オフィスに出社せず、自宅や出先から業務を行うリモートワークが広がりを見せています。その一因となったのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。他人との会話や接触、あるいは大勢が集まる空間に長時間滞在することで感染するリスクが高まることがわかり、リモートワークを推奨する企業が増えました。自宅にインターネット回線があり、パソコンで主な業務を行える人はリモートワークを取り入れた働き方が一般的になったと言えます。一方でリモートワークでは対面での打ち合わせができません。
そのため、メールや電話よりもコミュニケーションがしやすいビジネスチャットツールやWeb会議ツールなど、遠隔地にいるメンバーとスムーズに連絡・情報共有できるサービスやツールが不可欠です。とくにWeb会議ツールはZoomやGoogle Meetなど各社から手軽に利用できるサービスが登場したことで利便性が高まっています。そんなWeb会議ツールのひとつであるWhereby(ウェアバイ)をご紹介します。
Whereby(ウェアバイ)とは
Wherebyはノルウェーの通信会社Telenorが提供しているWeb会議システムです。もともとは「appear.in」という名称でしたが、2019年に「Whereby(ウェアバイ)」に名称が変更されました。日本での知名度はZoomやGoogle Meetと比べて劣りますが、通信の品質が高いことから欧米を中心に利用者が増えています。最大の特徴は、専用のアプリをインストールする必要がなく、ブラウザで利用ができるという点にあります。さらに詳しい特徴や使い方について、解説していきましょう。
多くのWeb会議ツールでは専用のアプリをパソコンやスマホ、タブレットなどにインストールして使用しますが、Wherebyはその必要がありません。参加者はミーティングの主催者から送られてきたルームのURLをクリックするだけで、会議に参加することができます。URLをクリックすると、ブラウザが立ち上がりますが、そのままミーティングができるわけです。また、Web会議ツールによっては主催者だけではなく参加者も必ずアカウントを作成する必要がありますが、Wherebyではそれも不要です。したがって、パソコン操作に苦手意識がある人でも簡単にサービスを利用することができるというメリットがあります。なお、1度発行したルームのURLはその後も、繰り返し利用することができます。会議を行うたびに新たにアナウンスをする必要がないため、手間が省けると言えます。
Wherebyはブラウザで完結するWeb会議ツールのため、スマホなどのモバイル機器でもブラウザから会議に参加することが可能です。ただ、スマホ向けのアプリも用意されているため、頻繁に利用する人はインストールしてアプリから会議に参加しても構いません。
主催する場合のWherebyの使い方
ノルウェーで開発されたWeb会議ツールということもあり日本語への対応がまだ行われていませんが、シンプルな操作で利用できます。デジタルサービスに疎い人でも、一度利用すれば問題なく会議ができるはずです。まずは会議の主催者としてWherebyを使用する場合の具体的な手順について解説します。
手順1|公式サイトにアクセスしてアカウントを作成する
Wherebyで開催されるミーティングに参加するだけならアカウント作成は不要ですが、主催者になるためにはアカウントの作成が必要になります。まずはWherebyの公式サイトにアクセスし、「Get started」というボタンをクリックします。続いて、「For a team」と「For myself」の二つのボタンが表示されますが、法人などで有料版を利用したい人は「For a team」を選択します。個人で無料版を利用するなら「For myself」を選択します。次の画面ではメールアドレスを登録しますが、GoogleアカウントやApple IDを使用しているなら、そちらでも登録・認証を行うことができます。
保有するGoogleアカウントでサインアップするなら「Sign up with Google」を、Apple IDでサインアップするなら「Sign up with Apple」に進みます。イチから新規で登録をしたい人はYour nameの欄に名前を、Work emailの欄にメールアドレスを入力し、サインアップに進みます。サインアップをクリックすると、入力したメールアドレス宛に認証に必要な6桁の認証コードが送られてくるので、それを入力します。認証が終わると利用プランを選択する画面に移りますが、無料版の「Free」か有料版の「Pro」または「Business」から選べば、アカウントの作成は完了です。
手順2|顔写真や名前などアカウント情報を更新する
アカウント作成後にメニュー欄にある「Account」から名前や顔写真といったアカウント情報を更新することもできます。間違った相手に会議URLを送ってしまわないよう、識別しやすいよう顔写真もアップロードしておいたほうが良いかもしれません。
