世界初、日立とNTT Comがストレージ仮想化技術とIOWN APNを用いて、600kmを超える長距離間のリアルタイムデータ同期の共同実証に成功
2024/12/6
~分散型データセンターの実現による強靭なITインフラの構築を目指す~
VSP One Blockは、ストレージ仮想化技術を用いて各拠点に設置された複数のストレージをあたかも1つのストレージのように管理・運用できるため、災害発生時の事業継続に強みを発揮するストレージである。また、IOWN APNは、NTTグループがこれまで培ってきた経験と技術力で通信サービスを進化させた低消費電力・大容量高品質・低遅延を特徴とするネットワークである。
今回、この2つの強みを組み合わせ、長距離間のデータ同期における往復応答時間を日立が推奨するネットワークの応答時間以内に収めることに成功し、また災害発生時にもシームレスにシステム復旧が可能であることを確認した。
*1 IOWN構想:Innovative Optical Wireless Networkの略。NTTが2030年頃の実用化に向けて推進する次世代コミュニケーション基盤。革新的な光と無線の技術により、これまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報をもとに全体の最適化を図り、多様性を需要®できる豊かな社会を創るために立ち上げた構想。「IOWN_®_」は、日本電信電話株式会社の商標又は登録商標である。
*2 Hitachi Virtual Storage Platform One Block:日立ヴァンタラが提供するデータストレージ。革新的なデータ圧縮・保護技術で、増大するデータの管理の効率化とシステムの安定稼働を実現。製品ライフサイクル全体で環境負荷も低減する。
*3 IOWN APN:IOWN All Photonics Networkの略。共同実証はNTTのAPN検証設備を使用した。
■背景
さらに現在、生成AIの普及によりデータ処理量が爆発的に増加し、データセンターの需要が拡大する一方で、電力使用量の増大が地球環境への大きな負荷となっている。そこで、全国各地のグリーンエネルギーを有効活用できる分散型データセンターの実現に期待が寄せられている。今回の技術検証もその一環であり、離れたデータセンター間をリアルタイムに連携させることで、企業がひとつのデータセンターのように利用することが可能になる。長距離間のデータセンターをつなぐことができれば、土地や再生可能エネルギーの確保がしやすい地域にデータセンターを分散配置し、都市部でのデータセンターの一極集中を回避することができる。
多様性を受容できる豊かな社会を創るIOWNの構想を実現する上でも、光や生成AIなど革新的な技術の活用は必要不可欠であり、そうした活動を持続可能な形で支えるデータセンターの実現は非常に重要なテーマとなっている。
■実証実験について
(1)長距離間データ同期の往復応答時間を検証
VSP One BlockをIOWN APNで接続し、仮想的に600km(東京・大阪間)離れた環境を作り、日立のストレージ仮想化技術GAD*4におけるデータ同期に要する時間を測定。回線の応答遅延を改善した結果、IOWN APNの持つ低遅延、低ジッタ*5により、日立が推奨するネットワークの往復応答時間(20msec以内)を大きく下回る*6結果となり、600kmの長距離でもデータ常時同期での環境構築ができるという実用性を確認した。なお、600km間でのデータの常時同期を実現したのは世界初*7の実証事例である。
*4 GAD (global-active device):2台のストレージ間でデータを常時同期し、データの可用性を向上する機能。
*5 低ジッタ:通信におけるネットワーク遅延時間の変動・揺らぎを示す用語。遅延時間の変動が小さいことを指す。
*6 書込み時:7.5 msec、読込み時:0.1 msec以下を確認した。
*7 2024年11月現在、日立製作所とNTT Comの調べによる。
(2)災害発生時のシステム復旧時間を検証
同一データセンター内で利用されるクラスタ技術を用いてデータセンター間で冗長化を行い、データセンターのメインサイトで疑似障害を発生させ、サブサイトにおいて業務継続が可能かを検証。結果、メインサイトがシステムダウンした後、データ損失なく自動的にサブサイトでのシステム稼働を確認でき、災害時にもシームレスな業務の継続が可能であることを確認した。
検証結果を適用することにより、メインサイトからサブサイトへの切り替えや災害発生時のデータ損失に対するリカバリー作業などシステム復旧作業にかかっていたSEの稼働が不要となり、運用者の負担を軽減できる。さらに、従来の非同期に複数のデータを保持しバックアップを取得していた場合と比較し、ストレージ容量が削減できることで、ITインフラの維持コストや消費電力の低減が期待できる。
■各社の役割
日立・日立ヴァンタラ:IOWN APN検証設備へのVSP One Blockの仮想ストレージ接続・機能評価
NTT Com:IOWN APN検証設備を用いたAPNの機能・性能評価
■今後の展開
*8 通信、電力、交通機関等を示す。