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日本マイクロソフトが語るOMOの最前線 顧客接点の変革だけが小売りのデジタルトランスフォーメーションではない

小売業のデジタルトランスフォーメーションは、他の業界に比しても喫緊の課題だ。消費者の行動様式は刻々と変化していて、消費者自身も無意識のうちに、データによってパーソナライズされたサービスに親しみつつある。今回は、そんな小売業における顧客接点の変化に着目した、日本マイクロソフトのセミナーを取材した。

最新テクノロジーで加速する消費者行動

「Amazonは2年も前にキャッシュレスの店舗『Amazon Go』を実現できています。小売業の進化のスピード、そしてどういったテクノロジーが使われてきたのかを振り返ると、おそらく小売業ほど最新のテクノロジーを使ってきた業界はない」

こう語るのは、日本マイクロソフト株式会社ビジネスアプリケーション事業本部の兼城ハナ氏だ。

国内においても2年前からスマホアプリによるキャッシュレス決済が普及しはじめ、変化が加速しつつある小売業だが、アメリカなどに比べると、サービスの進化が遅れていると指摘する。

「製造業ではラスト数マイルという課題が叫ばれてきましたが、小売業においてはラスト数ステップが課題となっています。アメリカの小売大手ウォルマートでは、お客様の冷蔵庫の中まで商品を配達するというソリューションを打ち出し、この秋からサービスがスタートしています。時代はここまで来ているんです」

兼城氏が紹介するウォルマートのサービスは、「インホーム」と呼ばれるものだ。ウォルマートの配達員がスマホで鍵を解錠できるスマートキーを使い、注文者の家の中にまで入って、商品を冷蔵庫に納める。配達員はウェアラブルカメラを装着しているので、注文者の家の中でどのような行動をしているかを確認することもできる。

「Amazonと、その他の小売業者という対立構造が見られるようになっています」と氏も続ける。

競争激化の背景にあるのはデジタルによる消費者活動の変化だ。
※日本マイクロソフト株式会社 提供

※日本マイクロソフト株式会社 提供

「IoT社会によって、データが通貨同等の価値を持つようになりました。自社で持っているデータをどういうふうにサービスに生かすか、そして同業他社に売っていくかを検討しなくてはなりません。また、消費者行動はコンテンツに左右されます。いかに良いコンテンツを作るかが小売業に求められるようになりました。こうした中で、ショッピングはもはやイベントではなく生活の一部となっています。実に43%ものお客様がベッドの上で買い物をしていたり、2020年には100万人が拡張現実を使ったサービスで買い物をしたりするというデータすらあるのです」

しかし、「店舗に来た顧客が自社のECサイトで何を見たか、何を気に入っているかすべてを把握している」と答える企業は未だ20%にとどまっているという。OMOを重視しマーケティングに多額の投資をしている企業がいる一方で、成果に結びついていないのだ。

「消費者はオンラインで自分がどんな商品をチェックしていたかお店の方で把握してほしいと思っているのです。例えば靴などは実際に履いてみないと購入できないというケースがある。消費者が店舗に行ったときに、店員が自分の靴のサイズや好みの色を把握していれば、顧客満足度が向上するのです」

もちろんこうした変化は、加速度的にサービスが進化しているアメリカでの調査結果だが、日本市場でも当然のサービスとして消費者ニーズが高まってくるのは時間の問題だ。

顧客接点だけが課題ではない

兼城氏はさらに、従業員視点でのデジタルトランスフォーメーションも重要だと語る。

「デジタルトランスフォーメーションとは、お客様の購買行動とお気に入りを支持することだけではありません。少子高齢化、人材不足が叫ばれる中で、顧客満足度を高めるOMOを実践していくには、接客をする人材側への投資をしていかなくてはなりません」

これは決して働き方を効率化するという観点だけでの発言ではない。

「パーソナライズした顧客体験を提供するには、まずはデータを集めなくてはいけません。マシンラーニングでマーケットを分析するためには、データを集めるというハードルが高いのです。データを集め定義づけするだけで2年ぐらいかかると言われています。そうして初めて次の一手を打てるのです」

例として挙げたのは、米マイクロソフトで支援している飲料メーカー・ペプシだ。

ペプシでは、小売店で在庫確認をするスタッフ用のアプリを2019年春から導入している。

配達員は目視でカウントしていた在庫を、写真を撮影するだけで陳列棚に自社製品がどれだけあるか瞬時に記録できるという。データは本部に収集、可視化されて競合対策やマーケティング対策などに生かされている。

また、日本マイクロソフトの顧客の中には、類似のアプリケーションで、商品の棚割りをAIで点数付けし、点数が低い棚については、その場で職員に修正させることで、販促効果の悪い陳列を長期間放置することがないようにしている事例もあるという。

日本市場を見渡せば、確かにキャッシュレス決済が普及し消費者のデジタルな体験は増えている。しかし、重要なのはそうした経済行動の中からどうデータを集め、活用し、より良い顧客体験を消費者に提供していけるかどうかだ。

小売業者はOMOの本質を見つめ、顧客体験を向上させるためのデジタル活用を、ビジネスフロー全体で考えなくては足元をすくわれることとなる。

講師プロフィール

兼城ハナ(Hannah Kaneshiro)
米国ニューヨークコロンビア大学遊学・中国上海復旦大学卒業後、香港の物流会社でキャリアをスタート、3PLオペレーション・現地チームのマネジメントを手掛け、後ドイツ大手の物流会社Sales&Marketing職に転職、現地法人において唯一の日本人社員として辣腕を振るう。日本に帰国後Tech 業界に転職、日系企業・中国企業のSales・Marketing、社長室・企画部を経て現職マイクロソフトにおいて戦略・マーケティング職。

セミナー情報

2019年10月30日開催「消費者行動をオフラインからオンラインに繋げる!デジタルシフト・OMO顧客戦略最前線」/主催:日本マイクロソフト株式会社