SaaSとは?PaaS、IaaSとの違いやメリットデメリットを解説

近年よく耳にするようになったSaaSですが、何を意味するのかわからないという人は多いです。今後普及するであろうSaaSがどのようなものであるか、PaaSやIaaSとの違い、SaaSの具体例やメリットデメリットについて、詳しく説明します。

近年よく耳にするSaaS。聞いたことはあってもどのような意味がある言葉なのかを知らない人は多いです。近年デジタル化が急速に進んでいることや、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが推進されているという社会的な背景から、SaaSについて理解を深めておくことは重要になります。

そこで今回は、SaaSがどのようなことを言うのか、PaaSやIaaSとの違い、SaaSの具体例やメリットデメリットについて、詳しく説明します。

そもそもSaaS(サース・サーズ)とは?

SaaSについて理解したうえでサービスを利用するためには、まずはSaaSの言葉の意味や特徴について理解しておかなければなりません。SaaSについて知識を深めておけば、日常生活や仕事のあらゆる場面にSaaSを取り入れて、より便利で快適な暮らしができるようになるでしょう。

ここでは、SaaSの意味や特徴について詳しく説明します。

クラウド上で提供されるソフトウェア

SaaS(Software as a Service)は、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」となります。最近は、パソコンなどのデバイスにソフトウェアをインストールすることなく利用できるクラウドサービスが増えており、このクラウドサービスで利用できるソフトウェア全般をSaaSと言います。

これまでは、パッケージソフトなどを購入してからパソコンにインストール・セットアップするなど、サービス利用を開始するまでに費用や時間が多くかかっていました。しかし、SaaSではソフトウェアサービスをクラウド上で利用できることから、誰もがソフトウェアサービスをスムーズに利用できるようになっています。IoT機器の普及や5G通信技術の発展に伴い、今後はさらにSaaSを利用するユーザーが増えていくと予想されています。

インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできる

SaaSはクラウド上で提供されるソフトウェアサービスなので、ソフトウェアを利用するデバイスが制限されません。インターネット環境さえあれば場所を選ばずどこからでもアクセスできることから、よりソフトウェアサービスを身近に感じられるようになるでしょう。

また、最近は持ち運べるタイプのWi-Fiが普及しているだけでなく、カフェや新幹線など、移動中や移動先で品質の高いインターネット通信を利用できるようになっています。場合によっては日本だけでなく海外からもSaaSを利用することでサービスを利用できることから、海外旅行や海外転勤で作業場所を海外に移したとしても、クラウドにアクセスさえできれば日本にいるときと同様にサービスを利用し続けられます。

複数人が同時に編集・管理できる

SaaSには、クラウド上で複数人が同時にソフトウェアにアクセスできます。そのため、1つのプロジェクトを効率的に編集・管理することが可能です。パッケージ型のソフトウェアのように1つの場所に人々が集まって作業する必要がないので、利用者の負担が減るだけでなく柔軟な働き方ができるといった働き方改革にもつながると言われています。

また、作業の進捗やメッセージのやり取りもクラウド上のソフトウェアを通して確認・伝達できるので、わざわざほかのツールを使って情報伝達する必要がなくなります。それによってコミュニケーションエラーや作業者同士の認識の違いを減らして、より確実に作業を遂行できるようになるのです。

PaaS(パース)とSaaSの違いとは?

SaaSと似たような言葉に「PaaS(Platform as a Service)」があります。PaaSは直訳すると「サービスとしてのプラットフォーム」と言います。

PaaSはソフトウェアではなくプラットフォームです。ソフトウェアなどのプログラムが稼働するために必要なデータベースやプログラム環境といった実行環境が、クラウド上で提供されています。プログラムさえあればソフトウェアを稼働させられるため、必要なプログラムを用意できるのであればスムーズに利用できるでしょう。

しかし、プログラムの実行環境やデータベースに制限が設けられているため、自由にプラットフォームを開発したいという人にとっては物足りなさを感じるかもしれません。インフラ開発の手間を省きながら適度にプラットフォームをカスタマイズしていきたい場合に利用するのがおすすめです。

IaaS(イァース・アイアース)とSaaSの違いとは?

