注目を集める、米遠隔医療スタートアップ「Ro(ロー)」〜海外ユニコーンウォッチ #8〜

「ユニコーン企業」――企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は医療業界のプラットフォームを目指す「Ro(ロー)」を紹介する。

米・遠隔医療の新ユニコーン「Ro」とは

Roは2017年に設立されたアメリカの企業で、遠隔医療によるデジタルヘルスクリニックを運営している。当初は、男性ユーザー向け「Roman」、女性ユーザー向け「Rory」、禁煙者向けの「Zero」の三つのデジタルヘルスクリニックを提供していた。オンラインで症状の相談ができ、薬は自宅まで配送される。その後は、無料で継続的なフォローアップを受けられるというものだ。さらに、500以上のジェネリック医薬品を一つあたり月額5ドルで提供するオンライン薬局「Ro Pharmacy」や、メンタルヘルス向けデジタルクリニック「Ro Mind」を起ち上げるなど、事業領域を広げている。

直近の資金調達としては、2020年7月にシリーズCとして2億ドル、2021年3月にシリーズDとして5億ドルを調達している。2022年2月には、さらに1億1,500万ドルを調達し、スキンケア向けのデジタルクリニック「Ro Derm」の起ち上げを発表した。

2月の資金調達の際に、Roの共同創業者でCEOのザッカリア・レイタノ氏が綴ったところによると、Roが事業を開始してから支援してきた患者は150万人を超え、創業から5年足らずのうちに、全米で遠隔医療や在宅ケア、薬局などのサービスを統合した唯一の企業になったとのことだ。
Ro Mind

Ro Mind

出典元:https://ro.co/press

デジタルサービスで、米医療制度の課題を解決する

Roは、「患者中心」であることを強調している。今までの医療制度は、患者側にとって利便性の面でも金銭面でも、使いやすいものではなかったと言う。例えば、診療を受けるためには、仕事を休んだり、子どもの世話を誰かに頼んだりする必要があるなど、手軽さがなかった。また、医療サービスにかかる料金の高さも問題の一つだ。日本とは異なり、アメリカでは国民皆保険が確立されていないこともあり、医療や保険制度の整備が長年、議論を呼んでいる。このようなアメリカの医療制度の課題を、Roは解決しようとしている。

こうした現状に対して、Roは遠隔医療などのデジタルサービスで利便性を向上させ、診療から投薬、継続的なケアまでをパーソナライズしたサービスとして消費者へ提供する。そして、それらを無保険でも利用可能にすることで、高品質かつ手頃な価格のヘルスケアサービスの実現を目指している。Roの創業者3名は、創業の理由を「高品質で手頃な価格の医療を受けられないことで、人生を止めて欲しくなかったからだ」としている。患者の幅広い医療ニーズに応えるため、デジタルクリニックの運営だけでなくオンライン薬局なども手がけることで、必要な医療サービスを一手に担おうとしているのだ。
Roの創業者3名

Roの創業者3名

出典元:https://ro.co/press

相次ぐ企業買収と、今後の狙い

Roは調達した資金を使って自社サービスを成長させるとともに、企業買収も積極的に行っている。2020年12月、ソフトウェアプラットフォームの「Workpath」の買収を発表。患者の家にヘルスケアの専門家を送り、診断テストを行うことを可能にした。これにより、バーチャルでのケアと対面でのケアをシームレスに統合し、さらに多様な医療ニーズに対応できるようになった。また、2021年6月には血圧検査や体重測定ツールなどの家庭用診断テストを提供する「Kit」の買収を発表した。遠隔診療やオンライン薬局に加え、在宅での健康データの収集を促進し、日々の体調管理や予防医療に役立てる狙いだ。このように、オンラインだけでなく、対面や患者自身の行動も合わせて、複合的に健康管理をサポートしている。

Roによる買収後も、WorkpathやKitはサービスを他企業にも提供し続けている。2022年2月の資金調達の際、Roは「Workpathの買収後、他のヘルスケア企業に15万件以上の在宅ケアの予約を促進した」と発表した。さらに、同じ発表文で「今年、Roは2021年に経験したWorkpathとKitの勢いに乗り、あらゆる類のヘルスケア企業が、Roの患者中心のプロダクトやサービスを利用できるよう、BtoB事業を拡大し続ける」と述べられている。このように、Roは患者向けのサービスだけでなく、ヘルスケア企業向けにもサービスを展開することで、医療業界全体のプラットフォーム企業となることを目指しているのだ。
Kit App

