そもそもIoTとは?
近年、「IoT」という言葉を当たり前のように耳にするようになりましたが、IoTの読み方や、「IoTって何?」とIoTの意味をまだご存知でない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、IoTとはどんなものなのか解説していきます。
モノがインターネットに接続すること
IoTは「Internet of Things」の略称で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。モノとモノがインターネットでつながることを指します。過去に、M2M(Machine-to-Machine)という概念がありましたが、これもモノとモノの情報伝達を指す概念であったものの、イメージとしては閉じたシステムのなかで行われるモノでした。一方で、IoTは、世界中のあらゆるモノがインターネットで繋がり合う世界観だと言われています。
インターネットを介して情報伝達できる
IoTの鍵となるのはセンシング技術です。現代では、温度や湿度、におい、重さ、速さ、音の工程など様々な物理現象を観測するセンサーがあふれています。カメラもセンサーの一種です。
IoTで対象となるモノには、こうしたセンサー類と無線通信機がセットで搭載されていて、モノやその周囲の状態を感知し、データとして発信する機能を持っています。
IoTでできることとは?
今までインターネットにつながっていなかったあらゆるモノをつなぐIoT。IoTの世界が広がると具体的にどのようなことができるようになっていくのでしょうか。
モノの操作
まずは、簡単なところで言うと、遠隔操作ができるようになります。外出先から操作できるエアコンなどの家電製品が登場していますが、これもIoTの一種と言えます。
環境の把握
操作するだけでなく、遠隔地の環境をスマホなどの端末を通し確認できることもIoTの特徴です。先ほどのエアコンを例にすると、外出先から現在の自宅の気温が分かるととても便利ですね。
動作の察知
動作を検知するようなセンサーは、今後のロボティクスの発展に欠かせません。観測したモノの動きを即座にデータとして処理し、クラウドサーバー上で解析することで、複雑な計算を瞬時に実行できるロボットが生まれています。
ICT建機などは良い例で、常に状況が変わる工事現場を無人の建機が動く様は圧巻です。
位置の把握
上述したICT建機には位置情報の把握が欠かせません。位置情報サービスではGPSが有名ですが、IoT社会においては、ビーコンなどとの連動でより高精度な位置情報を取得できるようになるとされています。
モノ同士の通信
IoTの概念で重要なのは人が介在しないモノ同士の通信です。モノとモノがデータ交換を自動で行い、それぞれの役割を果たすことで、はるかに複雑なシステム構築することができます。様々な分野で期待される作業の無人化には、高度なAIだけでなく、モノがインターネットでつながりあっているIoT基盤が必要となるのです。
IoTが普及するメリット
近年になってIoTという言葉が一気に普及していますが、普及することによるメリットはどんなところにあるのでしょうか。
日常生活がより便利になる
IoTによりモノがインターネットに接続されることで、これまで不可能とされてきた遠隔からの操作や管理や情報収集、分析、人工知能への活用などが可能になってきます。工業、農業、医療、運輸などあらゆる分野での応用が期待できるため、私たちの社会や生活をより便利に快適に変える大きな可能性を秘めています。
働き方改革の推進
働き方改革の一環として、オフィスの座席を固定しない「フリーアドレス」や、自宅やサテライトオフィスなどで働く「テレワーク」を取り入れる企業が増えています。オフィスの働き方改革に、先進的なIoTソリューションを活用することで、効率アップや労働時間の短縮にも繋げることができます。
例えば、社員の位置情報を活用し施設の利用状況を可視化したり、正確な出退勤時間の管理することもできます。また、RFIDタグやビーコンを活用した備品管理にも応用することもできます。
新しいサービスの開発
IoTの技術は、モノへの搭載で画期的な製品やサービスを生むだけでなく、公共交通機関の管理や農業で畑の管理に導入されるなど、身近な場所で活用の機会が広がっています。
IoTの技術を生活の中で当たり前のサービスにしていくことで、より多くの人々が豊かな生活を送れるようになっていくでしょう。
IoTが普及するデメリット
ここまでIoTが普及することによるメリットを紹介してきましたが、デメリットはあるのでしょうか。
セキュリティリスクが高くなる
あらゆる機器がインターネットと接続するようになると、ハッキングや情報漏えいといった、悪意ある第三者による様々なセキュリティの脅威が高まります。そのため、IoTを取り入れるにあたっては、セキュリティ対策を十分に対応していく必要があります。
消費電力が多くなる
IoTでは、膨大なデータ通信が発生します。さまざまなモノがIoTによりインターネットにつながれていくと、すべてを有線で接続しようとすればケーブルだらけになってしまうため無線環境が必要とされます。消費電力が大きなシステムを使えば、通信機器の電池を頻繁に交換しなければならなるといったことが発生します。企業においては経費を圧迫し家庭においては家計の負担が増えることが懸念されます。
