LINEヤフー・一休に学ぶ、データ・AIの活用事例 「データ・AIを使いこなす『人・組織』になるには」勉強会レポート
2024/2/21
データ分析やAI活用の重要性はますます高まっており、どのような業種・業務においても無視できない存在になっています。しかし、元々IT技術に触れておらず、そのきっかけもなかなか掴めないという人も多いのではないでしょうか。
LINEヤフー株式会社は、2024年1月29日、キラメックス株式会社と連携し、生成AIの業務活用などを学ぶことができる「データ・AI活用人材育成プログラム」を法人向けに提供開始しました。本プログラムは、未経験者や初心者でもIT技術を使いこなせるよう、「文系デジタル人材」の育成支援を目指しています。この発表に合わせて、両社は同日、「データ・AIを使いこなす『人・組織』になるには」をテーマとした勉強会を開催しました。今回は、本勉強会のなかで行われたトークセッションをレポートします。
トークセッションでは、株式会社一休 代表取締役社長の榊 淳氏と、LINEヤフー株式会社 人事総務統括本部 ピープルアナリティクスラボチームの佐久間 祐司氏が登壇しました。各社のデータ活用に関する取り組みが語られた後は、「データ・AI を使いこなす『人・組織』」をテーマに、一休とLINEでのデータ活用事例や、その具体的な進め方が明かされました。
データとAIを活用し、一人当たり営業利益一億円超に貢献
一休のデータ活用の基本として、データ分析によるパーソナライズが挙げられます。例えば、同じ検索条件でも、ユーザー一人ひとりの過去の行動履歴に応じて、検索結果をパーソナライズし、異なる結果を表示しています。また、予約しそうでしなかったユーザーにクーポンを提示して背中を押すこともあるとのことです。その際、このユーザーがこの宿を予約する確率は何%で、いくらのクーポンを提示すればその確率はどの程度変わるかを計算しています。榊氏は「ここまで分析しているのが弊社の特徴」と胸を張ります。また、ユーザーの過去の行動を分析するだけでなく、リアルタイムでも同様のデータ分析を行っています。今サイトを見ているユーザーが購入を迷っていると判断すれば、そのユーザーに応じたクーポンを提示するのです。榊氏は、一休のデータ活用について「データを分析し、一人ひとりのお客様の状況に応じてパーソナライズしたレコメンデーションやプライシングを行っています」と総括しました。
インフラを内製化し、リアルタイムの顧客サービスを実現
佐久間氏は、LINEでのデータ活用について、当時の具体的な進め方を明かしました。データ活用に着手した当初は、活用できるデータが整備されていなかったため、分析もダッシュボード作成もできず、一人分の仕事もなかったと言います。また、人事評価のデータは半年に一回しか入ってこないため、それだけでは分析を始められても得られる結果に限界があると見越していました。まずは分析しがいのあるデータを入れるためデータ基盤をつくろうとしました。ただ、社内には「エンゲージメントサーベイを導入して運用する」という側面を強調したと言います。「データ分析の担当者です」と自己紹介すると、「それは一体何なんだ」と言われ身構えられてしまうため、最初は「エンゲージメントサーベイの担当者」と称し、サーベイ業務を推進しました。そして、エンゲージメントサーベイが溜まってくると、「もうちょっと分析したい」や「使い勝手を良くしたい」という話が増え、自然とデータ基盤の整備やBIツールの導入などが行われていったとのことです。
佐久間氏も、LINEでデータ活用を進める際、周囲を巻き込むことが必須だったと言います。佐久間氏は、各システムの担当者に「ご迷惑をおかけしません。追加で作業をしていただくことはありません」と伝えていました。また、前述の通り現場は業務で忙殺されていたので、「お役に立てることはありますか。皆さんの業務を効率化します」と言い、徐々に業務の自動化を進めたとのことです。これにより、「人事にもデータを扱うことができる人がいる」と認識されるようになりました。その結果、「こういうことを一緒にできないか」という相談が少しずつ増えていきました。佐久間氏は、「分析結果を持っていって『これが正しいから言うことを聞け』ということは一切なく、『皆さんの業務を効率化します』という姿勢から進めました」と、データ分析を推進するコツを明かしました。
榊 淳
株式会社 一休 代表取締役社長
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。
米スタンフォード大学大学院にてサイエンティフィック・コンピューティング修士課程修了。
ボストン コンサルティング グループ、アリックスパートナーズを経験し、2013年に一休へ入社。
2016年に社長就任。
佐久間 祐司
LINEヤフー株式会社 人事総務グループ ピープルアナリティクスラボチーム
大学卒業後、ワトソンワイアット、面白法人カヤックなどを遍歴。
同志社大学心理学研究科前期博士課程修了後、メタップスを経て2017年にLINE入社。
社内のピープルアナリティクス環境を構築し、現在はシステム企画・運用・分析などを幅広く担当。