ライフスタイル領域のトレーサビリティ実現を目指し、ブロックチェーンを活用した電力システムの処理速度を60倍高速化
2020/7/30
みんな電力株式会社は、電源を指定して電力の直接取引を可能としたブロックチェーン技術を活用し、電力に加え、空気、リチウムイオンバッテリー、土、住居などのライフスタイル領域におけるトレーサビリティの実現を目指す。今回、事業多角化を実現するため、ブロックチェーンを活用し、2018年に同社が商用化したP2P電力トレーサビリティシステム「ENECTION2.0」の処理速度を60倍高速化したと発表した。
■取り組みの背景
製品の材料や調達方法、生産過程、物流経路を追跡する「トレーサビリティ」は、これまでも生産者のリスクマネジメントなどの点から注目されていたが、新型コロナ流行を通じて、消費者はより本質的な安全性を求め、製品やサービスを選ぶ上で「トレーサビリティ」や「透明性」はより重要視されると考えているという。同社は2016年に発電者と生活者をつなぐ電力小売りサービス「顔の見える電力」を開始し、「納得感を持って選択する」という体験の提供にこだわってきたとのことだ。withコロナ時代だからこそ、電力のみならず、ライフスタイル領域におけるトレーサビリティ=「顔の見える化」が必要だと考えているという。
実用化に向けたブロックチェーンの課題を明確化
同社は2018年から法人を対象に、ブロックチェーンを活用したP2P電力トレーサビリティシステム「ENECTION2.0」を運用し、約60社、約370契約において電力トレーサビリティを実現してきたという。運用する中で、より多くの情報をブロックチェーンに書き込むには処理速度とコストの改善が必要であることがわかり、パブリックブロックチェーンの見直し、処理速度の高速化に取り組んだとのことだ。
■ブロックチェーンを活用した、トレーサビリティシステム「ENECTION2020」
■高速化ブロックチェーンで実現する、「顔の見えるライフスタイル」
顔の見える電力(2016年~)
2016年に開始した、発電者と生活者をつなぐ電力小売りサービスで、法人向けにブロックチェーンを使用した電力トラッキングを運用。需要量と発電量を30分ごとにマッチングし、ブロックチェーン上に記録することで「どの発電所からどれだけ電気を購入したか」を証明することができる。
顔の見える空気(2020年~)
2020年3月に開始した、空気環境の改善事業「みんなエアー」において、店舗やオフィスなどの改善された空気の状態をブロックチェーンに記録するとともに、地図上にマッピングしていくことで、衛生的で安心できる空気を誰もが検索し、選んで利用し、評価ができる社会の実現を目指す。
顔の見えるバッテリー(2020年~)
2020年6月に開始した「みんなでフェアチャージ!プロジェクト」において、ブロックチェーンを活用し、スマートフォンで使用されるリチウムイオン電池の原料である希少金属のトレーサビリティプラットフォームの構築を検討する。希少金属のトレーサビリティを実現することで、電池メーカーとの連携を通じて、児童労働に関与しないフェアかつエシカルなバッテリーの開発および普及を目指すという。
顔の見える土
生活や事業活動に密接な「土」の状態を見える化し、状態の改善と付加価値向上プログラムの提案を通して、汚染や病害性細菌などの心配が無く、必要な生態系が維持され、健康な生産物ときれいな水を生み出す土環境の実現を目指す。
顔の見える住居
ブロックチェーンを用いて国産材のトレーサビリティを実現し、住居の購入やリフォームを検討する消費者が自由に国産材の種類を選択し、購入することができる仕組みづくりを目指す。
顔の見える広告
デジタル広告の分野ではbotなどを使ってインプレッションやクリックなどの広告の成果を不当に水増し、広告主に過大な費用を請求する「アドフラウド」と呼ばれる行為が問題視されている。高速化したブロックチェーンを活用した「ENECTION 2020」を用い、配信結果を広告主にとって透明な形で監視し、より「顔の見える広告」の実現を目指す。
顔の見えるデジタルコンテンツ
デジタルコンテンツの分野において重要視されているテキスト、画像、動画などのコンテンツの著作権保護について、高速化したブロックチェーンを活用することでより安価に実現することを目指す。