そのため、低消費電力な無線通信として「LPWA(Low Power Wide Area)」と呼ばれる消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式にも注目されはじめています。
IT人材が不足する
IT市場やWeb業界そのものの急成長により、IT人材の不足が叫ばれていますが、その中でも、IoTや人工知能(AI)を担う先端IT人材がこの先不足していくと言われています。トラブルが起きた時に的確に対応できるIoT技術に精通した人材が求められます。またIoTでは大量のデータを分析する必要があるため、データ分析に詳しい人材も求められます。
一般企業でもITを活用する事業が拡大していますが、先端IT人材を確保できなければ、IoTを活かした新たなサービスや機器を開発が難しくなっていくでしょう。
ヒューマンエラーのリスクがある
機械にセンサーを取り付けて、稼働状況を監視したり、可動率アップにつなげたり、製造業において機械のインターネット接続が先行して実施されつつあります。IOTは、品質改善に適応すると非常に有効なツール、ヒューマンエラーの防止に取りれられ始めています。
しかし、どれだけIoTを取り入れても、使う側の人間がうまく操作できなければその機能を最大限に発揮することはできませんので、IoTに頼りきるのではなく、IoTを取り入れた際に起こりうるリスクを考えながら活用していくことが望ましいでしょう。
通信障害によるダメージが大きい
あらゆるモノがインターネットと接続されると、それだけたくさんの電波が飛び交うことになります。そこで問題になってくるのが電波干渉です。電波の混線で正常に接続できなかったり、誤作動が起きたりといったことが懸念されます。また、通信量の増大により通信遅延が起きることも考えられます。
IoTに依存してしまうと通信障害が起こった際のダメージは非常に大きいです。
IoTのメリットを活かせる場面とは?
ここからは、実際にIoTのメリットが活かせる場面をみていきましょう。
スマート住宅
IoT機器を配したスマートハウスも近年注目されています。家中の家電が、音声認識AIなどを通して操作できるという利便性だけでなく、エネルギー消費の効率化にも期待がかかっています。
Home Energy Management System、略してHEMSと呼ばれており、「エネルギーの見える化」と「エネルギーの制御」を行おうとする概念がありますが、日々利用する電力やガス、水道など、エネルギー使用量をモニタリングし、一目で一日の使用量がわかるので使いすぎの防止などに役立つでしょう。
健康管理
各種センサーを内蔵したウェアラブル端末を用いた健康管理にも注目が集まっています。最近では、Appleが販売しているApple Watchなどが一般的です。
心拍数を始めとした生体情報を取得することで健康状態を可視化し、睡眠状態の改善やストレスの解消などにつなげるサービスが登場しています。個人で体調を管理するだけでなく、データを第三者へ提供することでビッグデータとすることで、ヘルスケア関連企業が新たなサービス・製品を作ることに役立てるなどといった社会的な仕組み化が期待されています。
防犯・防災
IoTは、防犯や防災面でも活用され始めています。
香川県高松市のスマートシティたかまつでは、IoTを活用して水位や潮位の情報や避難所の情報をリアルタイムに分析しているといった取り組みも始まっています。
水位や潮位に関しては観測地点にセンサーを設置した上でダッシュボードで一元管理し、水位や潮位、降水量データを表示させることでリアルタイムで水位と潮位を監視できるほか、危険性の予測にも活用されているようです。
出典:
「スマートシティたかまつ」プロジェクト~防災分野におけるIoTの利活用~
農業や物流
IoTを活用して、農場の作物の状態を把握したり、工場の生産性を向上させるといった取り組みも始まっています。
担い手不足が問題となっている農業では、「スマート農業」が取り入れられ始めてています。作物の生育状況を各種センサーで検知し、適宜水や農薬を与えたり、収穫期に入ったらロボットで収穫をするといった仕組みが出来上がりつつあります。また、作物の生育状況だけでなく、土壌の状況や気温湿度、地域の気象なども把握することで、これまで人が担ってきた臨機応変な対応を機械にゆだねることもでき、少ない人員で、農作物の収穫量・品質を一定以上確保することが可能としています。
生産性の向上や効率化を実現する工場として「スマート工場」「スマートファクトリー」があります。生産ラインが常に監視されデータを送信し、事前に機械の異常を検知することで、大きな機械トラブルを防ぎます。生産における様々な課題に対し、機械的に対応できるので、スタッフの属人化を防ぐことにもつながります。
またスマート工場は機械トラブルにも強いとされています。IoT化されていない工場で機械トラブルが発生すると、都度生産ラインを止めて、対応にあたる必要があります。無人の生産設備であれば、管理者が状況を確認するまでにさらに時間がかかるでしょう。に異常を知らせなければなりません。つまり後工程への影響が大きいのです。
IoTが普及するメリットを知っておこう
IoTのメリットやでできることを理解することで、モノとモノがインターネットでつながる世界が具体的にイメージできたのではないでしょうか。
IoTサービスを提供する側だけではなく利用する側も、ただサービスを利用するだけではなく、セキュリティリスクや通信障害によるダメージの大きさなどのデメリットをしっかり押さえた上で、生活に取り入れていけるとよいでしょう。