「生成AI」は不登校のキャリア支援に有効との研究結果。心理的不安の軽減に「教師」と「生成AI」の協働が重要な課題

成基と札幌国際大学の共同研究を9月28日開催の「AI時代の教育学会」で発表

総合教育機関の株式会社成基は、2024年9月28日(土)、石川県金沢市で開催された「AI時代の教育学会 第6回年次大会」で、生成AI「スクールAI」を用いた不登校のキャリア支援に関する研究結果を発表した。

■成基の不登校支援「シンガク」

成基は、保育園や幼児教育、集団塾、個別指導、英語学童、通信制高校など、「人づくり」を通して社会課題の解決を目指している。
中でも、約30万人と急増している不登校問題は大きな社会課題となっているため、成基では、不登校児童生徒への支援としてオンラインフリースクール「シンガク」を、2023年6月に開校した。
オンラインでお子さんの学習をサポートする「シンガク」では、無学年式(学年に関わらず対応できる)ICT教材「すらら」を活用した学習や、月曜日から金曜日までのメタバース教室の開校、出席扱いとなる制度申請(支援)などで、不登校のお子さんの社会的自立の支援に取り組んでいる。
またイラストなど自分たちの作品を外部に公開する「メタバース展覧会」や、リアルイベント「通称:オフ会」の開催など、不登校のお子さんが、社会とのつながりをもつ機会を提供している。
https://www.shingaku-fs.jp

■社会的自立のためのキャリア教育を実施

さらに「シンガク」では、不登校の子どもたちが将来への不安を解消し、自己理解を深めることが社会的自立に向けた重要なステップだと考え、進路指導やキャリア教育も実施。週1回、不登校の児童生徒とシンガクのコーチが1時間対話をする個別授業を行っている。
この個別授業では、教育コーチングの手法で、子どもたちが自分の中にある答えを引き出し、進路を明確にしたり、自己理解を深めたりするサポートを行っている。
ただ、週1回の個別授業だけでは十分な時間が確保できないため、事前に内省する時間を設け、個別授業でさらに深く関わることが重要な課題になっていた。このため、生成AIを活用し、自己理解を深める新たな取り組みを開始した。
研究は、成基が札幌国際大学基盤教育部の安井政樹准教授と共同で進めてきたもので、生成AIを活用することで、不登校の児童生徒が自己理解を深め、進路不安を解消するという、新しいアプローチに焦点を当てている。

■「生成AI」を使ったキャリア支援とは

生成AIツールは、家庭学習支援サービスを展開する株式会社みんがく(本社:東京都目黒区)の「スクールAI」(https://school-ai.mingaku.net/)を活用し、中学3年生に「AIの村上先生(※)」のアカウントと毎週話してもらうことで、データを蓄積していった。
※生成AIに、オンラインフリースクール「シンガク」教室長の村上の情報(写真・話し方・口癖等)を入れ込んだもの
今回の研究で活用した生成AI「スクールAI=AIの村上先生」は、不登校の児童生徒の進路指導と心理的サポートを目的に開発されたツールで、週1回のコーチングと併用し、子どもたちがAIとの対話を通じて自己理解を深め、進路不安を軽減する手助けを行った。
出典元:プレスリリース

■75%の生徒が「AI先生」は有効と回答

中学3年生を対象に実施された今回の研究結果では、75%の生徒が進路指導において「AIの村上先生」が役立ったと回答した。
一方で、心理的不安の軽減には限界があることもわかり、人間の教師との協働が重要であることが示された。
今回の研究結果を受け、不登校の子どもたちの社会的な自立を支援していくためのキャリア開発・キャリア支援の分野で生成AIが有効であることを改めて認識。
今後は、不登校の児童生徒に限らず、すべての子どもたちが自己理解を深め、夢や志を実現できるよう、キャリア支援を強化し、生成AIの活用をさらに拡大していく。

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