決済データから新型コロナウイルスによる消費行動の変化を分析 ホームセンター、スーパー、EC・通販などが伸長
2020/5/8
三井住友カード株式会社は、保有するキャッシュレスデータを、データ分析支援サービス「Custella(カステラ)」を用いて集計し、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす消費行動の変化を、株式会社顧客時間と共同で分析した。
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■3月以降、多くの業種で決済件数・金額が落ち込むが、買い溜めや生活変化による決済は増加
三井住友カードの決済人数・件数を2019年と2020年の1〜3月で比較(図1)すると、2020年はキャッシュレス推進の影響もあり各月とも増加しているが内容に変化が生じている。新型コロナウイルスによる消費影響がほぼ無かった2020年1月は、利用人数114%・利用件数120%・利用金額111%と、前年を大きく上回っている。この2020年1月の前年同月比を「ベース増加率」と仮定し、この影響を排除したものが(図2)だ。日本国内にもコロナの影響が徐々に現れ始めた2月は利用人数・件数が前年比でまだ増加しているが、コロナ自粛ムードが顕在化した3月は利用人数・件数・金額全てが減少している。
さらに、コロナ関連ワードの検索数とキャッシュレス決済件数を日別で比較すると(図5)、不要不急の外出自粛やトイレットペーパーの不足等、目に見える生活への影響が増えてきた3月3週目以降のコロナ関連ワード検索数が増加していることが分かる。この期間は「買い溜め」や在宅勤務急増による「生活変化」関連であると思われる消費も増加している(図11にて後述)。一方で4月以降は検索件数の高止まりと反比例するような決済件数の減少傾向が分かる。
■業種別ではホームセンター、スーパー、EC・通販などが伸長、「巣ごもり消費」が顕在化
3月の業種別決済件数・金額の前年伸び率(図6・7)では、「ホームセンター」「スーパー」など、生活必需品を取り扱う業種が決済件数・金額ともに前年から大きく伸長している。また、「ECモール・通販」「ペット関連」「通信サービス」の伸びは、小中高校等の休校や出社・外出自粛要請等に伴う在宅時間増加により、「巣ごもり消費」と称される消費行動が窺える。
決済件数の増加に拘わらず決済総額が減少した5業種(「ディスカウントショップ」「家電量販店」「ドラッグストア」「家具・インテリア」「健康食品」)では、例えばテレワークのために家電量販店でPC周辺機器、家具・インテリア店舗でデスクやチェアを購入のように、日々変わる状況下、突発的に準備を要するものを都度都度頻度高く来店して購入する(従って単価も低い)消費行動が想像される。一方で「レジャー施設」「旅行代理店」「美術館・博物館」「映画・劇場」「交通関連」などの落ち込みは、企業自らの営業自粛や、顧客の「三密」回避の行動変容を如実に現していると言える。
■高年齢層は実店舗よりECにシフト、消費行動が大きく変化
決済金額の前年比を世代別で見ると(図8)、1月は70代の伸び率が122%と高く、高年齢層も含めキャッシュレス行動の増加が進んでいたが、3月は全世代で減少傾向となっている。
新型コロナウイルスは高齢者の重症化リスクが高いとされるなか、高年齢層(60、70代)の行動がどのように変わったのかを検証した(図9)。一つの注目するべき点は、「ECモール・通販」のシェア増加だ。日常的にECモール・通販を利用しているとされる20・30代よりも、高年齢層における増加幅が大きいことが分かる。ECモール・通販の増加幅が「スーパー」を上回っていることからも、高年齢層たちが自らの身を守るために、外出を必要としないECモール・通販を活用している消費行動の変化が推測できる。
決済金額伸長業種(図10)での、20・30代の「スポーツブランド」の伸長からは、テレワーク推奨によるアパレルに対する消費行動の変化を捉えることができる。前述した(図6)(図7)などから、「紳士服」「衣服ブランド」の落ち込みは把握できるが、働き方の変化が、現実の場で人と会うことを重視したファッション性優先のアパレル選びではなく、「体に負担をかけない」「長時間座っていても楽」などの機能性重視でスポーツブランドを選ぶようなアパレルの選択基準にも影響を及ぼしている様子は、家中中心の生活においては自然な流れであると言えそうだ。
■緊急事態宣言後は、家中時間充実のための消費行動へ
4月7日の緊急事態宣言以降、4/8週の週別業種別傾向(図11)では、さらなる在宅勤務増に伴うテレワーク関連消費と呼べる「通信サービス」や「家電量販店」、「ECモール・通販」の伸長だけでなく、「玩具・娯楽品」の伸びが著しく、買物の質も変化していることが分かる。