「ジョーシス」がBPasSで狙う、海外展開とエンタープライズ戦略

新しいパソコンや各種デバイスの購入からセットアップ、社員のアカウントの発行や削除など、情報システム部門のアナログ業務を自動化し生産性を向上させる統合管理クラウドのジョーシス。今年の6月にはそれらの作業をまるごとアウトソーシングできる「BPaaS(Business Process as a Service)」としてのサービスも開始して、中小企業から大企業まで多くのユーザーに採用され、成功しています。ビジネスのプロセスをSaaSとしてアウトソーシングできる「BPaaS」とはどのような可能性を秘めているのか。ジョーシスでCPOを務める横手 絢一氏にお話を伺いました。

ビジネスプロセスをSaaSとしてアウトソーシング。それがBPaaS

――まずはBPaaSという概念について教えてください。もとはSaaSで提供していたジョーシスのサービスをアウトソーシングとしても提供するようになった経緯と併せて教えてください。

BPaaSは「Business Process as a Service」の略で、ビジネスプロセスそのものをSaaSの形でアウトソーシングするサービスです。言葉自体はすでに10年以上前から存在しており、主にアメリカの戦略コンサルの間で使われていたと聞いています。私たちはジョーシスという社名のとおり、企業の情報システム部門向けのサービスを提供しています。リモートワークが当たり前になったポストコロナの時代では人材がよりグローバル化し、彼らが使用するソフトウェアも世界中からアクセス可能という複雑な構造になっています。

人材のグローバル化が進むと、必然的にデバイスやソフトウェアの設定、セキュリティの管理が煩雑化し、すでに人力では対応しきれない状況になっています。そこをカバーするのが私たちの提供するジョーシスです。2年前からジョーシスの提供を開始し、数多くの企業に導入いただきましたが、そのなかで分かってきたのは顧客の業務をいくら効率化しても根本的な解決にはならないということです。

そもそもデバイスの調達やセットアップ、アカウントの発行や削除などいわゆるノンコア業務は誰がやってもクオリティに大きな差がでづらいため、改善余地が少なく、達成感を得難い業務です。顧客ヒアリングをするなかで見えてきたのは、「やらなくてもいいのなら正直、やりたくない」という本質的な想いやニーズが見えてきました。誰がやっても結果が変わらない業務にリソースを割くのはもったいない。それらノンコア業務を私たちが引き受ければ真のソリューションになると考え、生まれたのがBPaaSというアウトソーシングのサービスです。

――BPaaSは誰がやっても結果に大差がない、すなわち属人性の低い業務に向いているのでしょうか?

そうですね。人事の仕事でも、採用は担当者によって大きく結果が異なりますが、年末調整は誰が担当でも同じ結果になります。パソコンのセットアップやアカウント管理などと同様にマニュアル化できる業務はアウトソーシングに出しやすい、つまりBPaaSに向いていると思います。

人材のグローバル化により生まれた「労務のローカル対応」という新たな課題

――海外におけるBPaaSやSaaS市場の動向について教えてください。

人材のグローバル化が進んだことでもたらされたのは、アメリカの企業にフィリピンやベトナム、インドなど各国の人材が集まるようになったことです。海外からの従業員が増えるということは、各国の労務のローカル対応が発生します。今まで数カ国だけでよかったものが、リモートワークが当たり前になると5カ国や10カ国の労務対応も当たり前に発生してくるわけです。

アメリカのDeelという企業はこの複雑化した労務のローカル対応をBPaaSとして引き受けています。わずか20カ月でARR(年間経常収益)を100万ドルから1億ドルに成長させたことで、史上最速で成長したSaaS企業ともいわれています。人材のグローバル化により労務のローカル対応という課題がいたるところで発生して、その課題を解決するBPaaSが急成長を遂げている。これが大まかなBPaaS市場の流れです。

――世界各国から従業員が集まることにより、労務のローカル対応という新たな課題が顕在化しているんですね。

雇用手続きは従業員を採用して真っ先に行う業務であり、まさに課題の一丁目一番地です。その次に行う必要な業務が、パソコンをはじめとするデバイスの調達とセットアップ、新規アカウントの発行などです。デバイスは物理的に運ぶ必要があるので、必ず輸送業務が発生します。私たちがヒアリングしたところ、欧米やAPAC(アジア太平洋)の国々でも同じ課題を抱えていることが分かりました。

大企業の「ガバナンスの崩壊」を未然に防ぐ

――先日、シリーズBで135億円を調達したことがニュースになり、本格的にエンタープライズ企業をターゲットにするとの発表がありました。これまでターゲットにしていた中小企業とエンタープライズ企業では、戦略にどのような違いがあるのでしょうか?

今までお話ししたデバイスの購入やセットアップ、アカウントの設定などは特に情報システム部門の人材不足に直面している中小企業が主に抱えている課題です。対してエンタープライズ企業が抱える課題は「ITガバナンスの低下」、もっといえば「ITガバナンスの崩壊」にあると睨んでいます。リモートワークが普及する前はパソコンをオフィスから持ち出すことは基本NGで、持ち出すのであれば事前の承認が必要でした。今では定期的に持ち帰る機会が出てきたので、デバイスのセキュリティ管理が根本的に変わっています。

さらにパソコンだけでなくタブレットにスマートフォン、セキュリティカード、ソフトウェアなども管理する必要が出てきます。これらを各部署で管理するのか、全社で管理するのか。ソフトウェアは日々新しいものが生み出されているので、使用するにも承認が必要になってきます。中小企業よりも規模の大きいエンタープライズ企業になると件数も膨大になるので、ガバナンスの改善・強化が求められています。そういったガバナンス面の課題を解決するサービスとして、ジョーシスをエンタープライズ企業に訴求していきます。

グローバル市場に進出し、多国籍の従業員を抱えるエンタープライズ企業を狙う

――最後に、今後の展望を教えてください。

まず、日本での展開は中小企業もエンタープライズ企業も同時に、かつ、業種も絞ることなく情報システム部門のサポートをしていきます。短期、長期を問わずこの目標に向かって進んでいきます。グローバルについてはまだ立ち上げたばかりなので、まずは日本での2年前の戦略と同様にPMF(※)を目指します。日本で観測できた基準値をグローバルの各国でも適応させることが当面の目標です。日本ではPMFの達成に1年を要しましたが、当時よりはプロダクトも進化してノウハウも蓄積されているので、グローバルでは1年以内の達成を掲げています。

※ PMF:プロダクトマーケットフィット。提供する製品やサービスがマーケットに適合して、顧客に受け入れられている状態。

グローバルの長期的な展望は、多国籍の従業員がいる企業に狙いを定めてジョーシスを普及させていくことです。単に規模が大きい会社ではなく、多国籍の従業員を抱えている会社というのがポイントですね。アメリカには社員100名程度の会社に10カ国以上の従業員が在籍しているなんてケースもあります。日本でそのような会社はほとんどないでしょう。言語の壁も含めて日本のガラパゴス化を感じる昨今ですが、私たちはグローバルに進出して成長を実現していきたいと思います。

横手 絢一

ジョーシス株式会社 CPO

91年京都府生まれ。京都大学卒業後、14年に三菱商事に入社。「タイヤ販売・交換」のECサービス「TIREHOOD」の立ち上げに参画、同事業責任者を務めたのち、株式会社BEADの取締役COOを経て、2020年にラクスルに入社。現在、ジョーシス株式会社のCPOを務める。

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