「学校でのプログラミング教育」に関する調査結果が公開

株式会社エス・エー・アイは、小・中学校の教員を対象に、「学校でのプログラミング教育」に関する調査を実施し結果を発表した。

2020年、小学校の学習指導要領が改定され、プログラミング教育が必修化された。様々な場面でデジタル化やそれに関する知識が求められる現代社会においては、重要な教育であると期待されているという。とはいえ、初めての試みのため、現場の教員や保護者からの不安の声も多いようだという。実際の教育現場では、どのように進められているのか。手探りの状態で始まりつつあるプログラミング教育は子どもたちに社会で役立つ実践的な知識を身に付けることはできるのか。そこで今回、同社は、小・中学校の教員を対象に、「学校でのプログラミング教育」に関する調査を実施したとのことだ。

■教育現場で使われる教材は?子ども達への指導の様子

出典元:プレスリリース
はじめに、使われている教材など教育現場で実際に行われている授業の実情について聞いた。「プログラミング教育において、使用されている教材は何ですか?(複数回答可)」と質問したところ、『タブレット(69.8%)』と回答した人が最も多く、次いで『PC(41.1%)』『テキスト(35.8%)』となった。

使用している教材に対する子どもたちの反応や学習状況はどうなのか。詳しく聞いた。「使用している教材に対する子どもたちの反応や学習状況について具体的に教えてください」と聞いたところ、以下のような回答が寄せられた。
・新鮮さがあって、楽しそうに活用してる(20代/男性/沖縄県)
・タブレットPCを普段から活用することで、進んで調べ学習に活用している(30代/男性/奈良県)
・関心を持ち、試行錯誤している姿がみえる(30代/女性/高知県)
・自分のペースで取り組めるので、集中して取り組みやすい(30代/女性/愛媛県)
・できる子供とできない子供の差が気になる(50代/男性/東京都)

他の授業では使用しないタブレットやPCを操作することから、子どもたちは新鮮味を覚え、関心を持ち集中して取り組んでいる様子が窺える。しかしその反面、個人個人のペースで進められる分、できる子どもとできない子どもの格差が大きくなってしまうという実情もあるようだ。

■3割以上が実践的ではないと回答 プログラミング教育の実態

出典元:プレスリリース
プログラミング教育は、主にタブレットやPCを使用している学校が多く、楽しそうに取り組んでいることがわかった。では、現在行っているプログラミング教育は子どもたちにとって実践的だと言えるのか。「現在実施されているプログラミング教育は実践的であると思いますか?」と質問したところ、『とてもそう思う(17.7%)』『まあそう思う(48.9%)』『あまりそう思わない(28.6%)』『全くそう思わない(4.8%)』という結果になった。6割以上は実践的だと思っているものの、実践的とは思わない人が3割以上いることがわかった。では、なぜそのように感じる(思う)のか。そこで、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」と回答した人に詳しく聞いた。「実践的でないと思う理由を具体的に教えてください」と聞いたところ、以下のような回答が寄せられた。
・内容が難しい。小学生が楽しく簡単に取り組めるようなものを教科書に載せてほしい(20代/女性/三重県)
・実際どのようなものが社会で使われているか、教員があまり把握できていない。どこを教えればよいか難しい(20代/女性/大阪府)
・生活に活かす場面が少なく感じる(20代/女性/秋田県)
・教科と関連させてと学校の裁量に任されており、具体性がない(30代/男性/大阪府)
・プログラミング以前にすることがなされていないから(40代/男性/大阪府)
・まず全ての教師がプログラミング教育を進める手腕を持ち合わせているとは限らない(40代/男性/兵庫県)

そもそも実生活にどう活かされる学習なのかが理解されていなかったり、授業の内容が各学校に任せられ、何をゴールにすべきかの具体性が希薄だと感じていることがわかった。さらに、プログラミング学習の存在意義に疑問を感じているという意見もみられた。

