生成AIをビジネス現場に導入するポイントとは?「NexTech Week 2024」イベントレポート

AI

2022年11月のChatGPTの登場以来、テクノロジー業界では生成AIが話題の中心となっています。実際に、ビジネスの現場でも活用は進み、AIを使いこなすことができるかどうかが個人および企業の双方にとって重要なスキルとなっています。そのような生成AIに関する最新情報を届けるべく、2024年5月22日から24日に「NexTech Week 2024」が開催されました。

今回は、本イベントのなかから、株式会社SHIFT AI CEO 木内 翔大氏が登壇した「【完全版】2024年に必要な生成AI」と、株式会社デジライズ CEO/Founder 茶圓 将裕氏が登壇した「2024年の生成AIトレンド、業務効率2倍アップの秘訣まで」をレポートします。両セッションでは、生成AIを活用する際に意識したい視点や、実際に企業で生成AIを導入する上でのポイントなどが語られました。

AIともっと仲良くなる未来が訪れる

「【完全版】2024年に必要な生成AI」セッションでは、まず木内氏が生成AI業界の2024年のトレンドについて、OpenAIが発表した新しいモデル「GPT-4o」を挙げました。大きな変化として、より自然な応答ができるようになり、表現力が豊かになり、なめらかな対話が可能になったと語ります。また、Googleの生成AI「Gemini」も進化していると言います。そして、OpenAIの動画生成AI「Sora」のクオリティの高さに触れつつ、Googleの開発した動画生成AI「Veo」も非常にレベルが高いと評価しました。その上で、このような映像を生成するAIが今年の末にはプロユースとして登場するのではないかと予想します。これにより、今までは撮影スタジオを使い、数日間かけ、費用も数千万円をかけて制作していたものを、AIが生成できるようになることで映像業界が大きく変わると指摘しました。また、AIによる映像の生成が進歩することで、人間と生成AIのやり取りも、テキストだけでなく映像とセットになり、より人間と話す感覚に近くなると話しました。そして、生成AIはユーザーが望む振る舞いをすることから、人間は同じ人間よりもAIと話す方を好むようになる可能性を指摘し、「皆さんがAIと仲良くなる未来が想像できる。これは僕としては革命的だと感じています」(木内氏)と語りました。

個人としても企業としてもAIを導入しないという選択肢は無い

話題は、業務における生成AIの活用に移ります。木内氏は、「生成AIを活用する企業は、今年に入って明らかに増えている」とした上で、「ベンチャー企業の方が動きが早いイメージがあるが、大手企業の方が導入が早いことが意外だと感じている」とし、大手企業のAI導入は業務改善の側面が強いと言います。そして、AIを活用し業務を削減する企業が増えていることから、木内氏は「今後、人が余るという状態が本格的に起こるのではないかと考えている」と明かしました。また、木内氏は生成AIを導入する大前提として、プログラミングやライティング、動画制作など、どのような領域においても、AIを使う場合と使わない場合では、作業効率の面で、10倍~20倍の差が開くと言います。現段階のAIでこれほどの効率化を実現できているため、今後さらにAIが進化すれば、さらに大きく差が開いていくと考えられます。この点を踏まえ木内氏は、「個人としても企業としてもAIを導入しないという選択肢は無い」と強調しました。

AI浸透の鍵はAIリテラシー

企業がAIを導入する際、経営者がメリットを理解して導入を決めたとしても、実際にAIを利用するのは現場の社員です。そのため、AIの活用を進める「推進リーダー」が社内にどれだけいるかが重要だと語ります。生成AI活用の推進は、組織戦略・組織改善と同じ側面を持つため、マネジャークラスや中間管理職と、AIを導入するプロジェクトのリーダーたちで現場社員に浸透させていくアプローチが非常に重要になります。さらに、推進リーダーによってAIの導入が進められても、現場の業務は無数にあります。全ての業務でAIを活用できるはずですが、各業務において、どのようにAIを活用すれば良いかがわからない状態にも陥りがちです。これには、社員のAIリテラシーを高める施策を実施する必要があると言います。AIでどのようなことができるのかという基礎的な理解や、具体的な活用事例などを現場の社員が学ぶことが重要です。木内氏は、このように社員全体のAIリテラシーを高めることで、さらにさまざまな業務にAIを活用していくことができるようになると締めくくりました。

