中国最前線

中国版Shopifyは生まれるのか? 中国MarTech市場の今を紐解く【中国デジタル企業最前線】

中国企業の最新動向から、DXのヒントを探っていく本連載。今回フォーカスしたのは、DXの中核を担うMarTech領域です。MarTechの先進国であるアメリカと比較したときに、中国市場の優位性はどこにあるのか。なぜグローバル・プライマリーマーケットは中国のMarTech市場に巨額の投資を行うのか。中国のMarTech企業は、どのように分類できるのか。群雄割拠する中国MarTech市場の最前線に迫ります。

ざっくりまとめ

- MarTechをリードしてきたアメリカ市場が成熟した今こそ、中国市場の爆発的な成長に期待が集まる。

- DXが進んだ中国社会だからこそ、MarTech市場の急成長が見込める。2021年は3月までに市場全体で1,000億円規模の資金調達を実現。

- 2,000社以上がひしめく中国MarTech市場。多種多様なサービスを、カオスマップで分析。

- MarTechをはじめとしたDXの推進が、企業の社会的存在感を左右する時代へ。

中国MarTech市場の爆発的な成長が、目前まで迫っている

近年、その規模を急拡大させたグローバルなMarTech市場。従来、その成長をリードしてきたのは、MarTechという概念を生み出したアメリカでした。特に2012年から2018年までは、まさにアメリカMarTech市場の黄金時代。Salesforce、Shopify、ZoomInfoといったリーディングカンパニーが次々と産声を上げ、市場規模は約20倍まで膨れ上がりました。

こうしたアメリカ市場の成熟に比べると、中国のMarTech市場はまだまだ発展段階にあります。しかし、だからこそチャンスもある。実際に中国MarTech市場に対するプライマリーマーケットの融資状況は、10年連続で高水準を維持し続けています。あとに詳述しますが、MarTechを手がける上場企業も続々と登場しつつある。中国MarTech市場は、まさに今が爆発的成長の前夜なのです。

社会のDXが進んだ中国だからこそ、アメリカを越える成長が見込める

中国MarTech市場には、独自の優位性もあります。まずは中国社会全体のDX化が、アメリカなどの諸外国を上回っている点です。インスタントメッセージアプリにしても、決済アプリにしても、今や多くの中国国民が当たり前のように使用しています。その反面、一部の企業を除くと、DX人材は貴重な存在です。特にマーケティングをはじめ、業務横断的にDXを推進できる人材は、まだまだ少ない。しかし、だからこそMarTechのニーズも高まるわけです。

実際に、投資家やアントレプレナーは活発な動きを見せています。UNIQUE RESEARCHの「中国マーケティングテクノロジー業界研究レポート」によると、2020年のMarTech業界の資金調達総額規模は129.9億元(約2,210億円)。資金調達件数は合計130件と、2019年と比べると16.2%の増加です。

さらに2021年1月から3月にかけての調達総額規模は67.3億元(約1,144億円)にものぼり、たった3カ月間で昨年度比の50%を達成したことになります。

中国MarTech市場に対するグローバル・プライマリーマーケットの期待感の高まりを、私自身は次のように分析しています。まずはアメリカ市場の成長を再現しようという狙いです。3年間で時価総額を10倍以上成長させたShopifyをはじめ、AdobeやSalesforceなど時価総額が3,000億USDを超える会社が、アメリカには複数存在します。つまり、アメリカ市場でMarTechという領域の成長性が証明されているため、投資家たちも安心して投資できるのです。さらに今後は、アリババの「新製造」に代表されるように、産業のデジタル化(インダストリアル・インターネット)が一気に加速すると予想されています。そうした時代において、各企業が売上規模を拡大していくためには、今以上にマーケティングが重要になることは間違いありません。MarTechは、産業全体の成長を加速するエンジンとなり得るのです。

2,000社以上がひしめく中国MarTech市場を、カオスマップで読み解く

現時点である程度の実績と規模を持つ中国のMarTech企業は、すでに2,000社を越えているとされています。下記に示すのは中国MarTech企業のカオスマップです。それぞれのカテゴリを簡単に解説していきましょう。
出典元:『2021中国营销数字化(MarTech)发展报告3.0』
上段左側(赤色)は、広告配信の最適化をサポートするマーケティングオートメーション領域です。特に近年では、Googleなどからの検索流入だけではなく、SNSなどからのブランドファンの流入にフォーカスしたサービスへの注目が高まっています。
上段中央(オレンジ)に位置するのが、コンテンツマーケティング領域。ネット上のトレンドなどを分析し、広告ではなくコンテンツを通じて商材を認知してもらうことを狙います。
上段右側(緑)が、SNS&CRM領域。顧客とのコミュニケーションや管理の最適化を支援することで、ユーザーエクスペリエンスの最大化を狙います。
下段の左側(ライトブルー)の領域には、日本だとセールス・フォース・オートメーションと呼ばれるようなツール群に加えて、その他の細分化されたマーケティング補助ツールがまとめて位置づけられています。EC関連のソリューションも含まれます。
下段右側(青)が、CDPやDMPをはじめとした、データ収集や分析を担う領域です。広告配信分析、ユーザー行動履歴分析、ユーザー属性分析、経営データ分析、ABテストなどを実現するさまざまなツールが存在しています。

DXの成否が、企業の生き残りを左右する時代が訪れる

最後に改めて、MarTechをはじめとしたDXの重要性をご説明させてください。下記は、2018年から2023年までの名目GDPのシェア予測を示したグラフです。
時間の経過とともに、DX企業が占める名目GDPの割合が増えていくことが分かります。2023年には、グローバル名目GDPの半分近くをDX企業が生み出すと予想されているのです。このことからも、DXの成否が、企業の生き残りを左右することが理解できると思います。本連載では引き続き、中国のDX最新動向をご紹介していきますので、ぜひ貴社のDX推進の参考にしていただければ幸いです。
李 延光(LI YANGUANG)
株式会社デジタルホールディングス 中国事業マネージャー兼グループ経営戦略部事業開発担当
天技营销策划(深圳)有限公司 董事総経理

2004年来日、東京工科大学大学院アントレプレナー専攻修了。IT支援やコンサルティング、越境EC、M&Aなど多岐にわたって従事した後、2011年に株式会社オプト(現デジタルホールディングス)に入社。2014年より中国事業マネージャー兼中国深圳会社董事総経理を務める。日中間の越境ECの立ち上げ、中国政府関係及びテクノロジー大手企業とのアライアンス構築、M&Aマッチング、グループDX新規事業の立ち上げなどを担当。

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