モバイルバンキングサービスを提供する非銀行のフィンテック企業「Chime」 〜海外ユニコーンウォッチ #15〜
2024/4/9
「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で、設立10年以内の非上場企業を伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほど珍しいという意味だ。かつては、MetaやX(旧、Twitter)もそう称されていた。本連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。なお、昨今の市場環境を鑑み、本記事は特別に「設立10年以内」という制限を外してユニコーン企業として選出する。今回は、モバイルバンキングサービスを提供するフィンテック企業「Chime」を取り上げる。最近では、2025年にも上場するのではないかという観測が報じられた。
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「Chime」とは
Chimeの根幹にある思想は、共同創業者であるクリス・ブリット氏とライアン・キング氏が持った問題意識だ。2人は10年以上前の世界的な金融危機のなか、従来の銀行システムが一般顧客を最優先に考えていないと感じた。表面上は「無料」と謳いながら、実際には後から隠されていた手数料が生じる仕組みなどがあるとし、これを問題視した。そこで、従来の銀行システムと一線を画し、顧客中心を目指した上で、当座貸越の手数料や、月額サービス料を無料としたモバイルバンキングサービス「Chime」を生み出した。
Chimeは、2021年8月に、シリーズGラウンドとして約7億5000万ドル(約1,125億円)の資金調達を実施した。その際、企業価値は約250億ドル(約3兆7,500億円)に達したという。資金調達後はIPOが間近とも言われたが、2022年には、IPOの計画が延期されたと報じられた。