日々AI情報のキャッチアップを

「2024年の生成AIトレンド、業務効率2倍アップの秘訣まで」セッションでは、茶圓氏が生成AIの業務活用について解説しました。茶圓氏はまず、「生成AI」と言ってもサービスは多岐にわたり、それぞれの特徴を把握した上で、目的に応じて使い分けることを勧めます。また、生成AIサービスの機能が充実し、裾野が広くなっており、議事録作成やリアルタイム翻訳など、その分野で従来から存在する非生成AIサービスを脅かす存在になっていると言います。「会社の業種や業態によっては、気づかないうちに大打撃を受けてしまい、仕事がなくなることもあり得ない話ではない」(茶圓氏)と語りました。
茶圓氏は、生成AIの活用方法について、「基本的に流れ作業的に使うことを推奨している」と言います。例えば、営業であれば、ロールプレイングやリサーチ、商談の議事録作成、メール作成など、幅広い業務で生成AIを活用することが可能です。そのため、 何かひとつの業務だけでなく、一連の業務フローのなかの各業務それぞれでAIを活用することが大切だと説明します。その上で、各業務の内容次第で最適な生成AIツールは変わることも指摘しました。基本的には、ChatGPTの汎用性が高いとしつつも、専門的な業務やタスクには、それに適したツールを使うべきだと話します。デジライズ社では、「人事部専用チャットボット」や「管理部専用チャットボット」など、タスクごとにチャットボットを作成し、活用しているとのことです。
最後に茶圓氏は、AIを業務で活用できる「AI人材」を育成する方法を明かしました。まずは、モチベーションが重要になります。茶圓氏がAI活用の研修を実施する際、多くの場合では、クライアント企業の経営者と話し、研修を行うことが決まります。そのため、必ずしも研修を受ける社員の方々が生成AIについて学ぶ意義を感じているとは限りません。そこで、最初に「AIについて学ぶと、このくらい生産性が上がる」と説明し、モチベーションを高めるとのことです。次に、AIの仕組みを学びます。例えば、入力文字数に制限のあるChatGPTは、長文になりがちな議事録作成には向いていません。ChatGPTで議事録作成をしようとして、それができない時に、「なぜ、できないのか」という理由まで理解してこそ、本当の意味で業務に落とし込めていると言えると述べました。そのためには、AIに関する基礎的な内容を学ぶ必要があります。そして、プロンプトを書けるようにならなければなりません。プロンプトを書けなければ、自分でチャットボットを作ることができません。茶圓氏は、「理想は、社員全員がタスクごとのチャットボットを自ら作ることができるようになり、社内のAIアンバサダーとなって業務を効率化してもらうこと」だと言います。そのためには、プロンプトを学び、各専門業務でのAIの活用方法を学ぶ必要があります。また、一番大事なこととして、日々新たな情報が駆け巡るAI業界において、最新情報を常に追う姿勢が重要だと語りました。

木内 翔大

株式会社SHIFT AI CEO

大学時代からWEB・AIエンジニアとして3年ほど活動。2013年に日本初のマンツーマン専門のプログラミングスクール「SAMURAI ENGINEER」を創業。累計4万人にIT教育を行い、2021年に上場企業へ売却。2023年に株式会社SHIFT AIを設立し、「日本をAI先進国に」を掲げ、AIのビジネス活用を学べる国内最大級のコミュニティ「SHIFT AI」を運営。GMO AI&Web3株式会社 AI活用顧問、生成AI活用普及協会 理事も兼任。

茶圓 将裕

株式会社デジライズ CEO/Founder 

学生時代に英語圏での1年間の留学後、上海に渡り動画求人サイトの事業で起業。帰国後は日本初世界のAIツールを検索サービス「AI Database」や社内秘書AIアシスタント「Knowledge AI」、著名人向けAI LINE Bot制作「Star AI」などAI関連サービスを次々とリリース。現在はX等でAI情報発信を行い、AI専門家としてTBSテレビやABEMAにも複数回出演(Xフォロワーは11.8万人)。GMO AI & Web3株式会社 顧問、生成AI活用普及協会 協議員も兼任。

Special Features

連載特集
See More