世界初、日立とNTT Comがストレージ仮想化技術とIOWN APNを用いて、600kmを超える長距離間のリアルタイムデータ同期の共同実証に成功

~分散型データセンターの実現による強靭なITインフラの構築を目指す~

株式会社日立製作所(以下、日立)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、このたび、超高速かつ超低消費電力を実現するIOWN構想*1の主要技術であるオールフォトニクス・ネットワーク(以下、APN)を用いた分散型データセンターの実現に向けた技術検証の一つとして、日立ヴァンタラ株式会社(以下、日立ヴァンタラ)のHitachi Virtual Storage Platform One Block*2(以下、VSP One Block)とIOWN APN*3を用いた共同実証を実施した。
VSP One Blockは、ストレージ仮想化技術を用いて各拠点に設置された複数のストレージをあたかも1つのストレージのように管理・運用できるため、災害発生時の事業継続に強みを発揮するストレージである。また、IOWN APNは、NTTグループがこれまで培ってきた経験と技術力で通信サービスを進化させた低消費電力・大容量高品質・低遅延を特徴とするネットワークである。
今回、この2つの強みを組み合わせ、長距離間のデータ同期における往復応答時間を日立が推奨するネットワークの応答時間以内に収めることに成功し、また災害発生時にもシームレスにシステム復旧が可能であることを確認した。
*1 IOWN構想:Innovative Optical Wireless Networkの略。NTTが2030年頃の実用化に向けて推進する次世代コミュニケーション基盤。革新的な光と無線の技術により、これまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報をもとに全体の最適化を図り、多様性を需要®できる豊かな社会を創るために立ち上げた構想。「IOWN_®_」は、日本電信電話株式会社の商標又は登録商標である。
*2 Hitachi Virtual Storage Platform One Block:日立ヴァンタラが提供するデータストレージ。革新的なデータ圧縮・保護技術で、増大するデータの管理の効率化とシステムの安定稼働を実現。製品ライフサイクル全体で環境負荷も低減する。
*3 IOWN APN:IOWN All Photonics Networkの略。共同実証はNTTのAPN検証設備を使用した。

■背景

激甚災害の増加やそれに伴うレジリエンス強化のニーズを受け、金融やインフラ事業者などミッションクリティカルな事業を支える企業において、ディザスタリカバリ(DR)構成のシステム導入が進んでいる。しかし、システム構築や維持にかかるコスト増加や、災害時における業務継続のためのオペレーション、復旧までの作業時間などさまざまな課題があり、上記のような企業にとって大きな負担となっている。
さらに現在、生成AIの普及によりデータ処理量が爆発的に増加し、データセンターの需要が拡大する一方で、電力使用量の増大が地球環境への大きな負荷となっている。そこで、全国各地のグリーンエネルギーを有効活用できる分散型データセンターの実現に期待が寄せられている。今回の技術検証もその一環であり、離れたデータセンター間をリアルタイムに連携させることで、企業がひとつのデータセンターのように利用することが可能になる。長距離間のデータセンターをつなぐことができれば、土地や再生可能エネルギーの確保がしやすい地域にデータセンターを分散配置し、都市部でのデータセンターの一極集中を回避することができる。
多様性を受容できる豊かな社会を創るIOWNの構想を実現する上でも、光や生成AIなど革新的な技術の活用は必要不可欠であり、そうした活動を持続可能な形で支えるデータセンターの実現は非常に重要なテーマとなっている。

■実証実験について

以下の通り2つの検証・評価を行った。
(1)長距離間データ同期の往復応答時間を検証
VSP One BlockをIOWN APNで接続し、仮想的に600km(東京・大阪間)離れた環境を作り、日立のストレージ仮想化技術GAD*4におけるデータ同期に要する時間を測定。回線の応答遅延を改善した結果、IOWN APNの持つ低遅延、低ジッタ*5により、日立が推奨するネットワークの往復応答時間(20msec以内)を大きく下回る*6結果となり、600kmの長距離でもデータ常時同期での環境構築ができるという実用性を確認した。なお、600km間でのデータの常時同期を実現したのは世界初*7の実証事例である。
*4 GAD (global-active device):2台のストレージ間でデータを常時同期し、データの可用性を向上する機能。
*5 低ジッタ:通信におけるネットワーク遅延時間の変動・揺らぎを示す用語。遅延時間の変動が小さいことを指す。
*6 書込み時:7.5 msec、読込み時:0.1 msec以下を確認した。
*7 2024年11月現在、日立製作所とNTT Comの調べによる。
(2)災害発生時のシステム復旧時間を検証
同一データセンター内で利用されるクラスタ技術を用いてデータセンター間で冗長化を行い、データセンターのメインサイトで疑似障害を発生させ、サブサイトにおいて業務継続が可能かを検証。結果、メインサイトがシステムダウンした後、データ損失なく自動的にサブサイトでのシステム稼働を確認でき、災害時にもシームレスな業務の継続が可能であることを確認した。
検証結果を適用することにより、メインサイトからサブサイトへの切り替えや災害発生時のデータ損失に対するリカバリー作業などシステム復旧作業にかかっていたSEの稼働が不要となり、運用者の負担を軽減できる。さらに、従来の非同期に複数のデータを保持しバックアップを取得していた場合と比較し、ストレージ容量が削減できることで、ITインフラの維持コストや消費電力の低減が期待できる。
出典元:プレスリリース

■各社の役割

3社が共創し、以下の役割で共同実験を推進した。
日立・日立ヴァンタラ:IOWN APN検証設備へのVSP One Blockの仮想ストレージ接続・機能評価
NTT Com:IOWN APN検証設備を用いたAPNの機能・性能評価

■今後の展開

今後、日立ヴァンタラのストレージとIOWN APNの組み合わせにより、ミッションクリティカルな業務を担う金融機関、社会インフラ事業者*8、クラウド事業者などに向け、東京・大阪間のような長距離間でのデータの常時同期を実現する次世代ITインフラシステムの提供を目指す。また、日立とNTT Comは「分散型データセンター」の実現に寄与するソリューション提供を推進し、環境にやさしくレジリエントな社会の実現に向けて両社で活動を推進する。
*8 通信、電力、交通機関等を示す。

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