【徹底解説】今こそ知りたい、次世代インターネット Web 3(3.0)。

昨年より頻繁に耳にする機会が増えた「Web3(3.0)」というフレーズ。「次世代のインターネット」と言われるものの、新しい概念であり、定義も理解も人により大きな差があります。そんな実態が掴めないWeb3の実像を明らかにするべく、今回はブロックチェーンゲームの開発やNFT事業支援を行うdouble jump.tokyo株式会社の代表取締役 上野 広伸氏にインタビューを実施。Web3を語る上で欠かせない、ブロックチェーンとNFTの現状と未来についてお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- データをNFT化するハードルが下がれば、3年以内にすべてのデジタルアセットがNFT化される未来が来る。

- Web3のキーワードは「非中央集権的」と「自律分散型組織」。GAFAなど巨大テック企業に依存せず、ブロックチェーンの技術をもとに、個人が認証や決裁を行うように。

- 今年は国内の大手ゲーム事業者が本格的にブロックチェーンゲームに進出。ブロックチェーンゲームがWeb3への架け橋へ。

すべてのデジタルアセットがNFT化する未来

——前回のインタビューから半年以上が経過しましたが、NFT業界にはどのような変化が生じていますか?

昨年の夏前から盛り上がっている「アクシー・インフィニティ(※1)」を始めとして、ブロックチェーンゲームがマーケットをけん引しようとしています。今や単にNFTを所有して満足感を得るだけでなく、NFTを実用性のあるユーティリティとして使う流れになってきています。今後はゲームに限らず、価値のあるデジタルアセットはすべてNFT化されるでしょう。現状はNFT化にもコストが必要で、技術的なハードルもありますが、それらはいずれ解消されるでしょう。ほぼ無視できる程度のコストでユーザーにとっても使いやすくなれば、デジタルアセットにシリアルナンバーを振るように、すべてNFT化していくんじゃないでしょうか。

※1:「アクシー」というNFTモンスターを育成して対戦や数々のクエストなどを楽しむゲーム。アクシーの取引で収入を得ることもできる。

——「デジタルアセット」とは具体的にどのようなものを指しているのでしょうか?

価値のあるデジタルコンテンツすべてですね。具体的にはアート作品、ファングッズ、ゲームにおけるキャラクターやアイテムなどを指します。このデジタルアセットの対比となるのが「デジタルコモデティ」です。ゲームにおける単なるパラメータですね。増えたり減ったりを繰り返すテンポラリーな数値なので、わざわざNFT化する意味がありません。これは私の希望も入りますが、3年以内には全デジタルアセットがNFT化すると思っています。

——思ったよりも近い未来ですね。ゲームのデータだけでなく、すべての価値あるデータがNFT化される未来ですか。

加えて、NFTにはデジタル上で活動した痕跡を履歴書的に残すことができます。そういった記録こそが資産として価値になります。これまでリアルな世界では、自分がどのような学歴で、どのような仕事を経験してきたかが重視されてきましたが、コロナ禍になり生活や仕事の多くがデジタルにシフトしました。そうなると、デジタル上での活動も記録していないと片手落ちになります。オンラインでもオフラインでも、自分の活動履歴を残すこと自体が資産になる時代です。これはWeb3の中核をなすブロックチェーンの技術にも共通する話です。

巨大テック企業が支配するWeb2.0から、自律分散型のWeb3へ

——昨年からにわかに「Web3」というフレーズが盛り上がっていますが、漠然としたイメージだけで語られている気がします。上野さんのご意見を聞かせてください。

「Web3」という言葉自体は何年も前から使われてきましたが、昨年あたりから本格的に盛り上がってきました。中身より言葉が先行している曖昧なフレーズなので、現状は人によってWeb3が意味することにズレがありますが、おそらく今年は定義の明確化とともにマーケットが固まっていくでしょう。定義が曖昧ということ自体は決して悪い話ではありません。風呂敷を広げたあとに、皆の動向を見ながら中身を固めていくフェーズになると思います。

——Web3のざっくりとした定義として、「ブロックチェーン技術を応用した、非中央集権的でP2Pでつながる民主的な世界」といった説明もありますよね。

Web3は「Decentralized」、いわゆる「非中央集権的」な考え方です。もう一つのキーワードが「自律分散型組織」を表す「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」です。Web3の大きな特徴として挙げられるのが、特定の企業に頼らずにブロックチェーン技術で認証や決裁をオープンにやっていくという点です。Web2.0のプラットフォームでは、サービスを提供する大企業がまとめて利用者を支援していました。もちろん、それはそれで効率的な面もあるでしょう。

最初から高いクオリティのサービスを生み出すには、特定の企業が一気に手がけたほうが効率的かもしれませんが、ある程度成熟してきたら皆が自由な発想で展開させたほうが、広がりが生まれます。それはオープンソースや二次創作でも証明されています。サービスを提供する企業が存在せず、皆でよいと思ったことをやっていくのがWeb3の世界です。人気が出てくればトークン(仮想通貨)という形でインセンティブも付くのでビジネス的なメリットもあります。

GAFAに代表される大企業は大量のユーザーの個人情報を保持していますが、Web3の世界ではすべてブロックチェーン上にデータが保存されます。一社がデータを独占するのではなく、ブロックチェーン上のデータを活用してサービスを提供する複数の事業者が存在するという考え方です。弊社が開発した『My Crypto Heroes(※2)』というブロックチェーンゲームも、ヒーローのNFTを販売した翌日からNFTマーケットプレイス「OpenSea」で取引されていました。弊社はOpenSeaと特にやり取りをしていませんが、企業の垣根を越えてサービス圏、経済圏が広がっていくのがブロックチェーンでありWeb3の世界です。

※2:歴史上のヒーローを集め、武器や土地を手に入れ、成長させていくゲーム。ヒーローの取引で収益を得ることも可能。

デジタルに記録された情報のみが事実と見なされる時代

——今後はWeb2.0的なサービスはすべてWeb3に置き換わっていくのでしょうか?