■改善すべき点は多そう プログラミング教育に必要なものとは

出典元:プレスリリース
ここまでの調査で、3割以上が現状のプログラミング教育は実践的でないと捉えていることがわかった。では、実践的なプログラミング教育を行うには、何が必要なのか。そこで、「実践的なプログラミング教育をするためには、何が必要であると思いますか?(複数回答可)」と質問したところ、『プログラミングに関する知識が豊富な指導者(48.4%)』と回答した人が最も多く、次いで『子どもが楽しめる学習方法(44.0%)』『将来的に社会で活かせる有用な知識(43.7%)』となった。社会で実践的に活かせる知識であるべき、楽しく学べる方法であるべき、知識が豊富な指導者が教えるべきと思っている人が多いようだ。では、現在のプログラミング教育に関して、教員として抱えている課題はあるのか。具体的に聞いた。
・チームズなどチャット機能を使った児童間のトラブルへの対応(20代/男性/奈良県)
・ゲームをする子達がいる(20代/男性/沖縄県)
・ICT機器の利用状況が各家庭によって異なるため、学校内でも格差が生まれてしまう(20代/女性/愛知県)
・プログラミングと、機器の操作の知識不足(30代/女性/愛媛県)
・一人で40人の生徒に一斉に指導するのはかなり難しい(40代/男性/大阪府)
・全員(教員)の見解が一致していない。教員のレベルに差がある(50代/男性/大阪府)

授業中にゲームをする子どもがいたり、チャットが原因で生徒間のトラブルが起こっているなど、ICT機器利用にあたって考えられるリスクを把握できていなかった様子がわかる。そのため、問題が発生してから対応に追われるといった状況となってしまっているようだという。また、教員によってプログラミングに関する知識レベルやITリテラシーに差があることや、40人の指導を1人でカバーしきれないという問題点もあることがわかった。では、抱えている問題に対して、どのような対策を講じているのか。具体的に聞いた。
・外部の機関からの出前授業や研修を行ってもらえないか検討している(30代/女性/大阪府)
・ICT支援員から助言ももらいながらの操作習得(30代/女性/愛媛県)
・基礎的なテキストから教材を作り上げている(30代/男性/佐賀県)
・できるだけ教員がPCに触る機会を増やす(50代/男性/埼玉県)
・時間割で空いてる先生がいればクラスに入ってもらい、2人で進めている(20代/女性/青森県)
・研修などを受けるだけでなく、他の先生方との情報共有をする時間も大切にする(20代/女性/沖縄県)

オリジナルの教材を作る、研修を受けるといった自身でできる取り組みや、外部機関の利用を検討するなど、あらゆる手段を講じて課題解決を図っているようだ。

■意外と重要?プログラミング教育における地域企業との連携

出典元:プレスリリース
ここまでの調査で、現状のプログラミング教育にさまざまな課題があると感じ、その対策が多元的に行われていることがわかった。では、学校が所在している地域の企業・団体とは何か連携しているのか。そこで、「現在、学校でのプログラミング教育に関して、地域の企業や団体と連携していますか?」と質問したところ、『連携する予定はない(45.1%)』と回答した人が最も多く、次いで『今後連携していく予定(38.5%)』『連携している(16.4%)』となった。『今後連携していく予定』『連携している』という回答を合わせると5割を超え、地元企業や団体とのアライアンスの重要性・有用性が認識され、対策が進められていることがわかった。では、実際にどのような形で連携が行われているのか。連携していると回答した人に詳しく聞いた。
・月1回の講師派遣(50代/女性/京都府)
・支援員の方が学校に常駐している(30代/女性/長野県)
・リモート会議(30代/女性/東京都)
・機材の提供(30代/男性/神奈川県)
・NTTが主体となり、教員に定期的にChrome Bookの活用法を教えてくれる(20代/男性/愛知県)

講師派遣やリモート研修などを通じてソフト面の充実を図ったり、機材を提供するなどインフラ面で協力をしたりと、地元企業が持っているノウハウやハードの提供が行われていることがわかった。

プログラミング教育を続けていくには、改善すべき点が多くあることがわかったが、プログラミングに関してプロである企業の力を借りるべきだと思うのか。「プログラミング教育に関して、企業のプロの力を借りるべきだと思いますか?」と質問したところ、8割以上が、『とてもそう思う(41.8%)』『まあそう思う(44.4%)』と回答した。

調査概要:「学校でのプログラミング教育」に関する調査
【調査期間】2021年11月15日(月)~2021年11月16日(火)
【調査方法】インターネット調査
【調査人数】1,019人
【調査対象】小・中学校の教員
【モニター提供元】ゼネラルリサーチ

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