ドローン・ロボット分野のプラットフォーマー「ブルーイノベーション株式会社」〜IPOから読み解く、デジタルシフト #15〜

多くの企業が目標の一つとして掲げ、憧れ、夢を見る言葉、「上場」。これを達成した企業は資金調達の規模が大きくなり、さらなる挑戦ができるとともに、社会的に認められたという箔が付く。何百万社とある日本企業のなかで、上場企業は約3,800社。非常に狭き門を突破した、選ばれし企業たちだ。

本記事では、デジタルシフトを実現しながら新規上場を果たした企業に焦点を当てていく。今回は、ドローン・ロボット事業を手がける「ブルーイノベーション株式会社」を取り上げる。同社は、国内ドローン企業では2社目として、2023年12月12日に東証グロース市場に上場した。初値は2,023円で、公開価格の1,584円を上回った。

ドローン関連企業として国内で2社目の上場、「ブルーイノベーション株式会社」とは

ブルーイノベーション株式会社は、1999年に「有限会社アイコムネット」として設立され、防災・海岸コンサルティング事業を行っていた。2013年に社名を変更し、現在ではドローンやロボットを活用する事業を展開している。

同社は、ドローンやロボットの活用に必要な機能をワンストップで提供するプラットフォーム「Blue Earth Platform」を開発している。「Blue Earth Platform」は、センサモジュールとソフトウェア(アプリ・クラウド)で構成され、ドローンやロボットなどと接続し、これらを遠隔で制御・管理することができる。このプラットフォームを軸に、機体とセンサの組み合わせを、それぞれの業務に最適化したものとしてパッケージ化し、次の4つのソリューションとして提供している。プラントや工場、公共インフラなどのスマート点検や3Dモデル化を行う「点検ソリューション」、ドローン専門パイロットの育成などを行う「教育ソリューション」、物流や輸送、在庫管理などを行う「物流ソリューション」、オフィスの清掃や警備などを行う「ネクストソリューション」の4つだ。これらのソリューションの提供を中心に、導入のコンサルティングや実際の運用、人材育成などを手がけ、取引先には国土交通省や東京電力、トヨタ自動車などが名を連ねる。
(引用)https://www.blue-i.co.jp/reason/

ブルーイノベーションは、2022年12月期の売上高が約9億800万円で、営業損失は約3億4,900万円だった。2023年12月期は第3四半期累計で売上高が約7億4,700万円、営業損失が約2億7,400万円となっている。

機体販売ではない、プラットフォーマーとしてのビジネスモデル

同社は、ドローン領域の企業だがドローンメーカーではない。機体の販売ではなくソフトウェア中心の事業を展開していることが特徴だ。「Blue Earth Platform」により、さまざまな機体やセンサと接続し、顧客に応じた最適なソリューションを提供することで、ドローンやロボット分野でのプラットフォーマーとなっている。プラットフォーマーとして、実証実験からソリューションの導入、運用・サポートまでを総合的に手がけているのだ。また、ソフトウェアを中心とするビジネスモデルのため、利益率が高く、収益性が上昇しているという。今後は、実証実験やソリューション開発などの「フロー型サービス」で顧客を開拓し、そこから運用・サポートといった「ストック型サービス」に繋げることで、継続的な収益の拡大を目指すとのことだ。

ドローン普及の鍵を握る「レベル4飛行」

ブルーイノベーションによると、ドローン市場の成長率は高く、特に、同社も進出している「点検分野」では、2022年から2028年にかけて、市場規模は約260%成長となる約1550億円の増加が見込まれており、CAGR(年平均成長率)は、ドローン市場全体で20%、点検分野で24%とのことだ。このような市場の成長や期待感を生んでいるのが、2022年12月に解禁された、ドローンの「レベル4飛行」だ。レベル4飛行は、「有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行」を指し、この解禁により、ドローンの活用範囲が拡大されることが予想されている。これに合わせ、ブルーイノベーションは自動離発着や自動充電、ビッグデータのリアルタイム収集・解析を一括で行う「ドローンポートシステム」を国土交通省や東京大学と共同開発しており、既に実用化している。同社は、今後、レベル4飛行の解禁によりドローンがさらに普及することを追い風に「ドローンポートシステム」を新たなインフラとして定着させることを目指している。

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