改ざん耐性の強いブロックチェーン技術が応用されているサービスを紹介

ブロックチェーンは仕組み上、データの改ざんが不可能だとされています。大切なデータを対する耐性の強さが評価され、さまざまなサービスへの応用が進められています。そんなブロックチェーン技術を応用しているサービスやツールを紹介していきます。

電子データでやりとりされる仮想通貨ですが、その仕組みを支えるブロックチェーン技術は、インターネット登場以来の発明だと言われます。ブロックチェーンのどこが革新的なのでしょうか? ひとつの要因は取引を集中的に一元管理する組織を置かない点にあります。従来のコインや紙幣といった現物通貨による経済では、国や中央銀行が発行や流通量をコントロールすることで、通貨の価値や信頼性を担保していました。一方で仮想通貨には国や中央銀行といった取引を一元管理する組織が存在しません。取引のデータを複数人で共有し、それぞれが保管することによって、データの改ざんに強い仕組みを作り、なおかつフェアで、透明性の高いマーケットを形成することに成功しています。

こうしたブロックチェーン技術の安全性や改ざんに対する耐性の強さが評価され、さまざまなサービスへの応用が進められています。そんなブロックチェーン技術を応用しているサービスやツールを紹介していきます。

ブロックチェーンの分類

ブロックチェーンといっても、その特徴によっていくつかのタイプに分類することができます。続いてはブロックチェーンのタイプをご紹介します。

パブリック型ブロックチェーン

パブリック型のブロックチェーンは、基本的に誰でも参加することができるという特徴を持っています。管理者が存在せず、誰でも取引をしたり、承認のためのマイニングに参加することができます。ノードと呼ばれるブロック同士には面識がなく、常に増えていく(例えば10分おきに)という性質があり、改ざんが難しいというメリットがあります。一方で、参加者が多いため、取引の合意を得るときには時間がかかりやすいというデメリットもあります。

プライベート型ブロックチェーン

管理者がいないのが、ブロックチェーンの特徴ですが、管理者を置いているタイプのブロックチェーンも存在します。管理者によって許可されると、ネットワークに参加できる仕組みになっており、クローズドな分だけ、合意形成までの時間が短いというメリットを持っています。管理者がいるため、ブロックチェーンの特徴を生かし切れているとはいえず、ブロックチェーンに分類するかは議論の分かれるところです。

コンソーシアム型ブロックチェーン

コンソーシアム型はパブリック型とプライベート型の特徴を兼ね備えたようなもので、特定の管理団体や複数の管理団体がブロックの生成を担当します。複数の企業が参加してブロックチェーンに関する実験が行う際などに立ち上げられることが多く、関係者のみが招待されるケースが多いようです。

ブロックチェーンの使用用途

データを複数のコンピュータで管理することによって、改ざんに強い特性を持つ、ブロックチェーンですが、仮想通貨以外にもさまざまなシーンで、その技術が活用されようとしています。どんな場面で応用が期待されているか、代表的な利用シーンをご紹介します。

決済や証明、契約

取引の信頼性や透明性が欠かせない決済や証明、契約の場面では、ブロックチェーンの特性が生かされます。ひとつのサーバーで取引データを管理していると、不正アクセスやサイバー攻撃によって、情報の流出や毀損が起こる可能性があります。ブロックチェーンなら複数のコンピュータで同じ取引データを管理することによって、事実上、改ざんが不可能となっています。そのため、正確な記録を残すことが重要視される決済や契約の場では、重宝されることになります。一方で、ブロックチェーンでは管理者が不在のため、取引の成立を意味する合意形成に時間がかかってしまいます。クレジットカードなど他のキャッシュレス決済とは異なり、即時に決済が必要となるシーンでは、あまり利用に向いていないという課題が指摘されています。

関わる媒体の多い業務の効率化や自動化

ブロックチェーンでは、複数のコンピュータで取引データを管理しますが、保存するのは同じデータです。そのため改ざんが難しいのですが、この仕組みを利用して、1つの契約に関わる事業者が多い場合などに、効率化の手法として用いられることがあります。また、ブロックチェーン上には「スマートコントラクト」という契約を自動化できる仕組みもあり、これはある条件が整うと、契約の履行や決済が自動で実行されるというものです。この仕組みを取り入れることで業務の一部を効率化・自動化することが可能になるため、実証実験やテストが行われています。

ブロックチェーンが活用されているサービスの事例

続いては、ブロックチェーンが活用されている具体的なサービス事例をご紹介します。

仮想通貨をはじめとするフィンテック事業

フィンテックはICT(情報通信技術)と金融サービスを融合させることで、新たな価値を生み出すイノベーティブな分野です。資金や決済の流れ、スピードを大きく変える可能性があり、多くの企業が参入しています。派生するビジネスは多岐にわたり、キャッシュレス決済のほか、ネットバンキング、AIによる金融アドバイスなど、さまざまですが、とくに注目されるのがビットコインに代表される仮想通貨の分野です。仮想通貨はブロックチェーンの仕組みによって成り立っており、基礎技術として活用されています。

自動運転技術のデータ改ざん防止

改ざんからデータを守りたい分野として、自動運転技術も挙げられます。自動運転では走行データや道路など周辺データを積み上げて、信頼性や安全な走行のためにビッグデータを活用することが求められています。その点、ブロックチェーンの技術を使って、車がそれぞれ分散型データを持ち、自動で互いのデータを交換できるようになれば、自動運転車の開発スピードも急速にアップすると考えられています。自動運転車のデータを改ざんしようとする悪意ある攻撃からも守ることができ、さらに事故が起きた場合にも、何が起こったのが、原因を記録することができるため、検証もしやすくなります。こうした事故データは安全な走行の確立に利用できるだけではなく、保険の支払いなど、事故処理の場面でも活用することができます。

デジタルコンテンツの著作権の管理

次々と新しいコンテンツが生まれる、デジタルコンテンツの分野での著作権管理も、煩雑な作業を軽減するために、ブロックチェーンが注目されています。著作権に関する情報をデータの相互保有によって管理しながら、改ざんできないシステムが構築できるため、正確な著作権情報を蓄積し、運用することが可能になります。

管理者が次々と変わる荷物の配送

ネットショッピングの利用拡大によって、配送される荷物の数が急激に増えています。配送場所や時間帯、配送センターとのやり取りなど、扱うデータも膨大です。さらに、荷物が受けた衝撃などをデータ化することによって、破損した荷物が配送された際に、どのタイミングで衝撃があったか、収集する試みも行われています。こうしたデータの集積化が進めば、荷物が毀損した際の責任の所在も明確になると考えられています。

利用シーンの拡大が予想されるブロックチェーンの技術

仮想通貨の基礎技術として利用されているブロックチェーンですが、その特徴を生かせる分野は多岐にわたっています。とくに様々なデータがデジタル化される近年は、常にその保護の仕方が問題になります。暗号化によってデータを守ることも当然ですが、それ以外の方式も研究が続けられています。ブロックチェーンは複数のコンピュータが同じデータを保有することで改ざんを不可能にするという新しい発想のテクノロジーです。

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