Kit App

出典元:https://ro.co/press

人気記事

超高齢化社会・日本のAgeTechスタートアップ。「認知症による資産凍結対策」に挑む、ファミトラ。

超高齢化社会・日本のAgeTechスタートアップ。「認知症による資産凍結対策」に挑む、ファミトラ。

超高齢化社会を迎えている日本で、高齢化に関する課題をデジタル技術で解決するAgeTech(エイジテック)を手がけるスタートアップが増えつつある。そんななか、200兆円ともいわれる認知症患者の資産が凍結されてしまうかもしれない問題を、家族信託のDXで解決しようとしているのが、ファミトラである。 判断能力があるうちに財産の管理や運用を信頼できる第三者に託すことで資産凍結リスクを回避する家族信託を、AgeTechへと落とし込んだ三橋社長に、起業背景や今後の展開などについてお話を伺いました。

中国EV市場を席巻する、三大新興メーカーを徹底分析。脅威の中国EVメーカー最新事情・後編【中国デジタル企業最前線】

中国EV市場を席巻する、三大新興メーカーを徹底分析。脅威の中国EVメーカー最新事情・後編【中国デジタル企業最前線】

中国企業の最新動向から、DXのヒントを探っていく本連載。今回は、ガソリン車に代わるモビリティとして期待が高まるEV(Electric Vehicle=電気自動車)と、その核とも言える自動運転技術で世界をリードする中国の強さに迫ります。前編では「EV先進国」の名を欲しいままにしているその理由を、国の政策や技術の面から探ってきました。後編となる今回は、自動車産業に参入してきた新興メーカー3社を紹介するとともに、日本の立ち位置の考察、中国が抱える課題を話題に進めていきます。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

メタバース覇権を握る、最有力候補!? フォートナイトを運営する「Epic Games」 〜海外ユニコーンウォッチ #6〜

メタバース覇権を握る、最有力候補!? フォートナイトを運営する「Epic Games」 〜海外ユニコーンウォッチ #6〜

「ユニコーン企業」――企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は人気オンラインゲーム「フォートナイト」を運営する「Epic Games(エピック ゲームズ)」を紹介する。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。

自動車大国・日本がついに中国EV車を輸入。脅威の中国EVメーカー最新事情・前編 【中国デジタル企業最前線】

自動車大国・日本がついに中国EV車を輸入。脅威の中国EVメーカー最新事情・前編 【中国デジタル企業最前線】

中国企業の最新動向から、DXのヒントを探っていく本連載。今回は、ガソリン車に代わるモビリティとして期待が高まるEV(Electric Vehicle=電気自動車)と、その核とも言える自動運転技術で世界をリードする中国の強さに、前後編の2回にわたって迫ります。前編は、自動車大国・日本さえも脅かす存在になるほど進んでいる中国EV市場の実情をお届けします。

『メタバースとWeb3』著者・國光 宏尚氏が語る、Web3時代に勝つ企業の条件

『メタバースとWeb3』著者・國光 宏尚氏が語る、Web3時代に勝つ企業の条件

「ブロックチェーン技術(※1)を中核とした非中央集権的なインターネット」として定義されるWeb3(3.0)。2021年以降、急速に注目を集めるようになったフレーズですが、全貌を理解している人は多くない、曖昧な概念であることも事実です。今回お話を伺ったのは、3月に上梓した『メタバースとWeb3』がベストセラーになり今やWeb3のエバンジェリストとして知られる、株式会社Thirdverse、株式会社フィナンシェ代表取締役CEO/Founderの國光 宏尚氏。「Web3時代に勝ち残る企業」をテーマに、 デジタルホールディングスのグループCIO(最高投資責任者)を務める石原 靖士氏がお話を伺いました。 ※1 ブロックチェーン 取引履歴(ブロック)を暗号技術によって1本の鎖のようにつないで記録することによって、データの破壊や改ざんを極めて難しくしたデジタルテクノロジーのこと。

