NFTやメタバース(Metaverse)とともに、注目の的となっている「DAO」。仮想通貨やNFTに触れる中で、聞いたことのある人もいるでしょう。しかしDAOについて調べたものの、難解なので理解できない人も少なくありません。
そこで、本記事ではDAOの仕組みやメリット・デメリットなどについて解説します。DAOに対しての理解を深めたい人は、チェックしてみてください。
DAO(分散型自律組織)の特徴
DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、日本語に訳すと「分散型自律組織」となります。「ダオ」と呼ばれる、ブロックチェーンの上で運営される組織です。
DAOには年齢や国籍などを問わず、誰でも参加できます。株式会社とは異なり株式を発行せず、ガバナンストークンを購入すれば意思決定に加われる仕組みです。
中央管理者・代表者がおらず、組織運営のルールはスマートコントラクトというプログラムを見れば確認できます。高い透明性・公平性が評価されている形態です。
DAOの仕組み
DAOの仕組みについて、ブロックチェーン・スマートコントラクト・ガバナンストークンといった3つの要素に分けて紹介します。
ブロックチェーン
「ブロックチェーン」とは、暗号技術によって取引履歴を恒久的に記録できる分散型台帳です。取引履歴をブロックとし、1本のチェーンのように管理しています。
取引を改ざんすることは、極めて困難です。すべての取引や契約の履歴がブロックチェーン上に残り、オープンソースであることもDAOの透明性を担保しています。
スマートコントラクト
「スマートコントラクト」とは、一定のルールに則って取引を自動的に実行するブロックチェーン上に記されたプログラムです。契約内容は、事前にプログラミングできます。DAOの公平性を保証し、投票によってスピーディーで民主的な運営を実現している仕組みです。
ガバナンストークン
「ガバナンストークン」とは、それぞれのDAOで発行される仮想通貨を指しています。組織への提案や、意思決定に関わるために必要です。
株式会社の「株式」のようなイメージとなります。ガバナンストークンはDAOに貢献すると、ガバナンストークンをもらえるケースもあります。また、市場で入手することも可能です。
DAOの事例
DAOは、世界中に数多くみられるものです。その中でも、代表的なDAOの事例を紹介します。気になった事例があれば、活動をチェックしてみてください。
日本
日本発のDAOの事例を紹介します。海外と比べると、決して多くはありません。しかし、いくつか活動的なDAOが存在します。
NinjaDAO
OpenSeaで取引されている日本発のNFTコレクション・NFTアート「CryptoNinja」(クリプトニンジャ)のコミュニティが、「NinjaDAO」です。NFT(非代替性トークン)とは、代替不可能なブロックチェーン上のデータのこと。日本でも有数のDAOであり、様々なジャンルのクリエイターが参加しています。
二次創作(ファンアート)として、ライセンス料を払わずにCryptoNinjaを商用利用できるのが魅力。そのような特徴を活かし、キャラクタービジネスを中心として数々のプロジェクトが進行しています。
和組DAO
「和組DAO」(Wagumi DAO)はWebに関する最新の情報をシェアし、議論できるアクティブなコミュニティです。DeFiやNFTなど、Web3(Web3.0)全般の話題が中心。Web3は、次世代の分散型インターネットです。初心者から起業家まで、幅広く参加しています。DeFi(分散型金融)とは、ブロックチェーンを活用した金融サービスです。
海外
海外のDAOの事例を紹介します。日本よりもDAOの数が多く、先進的な取り組みも豊富です。
BitDAO
「BitDAO」(ビットダオ)は、シンガポールにある世界有数の仮想通貨取引所「ByBit」が支援している大規模なDAOです。DeFiやNFTといった将来性のあるプロジェクトに、資金を提供・投資することを目的として設立されました。
Compound
「Compound」(コンパウンド)は、仮想通貨のレンディングプラットフォームとして使われているDAOです。レンディイングの実績によって、「COMP」というガバナンストークンを入手できます。そのようなスマートコントラクトが実装されているためです。
Braintrust
「Braintrust」は、業者を仲介せずにフリーランスと企業がつながれるDAOです。フリーランスは手数料を払う必要がありません。企業は一定の手数料を払い、質の高い人材にアクセスできます。NASAやNIKEなど、名だたる組織が利用しているのも特徴です。
MakerDAO
「MakerDAO」(メーカーダオ)は、2014年に設立された歴史あるDAOです。ガバナンストークン「MKR」を保有しているユーザーによって管理されています。MKRトークンが多いほど、意思決定権が強くなっていく仕組みです。
