Uplive代表に聞く、ライブストリーミングサービスの未来

近年盛り上がりを見せる動画配信サービス。中でもライブ配信ができるライブストリーミングサービスが世界中で次々と生まれている。通常の収録映像の配信に比べ、ライブ配信ではその場で配信者と視聴者とがコミュニケーションを取れる「生感」が特徴。その場で視聴者がプレゼントを送ったりとライブならではの機能も搭載されている。

中国で2016年にスタートしたグローバルライブ配信プラットフォーム「Uplive」は世界中に拠点を構え、ユーザーの数は世界で1億人以上。アクティブユーザーは月間3000万で、世界150ヶ国の人から視聴されている。提供するのは中国のAsia innovations Group。どのようにして立ち上げから数年でサービスをここまで大きくすることができたのか。同社代表の刘明灵氏に成長するライブストリーミングサービスを解説してもらうとともに、企業ができるビジネス活用のヒントをお聞きした。

※本記事は、2019年1月に取材したものです。

ライブストリーミング領域に広がる市場

ライブ映像配信サービスUpliveはユーザーが世界中にいるためライブ映像をグローバルに配信できるのが特徴だ。ライブ映像をグローバルに配信できるスマートフォンアプリだ。提供するのは中国北京に本社を構えinnovations Group。Upliveをリリースした2016年、彼らはライブストリーミング市場の成長を見通していた。

:もともとグローバルにサービスを展開したいという思いがあり、2013年の会社設立当初、最初に始めたのは中華圏の国の人たちを対象にしたソーシャルゲームの提供でした。急速に成長していたインターネット技術を活用したいと思い、生み出したサービスでしたね。

その3年後の2016年、Upliveの提供を始めました。2015年頃からPCよりスマホなどのモバイル端末を利用したモバイルインターネットが発展しており、これまで自社で培ってきたインターネットを利用したアプリ開発の技術とマッチするなと考え、市場に参入した形です。


同社がサービスリリース当初からグローバル展開を考えていた背景には、創業メンバー3人の経験があった。

:私以外の創業者2人のうち1人はアメリカ生まれの中国人で、グーグルでモバイル端末の開発に携わりました。もう一人はソーシャル・ネットワーキング・サービスを展開する中国の大企業テンセント社の元社員でサービスの海外展開を担当していました。私自身も韓国の通信社に6年勤めた経験があります。全員がグローバルビジネスの経験があったので積極的にサービスの海外進出を目指していたのです。

Upliveを立ち上げてすぐ、台湾や中東の会社を買収したり、日本に会社を設立したりと海外に拠点を作り、サービスをグローバルに展開させることを目指しました。
※Asia innovations Group代表の刘明灵氏

※Asia innovations Group代表の刘明灵氏

業界を牽引する中国市場

近年流行した新しいサービスに思えるライブストリーミングだが、実は中国では2006年頃から存在していた。最初はPCを使った配信、視聴がメインだったのだそう。デジタル技術が進歩した最近になって爆発的に参入する会社が増えている。

:ライブストリーミング自体はまだモバイル端末が発達、浸透していなかった2006年頃からありました。それが注目され一気に増えたのが2016年です。1年間で400社以上の生中継サービスが生まれました。

そんな群雄割拠の業界の中で頭一つ抜け出すため、Upliveは徹底的にユーザビリティーにこだわってインターフェースなどデザインしている。

:我々はインターフェースの設計にこだわり、ユーザーと生中継を行う人との間のミュニケーションを出来るだけスムーズにするよう心がけました。

また、出来るだけ映像に遅延が出ないようにする技術の開発も進め、他国では真似できない水準を実現しています。気に入ったライブ配信社に視聴者から画面を介して送るプレゼント機能も出来るだけインパクトのある豪華なエフェクトになるようにしました


中国でこれほどまでにライブストリーミング事業が発達した背景には国民性も関連しているのだと刘氏は語ります。

:生中継サービスが生まれた2003年頃からKOL(key opinion leader≒インフルエンサー)が登場し始めました。当時は周りからどこか胡散臭い人たちだと思われていたのだと思います。

ただ、中国ではもともとの国民性として、「自分を表現したい」と思っている人が多いんです。ライブストリーミングサービスを使って有名になりたいという人は少なくありません。他の国でも生中継サービスを作ろうとしている企業はありますが、今の所うまくいっていないように思います。ライブストリーミングは中国をはじめ、アジアの文化だと思います。

その上で、Upliveは国ごとにサービスの内容やプロモーションの仕方などローカライズしています。例えばアメリカではKOLの検索カテゴリーを歌手、音楽家、DJ、MBAのコーチなどその国で人気のジャンルにしています。また、オフラインのイベントを好む傾向があるので、KOLにイベント開催のためのスポンサーをつけるなどしています。

アジアの最先端のコンテンツを世界へ展開

現在、世界中にユーザー数が増え続けているUpliveだが、今後も攻め手を緩めることなく、よりグローバルにサービスを展開していきたいとのことだ。

:我々が提供しているライブストリーミング技術は、今のところ中国企業にしかできないものです。だからライバルは中国内の企業です。

他の企業に負けないよう、今進出している中華圏や中東エリア、アメリカに加え、テストで感触が良かった南アメリカへの進出も進めていきたいです。また、東南アジアや南アジアなどのアジア圏、ヨーロッパへの進出も検討中です。


さらにエリアの拡大だけでなく新たなサービスの追加も考えているのだそう。

:これまではKOLとのコミュニケーションはUplive内でしかできませんでした。そこにソーシャル機能を追加し、オフラインでも好きなKOLとやりとりできるようにし、KOLも写真をアップして共有したりできる場所を作ろうと考えています。

また、5G時代になれば今よりもっと通信速度が上がるので、より多くの人たちへ同時配信できるようになりますし、360度やVRなどの新しい動画機能の追加も可能です。もっとたくさんの面白いことに挑戦していきたいですね。


今後ますます成長していくであろうライブストリーミング。刘氏によると大きく2つの点で企業がビジネスで活用できる余地があるという。

:1つ目は、生中継中のKOLに自社商品の宣伝などしてもらうこと。2つ目は企業が直接動画配信を行い、有名アカウントを運営するインフルエンサーになること。

さらに、その活用の場は今も開発されていますので今後ますます増えていくことでしょう。例えば教育領域では、わざわざ学校や塾に行かなくても生中継で誰でも教育が受けられるようになるかもしれません。

最後に、今後のビジョンについて語ってもらった。

:今後も我々は、アジア最先端の面白いコンテンツやサービスを提供し続けていきたいです。現在、アジアは世界の国々をリードしています。テンセントやアリババなどグローバルに活躍する企業も多いです。そんな中でも我々は、エンタメ領域で世界ナンバーワンの企業になりたいですね。

ライブストリーミングサービスは新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、外出ができない人たちには買い物を楽しむ新しい手段になっていると思われる。新しい生活様式が広まっていく中で、ライブコマースは小売業者と消費者との新しい関係を支える存在になるかもしれない。

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