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

Clubhouseをはじめ、新勢力が次々と参入し、拡大を見せる音声コンテンツ市場。その中で、民放開始から70年の歴史に「大変革」を巻き起こしているのが“ラジオ”です。放送エリアの壁を取り払う、リアルタイムでなくても番組を聴けるようにするといった機能で、ラジオをデジタル時代に即したサービスに生まれ変わらせたのは、PCやスマートフォンなどで番組を配信する『radiko(ラジコ)』。今回は、株式会社radiko 代表取締役社長の青木 貴博氏に、現在までのデジタルシフトの歩みと将来の展望について、お話を伺いました。

マンガアプリ世界NO.1。急成長市場の覇権を握る「ピッコマ」の戦略

マンガアプリ世界NO.1。急成長市場の覇権を握る「ピッコマ」の戦略

8万以上タイトルの人気マンガやノベルを取り扱い、累計ダウンロード数は3,000万を超える電子マンガ・ノベルサービスの「ピッコマ」。サービス開始は2016年4月という後発ながら、23時間待てば一話を無料で読める「待てば¥0」サービスを他社に先駆けて導入するなど、新しい試みを積極的に取り入れ業界トップに君臨しています。短期間でピッコマが躍進を遂げた理由から、従来のマンガに代わる新しい表現形式である「SMARTOON」の魅力、今後のグローバル展開について、株式会社カカオピッコマ常務執行役員の熊澤 森郎氏にお話を伺いました。

【Netflix徹底解剖】Netflix4.0、世界最先端のDX戦略を追う

【Netflix徹底解剖】Netflix4.0、世界最先端のDX戦略を追う

全世界での有料会員数が2億人を突破。飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続ける企業、Netflix。現在の利用者の中には、彼らの事業が店舗を持たないDVDオンライン郵送サービスからスタートしたことを知らない人もいるかもしれません。1997年、小さなスタートアップ企業として創業したNetflixはその後、DVDレンタルのサブスクリプション、動画ストリーミング配信のサブスクリプション、そして動画オリジナルコンテンツの配信と、デジタルを基盤に着実にビジネスを変革し、今や皆さんご存知の通り、デジタルコンテンツプラットフォームの王者へと成長を遂げています。今回の「世界最先端のデジタルシフト戦略」vol.4では、そのビジネストランスフォーメーションの変遷を立教大学ビジネススクール 田中道昭教授に徹底解剖していただきます。小さなスタートアップ企業であったNetflixがいかに王者となれたのか。その変革の奥にある秘訣とは。DXに取り組む日本企業も見習うべき一貫した姿勢に迫ります。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は欧米を中心に注目されている「代替肉」を扱う「インポッシブル・フーズ」を紹介する。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。

Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

Facebookが社名を変更し、中核事業に据えるほど力を入れる「メタバース」。2021年8月にはグリー株式会社が、今後2~3年で100億円規模の事業投資を行い、グローバルで数億ユーザーを目指すと発表しましたが、その中核を担うのが、グリー株式会社の子会社であり、これまでバーチャルライブ配信アプリを手がけてきたREALITY株式会社です。今回は、そんな同社の代表を務めるDJ RIO氏にインタビュー。そもそもメタバースとは何なのか。なぜこんなにも注目が集まっているのか。メタバースは、世界のあり方をどのように変えるのか。メタバース初心者のビジネスパーソンには必読のインタビューです。

デジタル戦略で生まれ変わるカインズ。ホームセンターからIT小売企業への変遷の軌跡【前編】

デジタル戦略で生まれ変わるカインズ。ホームセンターからIT小売企業への変遷の軌跡【前編】

生産労働人口の減少を受け、日本企業はいよいよ生き残りをかけたデジタル化に取り組まなければいけないと言われるフェーズに入ってきました。とはいえ、それができている企業とそうでない企業との差が激しくなっているのも現状です。 そんななか、ホームセンター大手カインズでは、40年かけて積み重ねてきたホームセンターとしてのあり方を見直し、IT小売企業として生まれ変わろうとしています。カインズでデジタル戦略本部長を務め、戦略の指揮をとる池照 直樹氏に、同社のデジタル戦略についてお話を伺いました。 前編は、カインズがどのようにしてデジタル化を実現させていったのか、具体的な取り組みを交えてお届けします。