ステーブルコイン「DAI」(ダイ)を発行できます。ステーブルコインとは、価格を安定的に保つために設計された仮想通貨。イーサリアムを預けることによって、DAIが発行されるスマートコントラクトが組み込まれています。
PleasrDAO
「PleasrDAO」は、投資家が資金を出し合いNFTを収集・共有しているDAOです。NFTを担保として、DeFiプロトコル「C.R.E.A.M. Finance」から仮想通貨を借りた事例が知られています。世界初のDAO-to-DAOローンとなり、話題となりました。NFTコレクターなどが所属しています。
Bankless DAO
「Bankless DAO」は、Bankless LCCが立ち上げたニュースレターなどのコンテンツを提供しているメディア系のDAOです。世界のバンクレス化・銀行の不要な世界を目標とし、コンテンツ制作を中心として暗号資産の普及を推進しています。BANKトークンによって、投票を実施しているのが特徴です。
ビットコイン・イーサリアム
サトシ・ナカモトが生み出したといわれているビットコイン(BitCoin)も、決められたルールに従ってブロックチェーン上で管理されているDAOの1つです。ビットコインには代表者がおらず、取引はネットワークの参加者によって記録されています。
なお、ガバナンストークンはありません。ブロックチェーンに取引を記録したら、新たにビットコインが発行される仕組み(マイニング)です。ビットコインの発行はマイニングによってのみ実現します。ビットコインのソースコードは公開されており、誰でもガイドラインに沿って改善について提案できるのです。また、イー
DAOのメリット・デメリット
DAOのメリット・デメリットについて、それぞれ詳しく紹介します。
メリット
DAOのメリットを紹介します。株式会社の特徴と比較しながら、確認してみてください。
中央集権ではない
DAOは、中央管理者のいない分散型自律組織です。代表者が不在のため、参加者同士で運営する自律的・民主的なシステム。意思決定に関わるためには、DAOの発行するガバナンストークンが必要となります。
社長がいない状態なので、自らプロジェクトを提案していくイメージです。プロジェクトを実際に行うかどうかはガバナンストークンをもっている人の投票によって決められます。そのため、実力主義になりやすい傾向もあるのです。
株式会社のようなトップダウンではなく、フラットな関係性で提案したり意思決定の投票に参加したりできるのも特徴。構造的にはピラミッドではなく、サークルのようなイメージです。また、トップ層による不正が起こりにくい点も、特徴として挙げられます。透明性が高く、ブロックチェーン上に取引履歴が残されることも、DAOの民主化を後押ししている要素です。
透明性が高い
ブロックチェーン上で運営されるDAOでは、あらゆる取引や契約内容が履歴として恒久的に残ります。またオープンソースのため、誰でもソースコードを確認可能です。スマートコントラクトの内容をチェックできることも、透明性を担保しています。また、ガバナンストークンによって投票が行われるため不正が起こりにくくなっているのも特徴です。
一方で、株式会社では必ずしもすべてのルールが公開されているとは限りません。また、基本的に外部の人はルールを確認できないものです。しかし、DAOであれば組織外の人でもソースコードでスマートコントラクトを確認できます。
資金調達ができる
DAOでの意思決定に関わるには、仮想通貨であるガバナンストークンが必要です。多くのDAOでは、ガバナンストークンの発行をとおして資金調達を実施しています。ガバナンストークンの保有者にも投票権の取得などのメリットがあるため、将来性のあるDAOであれば多くの資金調達を行えるでしょう。
誰でも参加できる
DAOには、国籍や職業など関係なく参加できます。また、匿名性も重視されており実名は公開せずに活動できるのも特徴です。
株式会社とは異なり、顔や名前を知らずに働けます。採用試験や面接もなく、本人確認などがありません。DAOでチームを組み働くことも可能。また、ガバナンストークンがあれば意思決定に関われるのもポイントです。
このように、途中でルールを簡単に変更できてしまうとDAOの根幹である信頼性が著しく損なわれてしまい、組織が成立しなくなるため途中でルールを変更することが困難です。
誰でも構築できる
DAOは参入障壁が高くなく、誰でも構築できます。株式会社は、設立するのに手間がかかりますが、DAOはブロックチェーン上でDAOを設けることが可能です。しかし、DAOの参加者を募るハードルは高くなっています。広報を積極的に行うことが重要です。
デメリット
