車のサブスク事業で急拡大「ナイル株式会社」 〜IPOから読み解く、デジタルシフト #14〜

多くの企業が目標の一つとして掲げ、憧れ、夢を見る言葉、「上場」。これを達成した企業は資金調達の規模が大きくなり、さらなる挑戦ができるとともに、社会的に認められたという箔が付く。何百万社とある日本企業のなかで、上場企業は約3,800社。非常に狭き門を突破した、選ばれし企業たちだ。

本記事では、デジタルシフトを実現しながら新規上場を果たした企業に焦点を当てていく。今回は、DX・マーケティング事業を手がける「ナイル株式会社」を取り上げる。同社は、2023年12月20日に東証グロース市場に上場する。

SEOコンサルティングからスタートした「ナイル株式会社」

ナイルは2007年に設立され、DX・マーケティング領域のコンサルティングや、自社サービスとしてアプリ情報メディア「Appliv」、月額定額でカーリースができるサブスクリプションサービス「おトクにマイカー 定額カルモくん(以下、定額カルモくん)」などを提供している。

同社は、創業初期からデジタル領域で事業を展開しており、2010年にデジタルマーケティング事業を開始し、企業のデジタル課題の発見から解決策の支援までを行ってきた。2012年、メディア事業を開始し、「Appliv」をはじめとする同社が運営するメディア群の月間ユーザー数は、2023年9月末時点で約760万人となっている。それらで得た知見を活かし、2018年には自動車産業のDXを推進するため「定額カルモくん」をリリースした。現在は、日本のDX課題を解決する「産業DXカンパニー」を謳っており、生成AIを活用した業務改善コンサルティングサービスを提供し、業務コストの削減を目指す社内組織「Nyle Generative AI Lab」を発足するなど、生成AIの活用にも積極的だ。
ナイルは、2022年12月期の売上高が約41億3,900万円で、営業損失は約13億3,600万円だった。2023年12月期は第3四半期累計で売上高が約39億6,000万円、営業損失が約4億9,900万円となっている。

ユーザー体験と高効率運営を両立する「自動車産業DX事業」

ナイルの事業で、ここ数年急成長しているのが「定額カルモくん」を中心とする「自動車産業DX事業」だ。同社の2020年12月期から2022年12月期における売上高のCAGR(年平均成長率)は55%だが、自動車産業DX事業単体のみでは164%となっている。「定額カルモくん」では、車両本体に加え維持管理コストまでを含めた料金が設定されており、頭金やボーナス払いはなく、月額定額でマイカーを利用できる。車選びから料金のシミュレーション、申込まで24時間オンライン受付だ。ユーザーは、店舗に行く手間を省くことができ、いつでもオンラインで手続きができるとともに、ナイルとしても実店舗を持たないことでコストを下げられるというメリットがある。これまでディーラーや保険事業者、金融事業者など介在者が多かった自動車購入のプロセスを一括でDXすることで、ユーザーの利便性を高めるとともに、効率性の高い事業運営を実現している。

水平方向と垂直方向、二つのアプローチで日本のDXを推進する

ナイルは、創業以来手がけているDX・マーケティング支援事業を「ホリゾンタルDX事業」と呼んでいる。「ホリゾンタル(Horizontal)」とは、「水平な」という意味で、業界を問わずさまざまな産業のDXを支援することを示している。一方で、「自動車産業DX事業」は、垂直を指す「バーティカル(Vertical)」な事業であるとし、特定の産業や業界を深掘りした事業を自ら展開することで、その産業のDXを直接的に推進している。さまざまな産業へのホリゾンタルなDX支援をする一方、自動車産業のバーティカルなDX事業を自社で生み出すことで、DX支援のノウハウを蓄積しながら、それを自社のDX事業に活かし、自社でDX事業を持つからこそ得られる知見を顧客企業のDX支援にも活かすという有機的な循環を生み出している。「広く浅い」DX支援と「狭く深い」DX事業開発の好循環により、「産業DXカンパニー」として日本のDXのさらなる推進を目指している。

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