すべてがWeb3的なサービスに置き換わるようなことはなく、Web2.0とWeb3は共存していくものと考えています。ただ、重要なことはすでにパラダイムシフトが起こっているという事実です。10年前はデジタルというと、リアルな世界のオプションに過ぎませんでした。リアルで発生した事実をデジタルに記録する、これが10年前の一般的な考え方です。しかし、今や記録されたことが事実になっている時代です。多くの人は意識してないかもしれませんが、明らかにパラダイムシフトが起こっています。

ドライブレコーダーのない時代、交通事故では目撃者と当事者の証言が重要視されていましたが、今やドラレコに記録された情報が事実です。記録されていないことは証明力が非常に弱くなった。つまり、デジタルに記録されたことにはものすごい価値があるんです。その記録をどこか一つの企業に頼り切ってよいのかという話ですね。企業から独立した、どこの組織にも属さない中立的なブロックチェーンに残したほうが安全ではないのかという考え方です。少なくともブロックチェーンは秘密鍵が漏れない限りは、なかなか破れるものではありません。

——Web3の時代において、日本の優位性はどこにあるでしょうか?

Web3という思想自体があまり国に左右されないものですが、やはりマンガ・アニメ・ゲームなどグローバルに通用するIPコンテンツでしょうか。ヨーロッパの国々がワインや服飾品などを「ヨーロッパ産」としてブランド化したように、古くからサブカルチャーを手がけてきた日本には優位性があります。

——サブカルチャー以外で勝負できそうな分野はありますか?

プラダがNFTに参入しましたが、デジタルファッションはリアルファッションよりもマーケットが大きくなると思います。身も蓋もないことを言いますが、ファッションでは顔と体型が重視されます。しかし、デジタルの世界において顔と体型は単なるパラメータに過ぎません。純粋にファッションに興味があった人が好みの顔と体型をつくって、デジタルの世界で思う存分好きなファッションを楽しむ。リアルの世界では着用が難しい洋服でも、デジタル上ではそれくらい尖ったデザインのほうがよかったりもします。現実世界ではどうしても実用性が求められますが、デジタルでは実用性という足枷が外れるのでリアルの世界よりもマーケットが大きくなる余地があると思います。

Web3本格化の火付け役はゲームにあり

——実用性という枠がないことで、思いきり振り切れたクリエイティブが生まれそうですね。

それもあるでしょうね。クリエイティブも百花繚乱になるかと思います。あとはやはり、NFTはファンビジネスに向いていますね。例えば、多くの人が映画のパンフレットを買う理由は、素晴らしい作品を見たあとにその思い出を形として残しておきたいからです。よい思い出を具体的な印として残しておきたい。であれば、その印は現物のパンフレットでなくてもNFTでいいんです。大きくてかさばる映画のパンフレットに対して、NFTなら一切場所も取らずに保存できます。簡単にいうなら、かさばらないファングッズでしょうか(笑)。コンサートや夏フェスに行ったとき、グッズとしてタオルを買うのも同じ動機です。思い出を具現化したい、記録したい。NFTはそのニーズに応える最適な技術でしょう。

——では、御社の今後の展望について教えてください。

今年は国内の大手ゲーム事業者が、本格的にブロックチェーンゲームに進出する年になると思います。多くのゲーム事業者はブロックチェーンに対して期待と不安の両方を抱えています。今、私たちがやろうとしていることは、ブロックチェーンゲームをはじめとするWeb3の世界への架け橋となることです。いつの時代も新しい技術が出てきたときは、ゲームが火付け役になっているんです。インターネットもガラケーもスマホもそうですが、新しい技術やデバイスが生まれるとゲームの世界で大きなマーケットがつくられ、そこでの試みが他の業界へと広がっていきます。

ブロックチェーンやNFTの技術がマスアダプションするには、既存のWeb2.0的なサービス事業者をWeb3の世界へ誘う先導役が必須です。これからもdouble jump.tokyoはその役割を果たしていくつもりです。
上野 広伸
double jump.tokyo株式会社 代表取締役

大手SIerにて金融基盤、ゲーム会社にてゲームプラットフォームの立ち上げに携わり、2018年4月にdouble jump.tokyo株式会社を創業。
ブロックチェーンゲーム「マイクリプトヒーローズ」でEthereumにおいて取引高・取引量・DAUで世界一を記録。ブロックチェーンゲーム「BRAVE FRONTIER HEROES」や「マイクリプトサーガ」など多数のブロックチェーンゲームをサポート中。NFT運用ノウハウを活かし、ビジネス向けNFT管理SaaS「N Suite」も発表。

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