手順3|ルームを作成する
アカウントを作成すると、会議に使用するルームを作ることができるようになります。メニューの「Rooms」から会議のためのルームを作成でき、自分でルーム名(URL)を設定することができます。すでに誰かに利用されているルーム名を入力すると、「○○ is already taken」と表示されるため、そのときは別の名称をつけましょう。作成したルームのURLは変更しない限り、次回以降もそのまま使用できます。
手順4|ミーティングを開始してメンバーを招待する
ルームを作成したら、いつでもミーティングが開始できます。ルームの右側に「Go to Room」という表示があり、そこをクリックすると、ミーティング画面が立ち上がります。まずはカメラへのアクセスをオンにし、マイクの使用を許可します。続いて「Join meeting」を選択すると準備が完了するので、メンバーを招待します。メンバーの招待も簡単で、「Share link to start a meeting」という表示にあるURLをメールで送付し共有すれば、参加者はそこから会議室に入ることができます。
招待された場合のWherebyの使い方
他のWeb会議ツールと比較して、会議の設定や共有の仕方が簡単だと感じた人も多いのではないでしょうか? ただ、それでも音質が悪く、機能が劣れば、ビジネスには使えないでしょう。続いては会議の主催者からWhereby(ウェアバイ)に招待された場合の操作法や使い方や特徴について解説します。
パソコンからWeb会議に参加する場合
Wherebyで行われるWeb会議にパソコンで参加する場合、事前に専用のアプリケーションをダウンロードする必要はありません。主催者から届く招待用のURLをクリックするだけで、ブラウザが開き、会議が行われる指定のスペースに飛ぶことができます。まずは名前を入力し、カメラやマイクへのアクセスを許可するだけで、会議に参加できるようになります。
スマホアプリからWeb会議に参加する場合
スマホでWherebyで行われるWeb会議に参加する場合も、パソコンで参加するときと手順は同じです。主催者から届いた招待用のURLをクリックすると、ブラウザが開き、会議が行われる指定のスペースにアクセスできます。そこで名前を入力し、カメラやマイクへのアクセスを許可すると、会議に参加できるようになります。また、スマホ用のアプリケーションも用意されているため、そちらを事前にダウンロードしておくと、よりスムーズに会議に参加できます。
Web会議に入れない場合の注意点
主催者から届いた招待用のURLをクリックしても、Wherebyの会議ルームに入れないことがあります。そんなときは、次のいくつかの方法を試してみましょう。①使用しているパソコンやスマホのOSが最新のバージョンになっているか確認し、必要ならアップデートする ②ブラウザのバージョンも確認し、必要ならアップデートする(スマホのアプリでWherebyを利用している人は、アプリのバージョンを最新のものにアップデート) ③ブラウザの「設定」メニューを開き、[Cookie][カメラ][マイク][JavaScript][ポップアップ][音声]の項目が[許可]になっているか確認し、なっていなければ[許可]に変更。
Wherebyの操作方法
ZoomやGoogle Meetなど、他のWeb会議ツールと同様にWherebyにも便利な機能が搭載されています。簡単に操作法を解説します。
カメラの設定方法
会議の主催者から届いた招待用のURLをクリックすると、最初に「Whereby.comが次の許可を求めています」というメッセージがブラウザに表示されます。そこで「許可」を選択すると、パソコンやスマホに搭載されているカメラで自身を写すことが可能になります。誤って「ブロック」を選択し、Whereby.comからの接続を拒否してしまった場合も、ブラウザの設定メニューから「許可」に変更することができます。
画面共有の仕方
いま自分のパソコンで見ている資料などを、他の会議参加者と共有したいときには、「画面共有」という機能を使います。画面下にあるメニューから「Share」というボタンをクリックするだけで、画面の共有が開始されます。もし、複数の画面を開いているときには、ポップアップでどの画面を共有するのか、選択できるので、見せたい画面のほうをクリックしましょう。
チャットを開く方法
会議中に参加者にテキストメッセージを送りたいときには、「Chat」というボタンをクリックします。すると、チャット画面が開き、そこにメッセージを入力し、送信するとチャットを送ることができます。
Wherebyのメリット
リモートワークが広がったことで、Web会議ツールに参入する企業も増えています。Wherebyを選ぶメリットとはどんなものなのでしょうか?
