生成AIはデザイン“未”経験者をどのように変えるのか?【生成AI時代の新たな広告制作 #3】
2024/6/18
~オプト・アドビ・Re Data Science共同「画像生成AI×効果予測AIを活用した広告クリエイティブデザインコンテスト」イベントレポート~
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一方、今回は「生成AIはデザイン未経験者をどのように変えるのか」がテーマとし、 2024年5月に、未経験者を対象に実施されたオプト・アドビ・Re Data Science共同「画像生成AI×効果予測AIを活用した広告クリエイティブデザインコンテスト」にて、いったい、何が起こったのかをひも解いていきます。
今回も、データ解析・機械学習技術を用いたサービス開発を手掛けるRe Data Science株式会社の代表 高田悠矢氏に解説いただきます。
今、注目したい「生成AIの活用方法」
各チーム、もっとも判定結果が良かったクリエイティブを提出し、全チームの“代表”クリエイティブを、再度「Open CTR Predictor」に投入、もっとも良い判定となったチームの優勝です。また、審査員としてご参画いただいたLINEヤフーの林嘉信氏が選んだ“生成AIならでは”のクリエイティブを制作したチームには特別賞が、クリエイティブの制作本数が最も多かったチームには最多検証賞が贈られました。
生成AIは、無限の可能性を秘めたツールではありますが、今のところ、それ単体では広告は制作できません。では、生成AIがあってもデザイナーの知見がなければ広告は制作できないのでしょうか、あるいは、生成AIのさらなる進化を待つほかないのでしょうか。いずれも「ノー」で、既に、生成AIと相性の良いツールを有機的に組み合わせれば、非デザイナーでも「生成AIで生成した画像」を「広告」に仕立て上げることは十分可能であるということ、これが私たちが当コンテストで示したかったことです。
ヒトができることは何か
当コンテストでは、当日に初めてツールに触れた方がほとんどでしたが、ほぼ全員が開始15分程度でツールの使い方を十分にマスターしていました。そして開始30分程度経過すると、既にデザインの未経験者が“広告”を完成させていました。これにはとても驚きましたが、その数分後には、さらに驚くことになります。
今回は、当コンテストの企画として、デザインに関する技術的な部分はすべて生成AIや、それらと相性の良いツールに任せてしまっているため、参加者はデザイン未経験であったにも関わらず、ある種の“余裕”が生まれた状態になっていました。そこで、多くのチームが「戦術」を議論し始めたのです。
例えば、生成AI「Adobe Firefly」では、文章をプロンプト入力すると、その結果として画像が4点同時に出力されます。この同時に出力される(類似した)4点を、それぞれ広告として仕立てて「Open CTR Predictor」で判定を行うよりも、潔く4点のうち3点は捨てて、別の文章で新たに生成を行い、類似していないもの同士で判定を行った方が効率的である、といった法則を導き出し、それを戦術としてチーム内で浸透させていました。
さらに、1時間程度経過すると、得られた経験則から、使用するテンプレートを限定したり、生成の方向性を定めたりといった「戦略」を策定するチームが見られたほか、制作のプロセスを分解し、プロセスごとにチームメンバーを割り当てたり、効率の悪い作業を禁止にしたりと「BPR」(Business Process Reengineering)的な施策を行うケースもみられたりしました。
今回のコンテストは「デザインの経験が全くない人であっても、生成AIを使えば、一定程度のクオリティの広告を制作できることを示す」企画でしたが、予想外に、このフェーズは最初の30分程度で完了し、その後は、ヒトの凄さを改めて体感することとなりました。AIに任せられるものは任せて、その上でヒトは戦略や戦術を考えるという動きは、もしかすると、生成AI時代に「ヒトにできることは何か」という問いに対する答えの一つかもしれません。
多様性への懸念
コンテストでは「生成AIに加えて、生成AIと相性の良いツールを有機的に組み合わせれば、デザインの経験が全くない人であっても、一定程度のクオリティの広告を制作できること」を明確に示すことができました。さらには、生成AIによる効率化で生まれた“余裕”から、多くの戦略、戦術を生み出そうとするヒトの主体的な動きがみられるなど、非常に示唆深いものになりました。
また、当コンテストの運営に携わったアドビの有川慧氏によれば「生成AIを用いてクリエイティブの制作から効果検証まで行うという取り組みは、過去の事例と比べて、新しく貴重なものである」とのことです。ご参加いただいた皆さま、改めて、ありがとうございました。
Re Data Science株式会社 代表取締役社長
2010年 工学系修士課程修了後、⽇本銀⾏⼊⾏。景気動向や金融システムに関する統計分析業務に従事したほか、資金循環統計やGDP統計(内閣府出向時)の推計手法設計に携わる。2015年 株式会社リクルート⼊社。戦略策定のための統計分析や、リコメンドエンジンの開発、⼈事課題に対する統計分析・機械学習手法の適用、⾃社データを活用した経済指標の開発・発信など、データ起点のさまざまな取り組みの企画・実行を担う。2021年 Re Data Science株式会社を創業。機械学習技術を用いた新規事業企画・開発支援、データ解析等を行う。