動画で採用面接をする時代が到来!米国初の「HireVue」に迫る ~デジタルシフト未来マガジン〜
2020/3/23
「デジタルシフト未来マガジン」では、石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
石原靖士
㈱オプトホールディング グループ執行役員
㈱オプト 執行役員
2003年、旧ソフトバンクIDC㈱に入社。ネットワークエンジニアとして従事した後、2006年に㈱オプト(現:㈱オプトホールディング)入社。営業、マーケティング職を経て、2010年にWebマーケ会社の㈱デジミホ(旧オプトグループ)の取締役に就任。SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。
面接のデジタルシフト「HireVue」
HireVueの「オンデマンド面接」の流れを簡単に説明します。先ず企業は、応募者に聞きたい質問を設定します。応募者は企業が設定した質問を、HireVueのアプリやwebサイトから確認します。主に選択式・記述式の質問で、動画で回答することもあります。動画で回答する場合は、その様子を自ら撮影し、アップロードします。企業は応募者から送られてきたテキストの回答内容、動画を見て合否を判定するというものです。
HireVueは、採用人数に応じて年間固定料金で利用でき、最も安い料金は30人採用で200万円です。面接数に制限はありません。採用1人当たり7万円弱の費用で、オンデマンド面接/ライブ面接の基本機能が自由に使えることも導入企業が増えている一因でしょう。
HireVueのメリット、人事の負担が激減
■ポイント1:「採用業務の省力化」
一番大きなメリットは、何といっても採用にかける工数を削減できることです。対面での面接をなくす分、応募者も企業の採用担当者もそれぞれの都合の良い時間に動画を撮ったり確認したりすることができます。
また、従来の面接の場合、企業の採用担当者は応募者ごとに毎回同じ質問を繰り返すなど、どうしても無駄なコミュニケーションが発生してしまいます。一方、HireVueでは、企業側は一度質問を設定すれば全応募者にオンデマンドで届けることができます。こうして余計な労力を省くことで、面接にかかる工数を大幅に削減することができるのです。
対面での面接にはリアルタイム性が求められます。同じ時間に同じ場所にいなければ面接はできません。そのため、物理的な時間や距離の問題で面接を行うことができないというケースが発生してしまいます。これは、「応募したいのに応募できない」という応募者側の問題を解決することはもちろんのこと、企業側にとっても、それらの制約がなければアプローチできていたかもしれない人たちを取り逃がすことになります。
HireVueのオンデマンド面接は非リアルタイムで実施できるため、このようなリアルタイム面接のデメリットを解消することができるのです。その結果、昼間は忙しい人でも面接が可能になり、面接者数自体が増えるといった効果もあるのです。
HireVueは、ただ対面の面接を動画に変えただけではありません。デジタル化することで、面接のデータを分析し採用活動に活用することも可能にしたのです。
HireVueには面接のプラットフォームとして多くの企業の面接データが集まります。この大量の面接データをAIで分析することで、応募者の能力をスコアリングすることができます。最終的には企業の採用の意思決定の精度を向上させることで、採用活動へ貢献しています。
採用活動の未来
応募者からの動画をどのようにスコアリングをしているかというと、言葉・音声・表情を分析することで、将来的に自社で活躍できる人材かどうかを予測しています。「この人が優秀かどうか」の判断はAIにはまだできないのですが、「自社にマッチして活躍するかどうか」は、ある程度データが溜まればAIでも可能なようです。
このようなAIによるスコアリングを活用することで、自社に合うと判定された人材だけに、より丁寧な面接をすることができます。今までは応募者全員に一様に注いでいたコストを適切に分配することができるのです。
実際に、ヒルトングループでは、今までは書類選考や電話面談、適性検査など多くのステップがあった選考プロセスを、HireVueを導入し、「エントリー→動画選考→最終面接」という3ステップに短縮しました。「動画選考」でAIのスコアリングを活用することで一気に合格者を絞っているのです。また、選考期間は42日から5日と、なんとも88%も短縮でき、最終面接へ進んだ人数も60%減っています。これにより人事部の業務効率も大幅に改善されたのです。
同様の事例は、ボーダフォンやユニリーバなどの大手企業でも起こっています。採用人数は維持しながら、面接回数を減らし、選考期間も短縮することに成功しています。
成果が広まれば広まるほど、動画面接を導入する企業はさらに増えるでしょう。今後はHireVueのような動画面接を前提にした、さらなる新しい周辺サービスがどんどん出てくるかもしれません。
またHireVue自体も、現状は「面接の動画化」までに留まりますが、今後は入社後のパフォーマンスと紐付ける事で、戦力となりやすい人の面接パターンの見える化。あるいは、採用の意思判断における社内業務フローと連携させる事で、圧倒的なスピード採用を実現するなど、様々な可能性が考えられると思います。動画の機械学習によって企業も判断基準をスマート化出来るなんて素敵な未来も創造できるかもしれません。
そして、それとともに必ず起こるのが「人事のデジタルマーケティング化」です。
人事業務にHRテックが入り込んだ今、それらを運用出来るデジタル人材ニーズが急増します。マーケ業界にこの10年でおきた変化がタイムマシーンとなって人事領域でも起きることは容易に想像できます。