中国最前線

中国人留学生に特化した不動産ベンチャー、デジタル化で賃貸業の負を解消

日本への中国人留学生は増え続け、その数は70,000人以上にものぼる。留学生にとって言葉の壁や文化の違いは大きく、異国の地で住まいを見つけ、手続き完了までスムーズに進めることは難しい。そんな現状を変えるため、中国人留学生向けに不動産賃貸を行うのが中国のiRent社。安価で手軽に住まいを手に入れるサポートを行なっている。

特徴はデジタル化による徹底した業務効率化。コスト削減によりサービス料を抑えることはもちろん、ユーザーにとっての利便性も生み出している。さらに、蓄積したノウハウを活用し、他社向けにデジタル化による業務効率化ノウハウを提供する新規事業も立ち上げ予定。徹底したデジタル化の先にもたらされるものとは?本稿では、iRent社の代表であるOwen Xu氏のお話を元に考えていく。

デジタル化による業務効率化で既存企業と差別化

iRent社は中国人留学生に特化し、香港をはじめ、海外への留学生のためのマンション賃貸サービスを提供している。創業して6年のベンチャー企業で、昨年から日本へも進出。現在はマンション10棟、700部屋ほどを管理している。

特に注目すべきは、徹底した業務効率化。デジタル化によりプロモーション、契約、管理、アフターサービスまで全てを効率化。その結果、人的コストを削減している。
Owen Xu:デジタル化により、全てのデータを見える化しています。例えば利用状況。現在空いている部屋数がいくつなのか、入居者数は何人なのか、男女比はどれくらいか、そのうち先月分の賃料未払いは何人なのか、などが、我々の手元にある管理画面で即座にわかります。

また、これまで不動産賃貸業界で当たり前に行われてきた対面によるオペレーションも、オンラインで済むようデジタル化しています。営業、プロモーション、契約、サービスの提供、アフターアメニティサービス、クレームの対応など、すべての工程がオンラインで完結可能です。

その結果、10棟のマンション全体の管理を、中国のわずか20人ほどのスタッフでまかなっているのです。現地で清掃や修繕などを行う実動部隊には、各マンションそれぞれにシルバー人材を登用する形で運営しています。香港に配置しているスタッフのうち、マンション運営は6名のみ。この6名で600以上の部屋を管理していることになります。一般的なホテル、賃貸マンションの管理会社では同じ数の部屋数を管理しようと思うと、さらに何十人もの人手がかかります。

デジタル化によりこれほどまでに人員の削減ができるのです。


徹底した業務効率化はユーザーにとっての利便性にも繋がっている。

Owen Xu:契約から支払いに到るまでオンラインで完結するため、ユーザー(入居者)からするとわざわざ営業所に行く必要がありません。チャットを使って情報のやり取りを行い、契約、支払いまで全てオンラインで可能です。

また、設備の不調などトラブルについても、デジタル化によりスピーディーな解決ができるようになり、ユーザーにとって便利になっています。例えばユニットバスが壊れた場合。写真をとって送ってもらえば、自動的に管理人に情報が届きます。

入居者にとって、トラブルの内容を細かく電話で伝えるのは大変です。それがチャットを使ったやり取りであれば、繋がらない心配もなく、早く、より正確に問題の状況を共有できます。勘違いされがちですが、オンラインだからこそ、丁寧に対応できる部分が多いのです。年間2000件以上の問い合わせがありますが、対応内容で問題になったことはありませんね。

また、人的コストが抑えられている分、他社よりも安い賃料で部屋を借りられるようになっています。
※iRent社のHP、部屋の検索段階からすべての工程をデジタル化していて、適宜、チャットで社員とやり取りをすることができる

※iRent社のHP、部屋の検索段階からすべての工程をデジタル化していて、適宜、チャットで社員とやり取りをすることができる

メインは香港だが、日本など中国人留学生が多い国へもサービスを展開していっている。その際、各国のニーズや状況に合わせた戦略策定を意識しているそうだ。

Owen Xu:国によってニーズも賃貸ビジネスの仕組みが違うので、それに合わせて戦略や業務内容も変えています。競合の強さや認知度も各国で全然違いますね。例えば日本の場合、まずはSUUMOなど大手の不動産賃貸会社を介してサービスの提供を行い、iRentの名前を少しづつ広めたいです。最終的には、中国人留学生の中に「日本で住まいを探すならiRent」というブランディングを確立させたいと思っています。

3年以内の上場を目指し、SaaS型の新規ビジネスを

中国人留学生への住まい提供を展開する背景には、Owen Xu氏自身の過去の経験があった。

Owen Xu:今の事業を思いついた最初のきっかけは大学生時代。僕自身、海外に留学していたことがあるんです。外国人の立場で不動産の賃貸契約をするのはすごく難易度が高かったんですよね。この大変さを解消することができればそのままビジネスになるのではと思っていました。

今後は上場に向け新しいサービスの展開を考えているという。

Owen Xu:創業した2013年は、たった一人の会社としてスタートしました。パートを雇ったりしながら従業員を増やし、現在は全社で30名ほどの規模になりました。まだまだ小さいですが、利益も出ており、その分をどこに投資するのかが今の検討事項です。個人的にはお金の使い方は芸術だと思っています。

今は3年以内に香港で上場することを目標に置いています。そのためにも部屋数を増やすことで売り上げのトップラインを上げたいと思っています。ただ、良い物件に限りのある中、計画通りに部屋数を増やしていくことは難しいと思っています。

そこで、これまで培ったデジタル化のノウハウを活かして不動産賃貸会社向けの新しいSaaS型のサービスの提供を始めたいです。例えば、従来の不動産会社が行なっている事務処理の負担を軽減し、入居者と管理者の間のコミュニケーションをもっとスムーズにするサービス。AIなど最新テクノロジーを組み込んだ管理ツールがあれば可能です。ただの不動産賃貸サービス会社ではなく、不動産×テクノロジーの会社としてのポジションを確立していければと思います。

SaaS型の新規事業は既存の不動産賃貸業とは切り離して考えており、別にブランディングして進めていく予定です。国内のみならず、日本を含め、世界中の不動産会社をターゲットに展開したいと思っています。


現在創業6年目。会社を立ち上げて10年は学習期間だと思っています。社長になることはサラリーマンと違い、事業マネジメント、社員マネジメント、戦略の策定、営業、マーケティングと幅広い領域を考えなくてはなりません。その学習量は膨大で、時間がかかるのです。逆に、10年経てば次のステージに上がれると思っていますので、この期間にしっかり学び切り、創業の勉強を卒業したいですね。

デジタル技術を活用した徹底した業務効率化で業界の不を解消したiRent社。そのノウハウをサービス化することで新しい事業を生み出している。業務効率化はコストカットだけでなく、新しいサービスを生み出すことにもつながるのだ。

日本で「中国人留学生と言えばiRent」と広く認知される未来もそう遠くないのかもしれない。デジタル化を武器にした企業として、要注目である。

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