DAOのデメリットを紹介します。DAOが普及していく中で、新たなデメリットが生じる可能性もあるでしょう。
ハッキングのリスクを抱えている
プログラムの脆弱性が狙われる可能性は、どうしても拭えません。2016年に、イーサリアム上の投資ファンド「The DAO」がハッキングされたことで約360 万ETH(当時約52億円)を盗まれるインシデントが発生してしまいました。
The DAOのプログラムに脆弱性がみられたためです。なお、参加者の合意によってブロックチェーンを攻撃前の状態にしたことで資産を戻しています。ハッキングが起こると、意思決定に遅れが生じることもあるでしょう。また、法整備が整っていない状況下では被害を受けた際の補償などは期待できません。
法整備が十分ではない
アメリカ・ワイオミング州では、2021年にDAOの法人化を認める法案が承認されました。しかし日本だけではなく、DAOに関する法整備は十分ではありません。
DAOがますます一般的になったとしても、法律を整えるには時間がかかります。そのため、法的なトラブルが生じた場合に複雑な法廷闘争に巻き込まれる恐れもあるでしょう。DAOの普及によって、法整備が進んでいく可能性もあります。
意思決定が遅い場合がある
中央管理者がいないことは公平性を担保するうえで重要な要素である一方で、意思決定が遅くなってしまう恐れもあります。意思決定の投票時にはガバナンストークンが必要となり、インシデントが発生した場合にすぐ対応できないこともあるでしょう。
また、DAOへの参加者が多い場合には意思決定に時間を要するかもしれません。さらに、ハッキングなどの問題が発生したときにはより時間がかかります。しかし、株式会社などのようにトップダウンであればスピーディーに意思決定できるのです。そのため、やや中央集権的な側面のあるDAOも多くみられます。
ルールを変更しにくい
DAOは、ブロックチェーン上で事前に決まったルールに従って運用されます。さらに、スマートコントラクトに記されており誰でも閲覧できるものです。投票によってルールを変更できるものの、変更が頻繁に生じると信頼性を欠いてしまいます。そのため、変更しにくい傾向にあるのです。
DAOの将来性
株式会社を設立しないケースが増える
DAOが普及していけば、あえて株式会社を設立しないケースも増える可能性があります。また、DAOは株式会社よりも設立のハードルが低いことも引き金になるでしょう。透明性が担保され、チャリティ事業との親和性も高くなっています。
ガバナンストークンの価格が高まる
DAOに対する注目度が高まると、ガバナンストークンの価格も高騰するかもしれません。「MakerDAO」のMKRなど、価格が高くなっているガバナンストークンは投資対象としても認識されています。
投資が増える
DAOが幅広く認知されることで、DAOに対する投資が集まりやすくなるでしょう。近年は、DeFiプロトコルを運営するDAOに投資が集まりやすい状況です。一方で、DAOへの投資金を開発者が持ち出して逃げる「ラグプル」も起こる恐れがあります。
DAOの作成・参加方法
作成
DAOを設立するには、どのような手段を用いればよいのでしょうか。具体的には、DAOを作成できるアプリケーションを利用します。有名なのは、「Aragon」です。
投票の期間や、プロジェクトの遂行に必要な支持率の設定などを行えます。DAOを作り、ガバナンストークンの発行や意思決定を行いたいときにも活躍するでしょう。様々なプロジェクトがAragonを活用しています。
参加
Discordに参加すればプロジェクトに参加できるものの、投票権を得たうえで関わるにはガバナンストークンを入手する必要があります。
DAOでガバナンストークンを購入する方法
・ビットコインなどを手に入れる
・海外取引所に送金する
なお、複数のDAOに参加することも可能です。
ビットコインなどを手に入れる
まずは、国内の取引所にて口座を開設しましょう。ビットコインなどの仮想通貨を入手します。「bitFlyer」(ビットフライヤー)や「Coincheck」(コインチェック)が有名です。
海外取引所に送金する
次に、入手した仮想通貨を「Bybit」(バイビット)などの海外取引所へ送金します。送金を正しく行うには、送金アドレスをチェック。仮想通貨は、誤って送金してしまった場合にほとんど取り戻すことが不可能です。
そのため、注意深くアドレスを確認することが大切となります。さらに、送金するコインの倍数にも間違いがないかチェックしましょう。送金した仮想通貨で、ガバナンストークンを購入します。
まとめ
DAO(分散型自律組織)について解説しました。DAOには様々なメリットがある一方で、発展途上のため多くの課題も抱えています。しかし、将来的に大きな可能性を秘めている概念です。DAOを活用したい人は課題や仕組みを理解するだけではなく、実際に参加してみてはいかがでしょうか。