IaaS(Infrastructure as a Service)は、「サービスとしてのインフラ」と訳されます。SaaSやPaaSと意味を区別しにくいかもしれませんが、IaaSは、情報システムの稼働に必要なインフラをインターネット上のサービスとして提供することを言います。

IaaSは、これまで紹介したクラウド上のサービスの中で最もカスタマイズ性が高いもの。わざわざハードウェアを導入することなく仮想上のマシンやサーバーといったインフラを利用できるので、コストを抑えてITインフラを整備したいという人たちに利用されています。

ただし、カスタマイズの自由度が高いぶん、利用者にはハードウェアやOS、ネットワーク系の幅広い知識が求められます。それと同時にセキュリティ対策も自分自身で考えなければならないので、誰もが導入できるサービスというわけではありません。

目的に応じてSaaS、PaaS、IaaSを使い分けることが大切

クラウド上のサービスは、SaaS、PaaS、IaaSの3つに分類できますが、重要なのは目的に合ったサービスを選ぶこと。もしSaaSに利用したい機能がすべてそろっているのであれば、SaaSを導入することで簡単にソフトウェア利用できるようになります。

SaaSにある程度利用したい機能がそろっていたとしても、実際に利用したい機能とズレがある場合は、PaaSである程度自由にソフトウェアを構築するとよいでしょう。開発環境も充実しているので、時間をかけずに必要なソフトウェアへと組み替えていくことが可能です。PaaSの制限を超えて、より自由度の高いサービスを提供できる環境をクラウド上に構築したい場合は、IaaSがおすすめ。大規模なサービスを提供するための拡張性の高さも持っているため、より柔軟な開発ができます。

まずはどのような目的でクラウドサービスを使いたいのかをはっきりさせて、それに応じてSaaS、PaaS、IaaSをうまく使い分けられるようにしておきましょう。

SaaSの具体例とは?

SaaSにもさまざまな種類がありますが、代表的なサービスを知ることで、よりSaaSについての理解を深めやすくなるでしょう。すでに幅広く利用されているSaaSですが、代表的なサービスには以下の3つがあります。

●Dropbox
●Gmail
●Twitter

すでに利用したことのあるサービスもあるかもしれませんが、これらがどのようなサービスであり、なぜ人気を集めているのかを知っておくことは大切です。ここからは、SaaSの具体例について詳しく説明します。

Dropbox

Dropboxは、Dropbox社が提供しているオンラインストレージサービス。インターネットに接続できれば、場所を選ばずクラウド上に保存されたファイルやデータにアクセスできるのが特徴です。スマートフォンやタブレットといったモバイル端末からでも簡単にアクセスできるため、仕事や勉強など幅広い用途で利用されています。

他者とのデータ共有や削除したファイルの復元、複数端末からの同時アクセスといったSaaSならではのメリットを存分に活かせるので、世界中で利用者数が多いのも魅力。SlackやChatworkといったチャットサービスや各種メールサービスなど、20種類以上のサービスと連携させることもできるため、普段利用しているツールをより便利に活用できます。

Gmail

Gmailは、Googleが提供している無料のメールサービス。すでに仕事やプライベートで利用している人は多く、人々の生活に幅広く普及しています。googleアカウントさえ持っていれば誰でも無料で利用できるので、導入の手間が少ないのがよいところです。

また、メールをローカルストレージに保存する必要もないので、デバイスの容量を気にすることなく快適にサービスを利用し続けられるのも魅力。端末が違ってもログインさえできればどこからでもメールサービスにアクセスできるので、普段利用しているデバイスが手元になくてもメールの送受信ができます。迷惑メールのフィルタリングやメールのキーワード検索機能などが充実しているのも、利用者が多い理由となっています。

Twitter

Twitterは、アメリカのTwitterが提供しているSNSサービス。世界中で幅広いユーザーが利用しており、情報がスピーディーかつ幅広く拡散する特徴を持っていることから、個人だけでなく自治体や行政機関などの公的機関も活用しています。

ユーザーとしても必要な情報を短時間に手軽に集められることや、匿名でもサービスを利用できるというプライバシー面の安心感もあることから、今後もユーザー数が伸び続けるのではないかと言われています。

