生成AI活用事例 「【生成AI×マーケティング最先端】生成AI時代のマーケターに求められる必須スキルとは」セミナーレポート

AI

世界中に衝撃を与えたChatGPTのリリースから一年以上が経ち、生成AIがビジネスの現場で活用されることが増えており、業務効率化をはじめとする成功事例も公開されるようになってきました。そのようななかで、マーケティング業界における生成AIの活用事例や、生成AI時代のマーケターに求められるスキルを伝えるべく、一般社団法人ウェブ解析士協会は、2024年1月16日(火)、オンラインセミナー「【生成AI×マーケティング最先端】生成AI時代のマーケターに求められる必須スキルとは」を開催しました。

今回は、本セミナーから、一般社団法人生成AI活用普及協会(以下、GUGA) 企画室 室長 三浦 康平氏と、株式会社オプト AIソリューション開発部 部長 田中 宏明氏が登壇したプログラムをレポートします。それぞれのプログラムでは、生成AIを取り巻く動向やマーケティング業務での具体的な活用事例などが明かされたほか、セミナーの最後には三浦氏から、改めて、生成AI時代のリスキリングのポイントが語られました。

生成AIの活用が日本経済再活性化の切り札となるか

最初に、GUGAの三浦氏より「生成AIによって訪れる未来。日本社会はどう変わるのか?」というテーマで、生成AIに対する日本政府や企業の動き、そして生成AIの影響を踏まえた今後の展望についてのお話がありました。

三浦:まずは国の動向についてご説明します。第1回として、2023年5月11日に、政府直下で「AI戦略会議」が行われました。こちらでは、省庁を横断してAI活用について考える「AI戦略チーム」というものがあり、内閣官房副長官を務める村井英樹衆議院議員がチーム長を兼ねています。村井氏は「通常では考えられないスピードで国が動いている。一般には半年から一年程度かけて行う取りまとめを、AI戦略会議では約2週間で実施している」、「生成AIは日本経済の再活性化に向けたゲームチェンジャーとなる可能性が極めて高いという判断のもと、こうしたスピード感で進めている」と語っています。2023年は、日本がG7の議長国だったため、G7広島サミットの結果を受けて「広島AIプロセス」が立ち上がりました。また、令和6年度のAI関連予算の概算要求金額は、全体で約1,640億円です。これは、前年度の予算に対し約503億円の増額で、そのうち、生成AI関連の要求は約728億円と大きな割合を占めています。このような状況からも、日本が本気で生成AIの活用を推進しようとしていることが伺えます。
(引用)三浦氏講演資料より
資料内参照:https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/5kai/shisaku.pdf


次に、企業の動きについてです。PwCコンサルティングの資料によると、2023年春時点では「生成AIを使ったことがある」という人は約10%でした。それが、2023年秋時点では、約73%が「生成AIを使ったことがある」と回答しており、認知度や利用経験はかなり増えています。一方、推進中や検討中といった「活用前段階」の企業が53%で、まだ足踏みをしている様子も見られます。

最後に、これからの未来についてです。生成AIの台頭により、AIは「つくる」ものから「使う」ものへと変化しています。今までは主に技術職を対象とし、「いかに精度の高いモデルをつくるか」が重要でした。しかし、今では技術職だけでなく、すべての人を対象としており、「いかに付加価値を高めるために使うか」が重要になっています。そのような意味で、「AIの民主化」が起きているのです。AIの民主化により生成AIを活用する人や企業が増えるからこそ、今後は、自身や自社が「生成AIを安全に活用できること」を証明する、生成AIリスキリングが重要になると考えています。

広告制作への生成AI活用で、業務が大幅に短縮し、効果が向上

次に、オプト田中氏から、「テキスト/画像広告クリエイティブ作成における生成AIの活用」をテーマに、実際にさまざまな形で生成AIを導入しているオプトならではの事例として、ChatGPTのAPI公開から短期間で開発したプロダクトや、画像生成AIを活用した社内コンテストなどが紹介されました。