URLを繰り返し利用できるWeb会議ツール
多くのWeb会議ツールでは専用のアプリをパソコンやスマホ、タブレットなどにインストールして使用しますが、Wherebyはその必要がありません。参加者はミーティングの主催者から送られてきたルームのURLをクリックするだけで、会議に参加することができます。URLをクリックすると、ブラウザが立ち上がりますが、そのままミーティングができるわけです。また、Web会議ツールによっては主催者だけではなく参加者も必ずアカウントを作成する必要がありますが、Wherebyではそれも不要です。したがって、パソコン操作に苦手意識がある人でも簡単にサービスを利用することができるというメリットがあります。なお、1度発行したルームのURLはその後も、繰り返し利用することができます。会議を行うたびに新たにアナウンスをする必要がないため、手間が省けると言えます。
スマホなどモバイル機器でもアプリで利用できる
Wherebyはブラウザで完結するWeb会議ツールのため、スマホなどのモバイル機器でもブラウザから会議に参加することが可能です。ただ、スマホ向けのアプリも用意されているため、頻繁に利用する人はインストールしてアプリから会議に参加しても構いません。
他のWeb会議ツールと同様に画面共有やチャットができる
ZoomやGoogle Meetといった利用者が増えている他のWeb会議ツールには参加者がひとつの画面を共有しながら会議ができる機能が備わっています。資料を見ながら打ち合わせをしたり、リモートでプレゼンをするような場合にはとても重宝します。Wherebyにもこの画面共有が備わっています。会議中に画面の下に表示されるメニュー欄に「Share」というボタンがあり、これをクリックするだけで参加者と画面が共有できます。どの画面を共有するかも簡単に選択することができます。
また、会議中にメモ代わりとしてテキスト情報を共有できるチャット機能もあります。こちらも会議中に表示されるメニュー欄にある「Chat」をクリックすると、チャット画面が表示され、テキストを入力することで、参加者に送信することができます。
時間制限が設けられていない
また、参加人数の少なさはデメリットですが、無料プランでも1回の会議における時間制限が設けられていない点は大きなメリットです。Zoomでは1対1の打ち合わせに限り時間無制限ですが、3名以上になると無料版では40分までという時間制限があります。同様にGoogle Meetも60分という時間制限があります。無料プランでも時間を気にせずミーティングができるのは、Wherebyの魅力となっています。
Wherebyのデメリット
専用のアプリをインストールことなく手軽に利用できるWhereby。最低限の機能も備わっており、魅力的なWeb会議ツールのひとつです。では、他のツールと比較した時、何か弱点はあるのでしょうか? Wherebyのデメリットについて解説します。
1つのルームに入室できるのは4名まで
ZoomやGoogle MeetといったWeb会議ツールとの大きな違いのひとつは、会議への参加人数です。ZoomとGoogle Meetの無料プランでの参加人数は最大100名までですが、Wherebyでは1つのミーティングの最大人数は4名までとなっています。そのため、無料版では小規模なミーティングに利用が限られてしまいます(企業向けの有料プランでは12名まで)。したがって会議への参加人数だけを比べると見劣りすると言えます。ただ4名程度のミーティングの頻度が多い企業やフリーランスの人にとっては、十分に活用できるツールと言えるかもしれません。
無料版には録画機能がない
ZoomやGoogle Meetでは無料版でも録画機能が搭載されています。容量や保存先が有料版とは異なりますが、頻繁に録画をしないのであれば、十分に活用できる機能です。対するWherebyでは無料版には録画機能がありません。そのため、議事録としてミーティングの様子を残しておきたい人や、後日不参加だったメンバーと共有したい場合には、企業向けの有料版を選ぶ必要があります。
少人数のカジュアルな打ち合わせならWherebyがおすすめ
日本ではZoomやGoogle Meetと比べ知名度で劣るWherebyは、無料版では参加人数が4名で録画機能が搭載されていないなど機能面でも見劣りする面があります。一方で無料版でも時間無制限で利用できるというメリットがあります。そのため少人数のカジュアルな打ち合わせならWherebyで十分だという考え方もできます。とくに中小企業では人数の多い会議を開く機会は少なく、Web会議ツールにかけるコストも抑えておきたいという事情もあるでしょう。したがって、Wherebyも導入したいWeb会議ツールのひとつとして選択肢に上がるのではないでしょうか?