Chatwork

Chatwork(チャットワーク)は、チャットをベースにしたビジネスコミュニケーションツールです。テキストでのやりとりのほか、ビデオ通話や音声通話にも対応しています。また、ファイルを共有することもでき、タスク管理にも利用可能です。また、送信されるデータはAES256という最高レベルの暗号技術で保護され、バックアップも常に保存される仕組みになっています。堅牢なセキュリティを誇っている点も多くの企業が採用する理由になっています。

Office365

Office365はマイクロソフト社が提供しているSaaSサービスです。いわゆるワードやエクセル、パワーポイントといったOfficeソフトに加え、メールソフトのExchangeやチャット&ビデオ会議ツールのTeams、ファイル共有サービスのSharePointなどが含まれたサービスで、複数人での共同作業がやりやすいよう設計されています。1ユーザー15端末(PC5台、タブレット5台、スマホ5台)まで利用可能となっているほか、1TBのオンラインストレージも利用できます。

Salesforce

Salesforce(セールスフォース)はクラウド型のCRMソリューションです。主に顧客管理を目的としたサービスで社内の情報を一元化することに秀でています。顧客情報を共有したり、営業情報の集約、そのほか各種レポートを作成することができます。

freee

freee はクラウド型の会計サービスです。経理や確定申告を効率的に行うための機能が盛り込まれており、自宅や外出先などからもサービスにアクセスして、事務処理を行うことができるのが特徴です。操作に迷ったユーザーのためにメール・チャット・電話など、さまざまな様々な問い合わせ形式に対応しています。

SaaSのメリットとは?

●サービスを導入するまでの期間が短い
●コストを抑えてサービスを導入できる
●デバイスのストレージを気にしなくてよい
●従業員の増減に対応しやすい
●運営の手間がかかりにくい

SaaSには、上記の5つのメリットがあります。SaaSのメリットを最大限に活かすことで、毎日の生活や事業運営をよりスムーズにできるでしょう。ここからは、SaaSのメリットについて詳しく説明します。

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サービスを導入するまでの期間が短い

1つ目は、サービスを導入するまでの期間が短いこと。

SaaSはクラウド上のソフトウェアサービスをそのまま利用できるので、わざわざシステムを開発したりパソコンなどのデバイスにインストールしてセットアップする必要がありません。サービスを利用開始しようと思ったら最短即日から利用開始できるので、手続きに時間をかける負担が少ないのもよいところです。

コストを抑えてサービスを導入できる

2つ目は、コストを抑えてサービスを導入できること。

ソフトウェアを利用するためにわざわざパッケージソフトを購入する必要がないので、大幅にコストを抑えてサービスを利用開始できます。また、システムを開発するために人件費や外注費をかけなくてもよいことも、コストを抑えられる理由です。サービスによっては無料で利用できるものも多いため、場合によっては利用料金がかからないケースもあります。

デバイスのストレージを気にしなくてよい

3つ目は、デバイスのストレージを気にしなくてよいこと。

従来のようにデバイスにデータを保存していると、保存できるデータ量はデバイスに搭載しているHDDなどの保存媒体の容量に依存してしまいます。SaaSではオンライン上にデータを保存できるので、デバイスのデータ容量を圧迫する心配がありません。

もちろん、利用するソフトウェアによってはクラウド上に保存できる容量に限度があったり、容量を拡張するために追加費用がかかるケースもあります。しかし、よく利用するデータの種類によってはコストを抑えてクラウド上のストレージを利用できるでしょう。

また、クラウド上のストレージのIDやパスワード、権限といった「鍵」を他者と共有することで、複数人が別々のデバイスから同じストレージにアクセスできるのもSaaSのメリット。インターネット環境さえあれば場所を選ばずにデータを共有できるので、今まで以上に快適かつ効率的な暮らしを実現できるようになっています。