田中:弊社は、ChatGPTのAPIが公開されたら最短でプロダクトに組み込んでリリースすると決めていました。実際に、2023年3月1日のAPI公開から2週間ほどで「CRAIS for Text」というプロダクトをリリースしたところ、業界で一番早かったこともあり注目を浴びました。このサービスでは、「ChatGPTを活用したテキスト広告の自動生成」と「生成したテキストの効果予測(自社開発の効果予測AIを使用)」を行っています。クリエイティブを大量に生成し、そのなかから効果が良いものに絞って配信するというものです。従来は、5つのテキストの配信に約2時間かかっていましたが、本サービスの導入によって約30分に短縮されました。また、様々な条件、情報に基づく提案が可能になったことで、今までよりも幅広い可能性を探索できるという意味でクオリティの向上にも寄与するため、二重のメリットがあります。
続いて、バナー広告についてです。弊社では、画像生成AIと効果予測AIを活用したバナー広告の社内コンテストを行いました。その結果、生成AIを活用するメリットが見えてきました。生成AIは、バリエーションの展開、つまり、さまざまなパターンを量産することに貢献します。しかし、むやみに量産しても意味がありません。そこで効果予測AIを併用し、良い候補に絞り込みを行うという新しいフローを構築しています。更に、現実での撮影が困難な写真でも、生成AIであれば制約なく制作できます。例えば「水を浴びながら笑っている人」を綺麗に撮影するのは難しいのですが、生成AIは簡単に生成してくれます。

ただ、プロンプトの知見が必要であることや、画像が上手く生成されないこともあるなど注意点も存在します。何でもAIで生成すれば良いという訳ではなく、ストック素材で良いものがあればそれを使う方が早いので、AIとの使い分けや併用が重要だと考えています。

生成AIリスキリングを推進するための3つのポイント

セミナーの最後には、GUGA三浦氏が自身のプログラムの最後に触れた「生成AIリスキリング」について、実際に進めていく上で重要なポイントを説明しました。

三浦:生成AIリスキリングには「スキル」と「AIリテラシー」の2つのアプローチが必要です。AIを自由自在に使うことができる「スキル」と、AIの仕組みやどのようなリスクがあるかなど、安全に活用する前提として必要な知識や心構えとなる「AIリテラシー」の両方が大事になります。

その上で、リスキリングを推進するポイントを3つご紹介します。まずは、生成AIの可能性とリスクを正しく伝え、健全な課題意識を顕在化する、つまり自分ごと化するということです。「仕事を効率化でき、自分の働き方を柔軟にできるかもしれない」、「このアウトプットはもしかしたら何かに違反しているかもしれない」というように、生成AIの可能性とリスクを自分ごと化させることが大事になります。

2つ目は、誰もがリスキリングを始めやすい土壌を作って、注力的に育成すべき人材を見極める、もしくは自分がそういう人材なのかを理解することです。トップダウンで「AIを勉強しなさい」と言ってもモチベーションが低い人には難しいでしょう。しかし、誰もがリスキリングを始めやすい土壌を作ることで、それを楽しいと思える人は自ら勉強し、生成AI人材になると思います。そのため、どのような人材が生成AIを前向きに捉え、成長していくかを見極めるために、組織としてそのような土壌を作ることが重要です。

そして3つ目は、リスキリングに取り組んだ人材がメリットを感じられるような評価制度を設けることです。例えば、昇給制度が一番わかりやすいかと思います。「生成AI活用リーダー」といった役職を設けることも考えられます。モチベーションを上げられるような評価制度を設けることが大切です。また、そのような人材を採用したい場合は、生成AI人材になることで受けられる待遇を用意するのも良いでしょう。

以上の3つのポイントを理解した上で、生成AIのリスキリングを推進していただければと思います。

三浦 康平

⽣成AI活⽤普及協会事務局企画室室⻑

株式会社オプトに新卒⼊社。⾦融業界の広告主のデジタルマーケティングを⽀援する営業として従事した後、転職を経て独⽴。顧問先にマーケティング領域のコンサルティングを⾏う中で、AI活⽤の知⾒を深める。
⽣成AIの台頭を受け、⾃⾝の仕事がAIに代替される危機感を感じると同時に、⽣成AIの持つポテンシャルを⽇本社会に普及する必要があると考え、2023年5⽉に⽣成AI活⽤普及協会を共同創業。企画室室⻑として「AI初⼼者にも分かりやすい情報発信」に取り組んでいる。

田中 宏明

株式会社オプト
AIソリューション開発部 部長

外資系コンサルティング会社に新卒で入社後、2006年株式会社オプトに入社。SEMコンサルタントに従事。SEO部署の立ち上げ、SEM研究所の立ち上げを経て2009年にクロスフィニティ株式会社へ異動。ソーシャルゲームやポータルサイトの立ち上げに参画する。2011年に国内初のCRO(コンバージョン率最適化)サービスを立ち上げ事業化をした後、AIソリューション開発に従事する。2019年に株式会社オプトのエンジニア組織、オプトテクノロジーズに異動。2020年よりAIソリューション開発部にて部長を務める。

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