費者を相手にする大手ECサイトが取扱量を増加させる一方、地域のコンビニやスーパー、個人店なども一定エリアで宅配を行うローカルECを構築し、地元住民の日常的な買い物を宅配で担うことが可能になる。

コロナ禍において増加する飲食デリバリーも、宅配ロボットが担う時代がまもなく訪れるのかもしれない。

11.移動の低価格化が各種サービスにも波及…?

自動運転技術は、小売業以外にも波及する可能性がある。従来、固有の土地・建物でサービスを提供していたさまざまな業種が、自動運転車を活用することでサービスそのものをデリバリーすることが可能になるのだ。

例えば、防音化し音響設備を整えた自動運転車を活用し、カラオケ店が移動カラオケサービスを展開するといったことが考えられる。利用者の元に車両を移動する際に人件費がかからないため、こうしたこともできてくるわけだ。

サイズは限られるが、さまざまな空間へと改造可能な自動運転車が秘める可能性はまだまだ未知数だ。

12.自動運転車専用道路が誕生…?

将来、自動運転車専用道路があちこちに誕生するかもしれない。現在、廃線となった線路跡地などを活用した自動運転車専用道路の構築・実証が進められているが、都市部なども例外ではなく道路改革を進める動きがあるのだ。

国土交通省が2020年に発表した道路政策の中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」においても、小型モビリティや自動運転車の導入などを見据えた新たな道路環境の整備について触れられている。

将来、自家用車が減少し、自動運転車やMaaSを構成する各種モビリティが効率よく運行されるようになれば、道路上を走行する車両は減少する。こうした時代を見据え、片側複数車線の広い道路を見直し、新モビリティ専用道路やシェアサービスのステーション設置、歩道拡幅による公共空間の創設など、さまざまなアイデアが盛り込まれている。

自動運転をはじめとした新たな交通社会は、道路空間にも大きな変革をもたらすことになりそうだ。

小さな変化がやがて大きな変化に 交通社会の変革はもう始まっている

自動運転に対し実感がわかず夢物語と思っている人もまだまだ多いかもしれないが、開発現場ではすでに未来の自動運転社会を見据えたさまざまな研究が進められている。2021年中には、実用化に関する国内ニュースもいくつか飛び出すことが予想される。

この記事で解説した各種変化はすぐに起こるものではなく、大半は自動運転技術が確立・浸透してからの中長期的な変化となる。これから10年、20年かけて徐々に交通を取り巻く環境が変わっていくイメージだ。小さな変化を積み重ねた後、振り返ればそれは大きな変化となって社会や生活を変えているのだ。

小さな変化も見落とさずチェックし、新たな交通社会の流れにしっかりと乗っていきたい。


文・監修/自動運転ラボ

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