「テレワークジャパンサーベイ2020年版」が公開 在宅勤務の最も大きな問題は「通信の遅さや重さ」

パロアルトネットワークス株式会社は、新型コロナウイルス感染症対策として推進されているテレワークの実態と、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の課題について明らかにすべく、日本企業の意思決定者を対象に実施した「テレワークジャパンサーベイ2020年版」の結果を発表した。

■調査背景

新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、日本でも緊急事態宣言が発令される中、政府の専門家会議は「新しい生活様式」の実践例としてテレワークを挙げている。パロアルトネットワークスは、新型コロナウイルス感染症対策として推進され、働き方改革や事業継続計画(BCP)の観点から今後も重要性が高まるテレワークの対応状況や課題を明らかにすべく、年間売上高500億円以上かつ従業員500人以上の国内企業の意思決定者約456人に対して調査を実施した。

■在宅勤務時に発生した最も大きな問題として56.7%が「通信の遅さや重さ」を挙げ、テレワーク実現の阻害要因はITインフラの未整備が大半を占める

本調査において、89.9%が新型コロナウイルス感染症対策として全社的あるいは部分的な在宅勤務を実施しており、その中の94.6%が在宅勤務時に問題や課題が発生していると回答している。問題・課題として「通信が遅くなったり重くなったりすることがある」が56.7%と最も多く、全社員における在宅勤務比率が高いほど回答率が高いことから、VPN(仮想プライベートネットワーク)による社内ネットワークへのアクセス増加やデータセンター経由でのクラウドやインターネットへのアクセスによって、ネットワーク帯域がひっ迫され、業務生産性に悪影響を与えていることが想定される。また、「社内ネットワークへの接続に制限がある」も5番目(36.2%)に多く、接続数の制限などのネットワーク基盤を起因とする問題・課題が多く発生している。

図1:新型コロナウイルス感染症対策の在宅勤務で発生した問題や課題(n=409)
出典元:プレスリリース
また、在宅勤務を含むテレワーク実施の阻害要因としては、「テレワークを実施するためのアクセス環境が十分整備されていない」が40.1%と最も多く、「業務がオンライン化(ペーパレス化)されていない」(36.8%)、「テレワークができる社内システムが十分整備されていない」(33.1%)など、上位5番目までの回答がすべてIT環境の不備によるものだった。紙やハンコに代表される「アナログ文化」の業務慣習、商慣行が足かせとなり、在宅勤務が可能な職種や業務が限定されていることが考えられる。ITインフラや業務システムの近代化が、オフィス勤務と同等レベルでの業務をテレワークで実現し、それを定着できるかどうかのカギとなっている。

図2:在宅勤務を含めたテレワークを阻害する要因(n=456)
出典元:プレスリリース

■セキュリティ対策への課題意識は低い一方、80.9%がテレワーク時のサイバーリスクに懸念

前述の在宅勤務実施時の問題・課題として「在宅勤務向けのセキュリティ対策が不十分」を挙げたのは17.8%にとどまる一方、80.9%がテレワークにおいて何らかのセキュリティに関する懸念を抱いている。「自分が扱う業務データの情報漏えい」の懸念が約半数(46.1%)にのぼり、「在宅時のインターネット環境のセキュリティ」(43.0%)、「業務端末のウイルス感染」(37.3%)が続いた。

図3:テレワークにおけるセキュリティに関する懸念(n=456)
出典元:プレスリリース
これらの結果から、テレワーク時にもサイバーリスクに対して不安を抱えている一方、新型コロナウイルス感染症対策では在宅勤務を実施するための環境整備が優先されており、在宅環境から社内ネットワークやインターネットへアクセスする上での安全面での対策や注意喚起を含めた、セキュリティ観点での施策が全社的に徹底されていない、あるいは後回しにされている現状が分かる。また共用オフィスや公共インターネット環境でのテレワーク未経験者が多いためか、同環境の安全性への懸念は決定的に低く、自宅以外でのテレワークにおけるサイバーリスクの認知が低いと言える。

■テレワークの実現性には前向きな一方、感染終息後の勤務先のテレワーク継続には悲観的

テレワークの阻害要因が解決された場合に「60%を超える社員」がテレワーク可能と回答したのは過半数を超え(51.9%)、環境が整えさえすれば多くの企業がテレワークを継続できることがわかる。一方で、新型コロナウイルス感染症終息後に「60%を超える社員」がテレワークを実施すると予測したのは12.7%に過ぎず、勤務先でのテレワークを一時的な例外措置として捉え、永続的な実施については悲観的な結果となった。テレワークを行う個人としては実施可能な勤務形態と考える一方で、「アナログ文化」の業務プロセスやITインフラの未整備、今回経験した通信の遅延などの問題や課題から、全社的なテレワークの実施は現実的ではないと評価していることが考えられる。

図4:新型コロナウイルス感染症対応でのテレワーク比率、阻害要因解決時のテレワーク比率、新型コロナウイルス終息後のテレワーク比率予測
出典元:プレスリリース
調査概要
調査名:テレワークジャパンサーベイ2020年版
調査対象:年間売上高500億円以上かつ従業員数500名以上の国内民間企業において決定権あるいは決裁権を有する課長職以上の正社員456名
調査期間:2020年4月27日~30日
調査方法:インターネット調査

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