クリエイター支援プラットフォーム「Patreon(パトレオン)」〜海外ユニコーンウォッチ #9〜
2022/5/24
「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回はクリエイターを支援するプラットフォームサービスを提供する「Patreon(パトレオン)」を紹介する。
クリエイター支援プラットフォーム「Patreon」とは
クリエイターは、サブスクリプションサービスの価格を自身で決め、支援者への対価となるコンテンツを用意する。価格が異なる複数のプランを設定でき、Patreon上でしか見ることができない限定作品や製作過程をコンテンツとして公開する人もいる。クリエイターとしては、サブスクリプションなので安定した収入源を確保できるのがメリットだ。ファンは、好きなクリエイターのサブスク会員になることで、コンテンツを楽しむことができるほか、金銭的な支援者としてクリエイターの活動を応援できるという側面もある。
Patreonは、ここ数年、立て続けに資金調達を実施している。2019年7月、シリーズDとして6,000万ドルを調達。さらに、2020年9月にシリーズEで9,000万ドル、2021年4月にはシリーズFで1億5,500万ドルの資金調達を発表した。シリーズFの際に評価額が40億ドルに達し、その金額は「ちょうど6ヵ月前の3倍以上」だとしている。シリーズFの資金調達を発表した文章では、資金の使い道として三つの主要領域をあげた。モバイル・デスクトップの両方で支援者とクリエイターの体験を強化すること、新しいコンテンツ消費ツールを追加すること、そして、グローバル展開の三つだ。
クリエイターによるクリエイターのためのPatreon
Patreonは、プラットフォームや広告に依存しているクリエイターの収益が適正ではないという問題意識を持っている。2017年に同社が公開した「メンバーシップ:クリエイターの未来」と題された記事では「何万人もの読者がいるブロガーは、広告収入で数百ドルを稼いでいる。10万人のファンを持つ動画制作者は、家賃を支払うことさえできない。(中略)これでOKなんだろうか」と指摘している。このようなクリエイターの現状を変えるため、Patreonは「クリエイターによってクリエイターのために設立された」と標榜し、ファンからクリエイターに直接お金が届くような仕組みをつくっているのだ。Patreonの他にも、投げ銭やオンラインサロン、P2C(Person to Consumer)系サービスといったように、大手プラットフォームからの広告収入以外に、ファンからの直接的な収入源を確保することは、クリエイターの新しい潮流となっている。
クリエイターエコノミーにWeb3はどう影響するのか
また、この調査レポート内に記載された「今後の展望」には、「Web3についてのメモ」という項目がある。そこでは、「我々は、クリエイターエコノミーに与えるWeb3の衝撃が、熱く議論されている問題であると理解している。(中略)Web3がクリエイターにどのように影響するかについて、よい面・わるい面の両方から理解するために調査をしている」とし、「今もこれからも、我々の北極星は、クリエイターに長期的な価値をもたらすテクノロジーを意図的に構築することだ」と記載している。Patreonを利用するクリエイターのなかには、Web3に否定的な意見を持つ人もいるというが、今後のクリエイターエコノミーにおいて「Web3」がどのような役割を果たすのかについて、注目が集まっている。