従業員の増減に対応しやすい

4つ目は、従業員の増減に対応しやすいこと。

企業によっては、一定の時期になると従業員が大幅に増減するところもあります。SaaSを利用していれば、サービス利用者のアカウントを追加・削除するだけで簡単に対応できます。利用者数に応じて料金を支払うパッケージタイプのソフトウェアよりも費用や手間を抑えやすいので、従業員の出入りが多い企業や部署であるほど、SaaSを利用するメリットは大きいと言えるでしょう。

運営の手間がかかりにくい

5つ目は、運営の手間がかかりにくいこと。

SaaSでは、サービスを提供している側がシステムの運用をすべて行ってくれます。システムのバージョンアップやセキュリティ対策の更新などの手間がかからないので、ランニングコストを抑えながら常に最新のソフトウェアを利用できます。

SaaSのデメリットとは?

●ソフトウェアのカスタマイズ性が低い
●不正アクセスのリスクがある
●サービスが停止すると利用できなくなる

SaaSには、メリットもあればデメリットもあります。注意点を理解しながらソフトウェアを利用することで、安全な暮らしを維持しやすくなります。ここからは、SaaSのデメリットについて詳しく説明します。

ソフトウェアのカスタマイズ性が低い

1つ目は、ソフトウェアのカスタマイズ性が低いこと。

SaaSはすでに構築済みのソフトウェアをクラウド上で利用するようになっていることがほとんどです。そのため、提供されているサービスの範囲内で事業運営や日常生活に取り入れなければなりません。

場合によっては、事業の運営方針をサービスに合わせて変更しなければならないケースも…。変更の程度や頻度によっては社内に混乱を生じさせる危険性があるので、サービスを導入してからどのように運用していくのかをあらかじめ考えておく必要があります。

データ移行や連携が難しい

SaaSにはさまざまな事業者が参入していますが、データの形式やルールが統一されているわけではありません。そのため、もしサービスを他の事業者に切り替えたいと思っても、データをスムーズに移行するのが難しく、乗り換えに手間、時間、コストがかかってしまうケースがあります。

不正アクセスのリスクがある

2つ目は、不正アクセスのリスクがあること。

SaaSはクラウド上で提供されるソフトウェアなので、インターネット上のサービスである以上不正アクセスのリスクは常に伴います。企業や学校といった施設内のローカルネットワークであれば、外部と通信できないようにすることでセキュリティを維持しやすいですが、SaaSを利用するためにはどうしても外部と通信しなければなりません。

もちろんセキュリティ機能の整ったサービスを導入することが大切ですが、クラウド上で送受信するデータの内容によっては、SaaSを利用しない方がよいと判断しなければならないケースもあるでしょう。導入するサービスをどのように使うのか、不正アクセスがあった場合にどのように対処するのかも事前に考えておきましょう。

サービスが停止すると利用できなくなる

3つ目は、サービスが停止すると利用できなくなること。

利用するサービスによっては、不具合が生じてアクセスできなくなることもありえます。不具合が復旧すれば再度利用開始できるようになりますが、もし復旧できなかった場合は利用データが全て消えてしまう危険性があるのです。

バックアップを取得できるタイプのものもありますが、データ量によっては膨大な量をバックアップしなければならず、ローカルストレージを圧迫したりバックアップに時間がかかることも考えられます。

なるべく安定したサービスを提供しているSaaSを選ぶことが大切ですが、万が一サービスが停止したことを想定した利用方法を検討することも重要になります。

ランニングコストが負担になる場合がある

SaaSでは、サーバーの運用に加え、メンテナンスやサービス改善、セキュリティ向上などサービスのアップデートを常に行なっていきます。そのため、買い切りではなく、月額の利用料でサービスを利用する形になります。毎月、利用しても、あまり利用しなくても契約が続く限り、コストが発生します。ランニングコストが負担だと感じる場合もあるかもしれません。

SaaSの特徴を理解したうえでサービスを利用しよう

ここでは、SaaSがどのようなことを意味するのか、PaaSやIaaSとの違い、SaaSの具体例やメリットデメリットについて説明しました。SaaSを利用する目的や利用方法はさまざまですが、リスクを十分に理解して万が一のときの対応方法を考えながら利用することが大切です。

ここで説明した内容を参考にして、SaaSの特徴を理解したうえでサービスを利用できるようにしておきましょう。

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