デジタルツイン(※1)技術で物流DXを支援するDatumix株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役:鈴木智之)は、サプライチェーン課題に対応する「”AI&デジタルツインによる需要予測と在庫最適化”の試験運用パッケージ」の販売を2024年8月26日(月)に開始する。この新ソリューションは、企業のサプライチェーン管理における在庫の最適化を支援し、収益性の向上やコスト削減をサポートする。
※1:デジタルツイン
現実空間の事象をデータ化し、仮想空間に現実空間の「双子」を構築して、現実的には再現の難しい危険性の高い事象、災害、高価な機器の導入後の効果検証などを仮想空間上で検証する技術
■開発背景
従来の在庫管理ソフトウェアは、生産性や効率の最大化に重点を置いているが、在庫最適化は潜在的な損失と利益のバランスを調整する複雑なプロセスである。最適化が難しい理由の一つに、需要のランダム性から100%の精度で予測することが困難である点がある。また、供給側の不確実性も大きく、経験や勘に頼った直感的な判断が効果を発揮しにくいことも課題だ。今回の試験運用パッケージでは、2つの異なる時間粒度で最適化を行うことで、業務の属人化を防ぎつつ、キャッシュフローの改善、顧客満足度の向上、そして利益増加をサポートする。
■プロダクトの内容
”数ヶ月〜半年”粒度の戦略的中期:安全在庫配置の最適化
在庫管理の研究には長い歴史があり、2000年代前後に確立された理論は、2010年代に欧米の先進企業、特に大手消費財や食品・飲料メーカーの一部で実務的な有用性が証明され、採用する会社が出てきた。現在では「マルチエシェロン(多階層)在庫最適化」は業界の標準となりつつあり、これらメーカーの成功事例ケーススタディはネットでも広く公開され、実務課題を反映し理論自体も実用に合わせて現在でも拡張・改善し続けている。昨今はまだ一部の企業に限られるが、幅広い産業界での検討や採用が進み、今後は日本でも同様の動きが見られることが期待されている。
本プロダクトは様々な在庫種類がある中で、最もコストのインパクトが大きい安全在庫を複雑なサプライチェーンネットワークのどこに配置するべきかを最適化することで、在庫切れによる機会損失や過剰在庫による廃棄ロス損失、キャッシュフロー悪化の最小化、需要の不確実性とのトレードオフ実現を目指す。
プッシュ型の需要予測の見込みに基づきあらかじめ在庫を貯めて準備しておく地点と、プル型のランダム性のある需要が発生した時点で消費される在庫地点の境界線となる通称デカップリングポイントの最適ロケーションを決定する。最適なロケーションと在庫量は以下の主に3つの要素を考慮し、ネットワーク全体で同時に在庫量を自動調整する。
1. 需要予測とその誤差
2. 供給リードタイム内の施設内でのサービス時間(製造時間や倉庫の出入庫時間)
3. 供給リードタイム内の輸送時間
需要側ではSNSの影響や異常気象によって急な需要変動が日常よく発生し、供給側では設備の故障や外部環境の影響で遅延が発生する。またサプライヤーがいる地域での自然災害や、商品準備が整っているにも関わらずストライキにより港や輸送路線が閉鎖される場合、または地政学的なリスクで輸送ルート自体が通行止めになるケースもある。
”数週間〜数ヶ月”粒度の戦術的短期:いつ、どれくらい量を発注するかの在庫ポリシーとポリシー変数の最適化
本プロダクトは、各商品や在庫拠点ごとに、以前は経験やエクセルを使って行っていた発注タイミングと発注量の計算を在庫コストと発注コスト(製造業ではセットアップコスト)のトレードオフを常に最適化させるように自動化する。具体的には販売実績や需要変動、予測誤差などのデータを元に基準在庫レベルを計算し、AI&デジタルツインによるシミュレーションで最適な在庫ポリシーやポリシー変数のシナリオ分析が可能となる。またマルチエシェロン(多階層)在庫最適化の安全在庫量と合わせて、各拠点の在庫状況をリアルタイムで監視し、補充計画や在庫計画のパフォーマンスを評価することができる。このアプローチにより、発注のタイミングや量を自動的に最適化し、在庫の効率的な管理を実現する。
■本プロダクトでできること
• 需要予測/需要センシング*
• *需要センシングとは、天候、交通情報、経済状況、イベントなどの外部データと、企業の過去の実績データを組み合わせることで、短期間での高精度な需要予測を実現する。
• 商品特性に基づくサービスレベル設定
• 各商品の特性に合わせて、適切なサービスレベルを設定するための分析を行う。
• サービスレベルの最適化
• 設定されたサービスレベルを最適化する。
• 動的補充在庫の推奨
• 在庫補充のタイミングと量を動的に調整し、最適な在庫数を推奨する。
• 異なる時間軸での最適化シナリオ分析とシミュレーション
• 短期(数週間〜数ヶ月)と中期(数ヶ月〜半年)の2つの時間軸で、最適化シナリオの分析とシミュレーションを行う。
■プロダクトの強み
本プロダクトは、古典的な単品目・単拠点の需要一定を前提にした個別最適ではなく、ネットワーク型サプライチェーンの多品種&多階層&多拠点で需要予測のランダム性のある波動を前提とした全体最適モデルである。過去データとAI予測に基づくデジタルツインのシミュレーションを活用し、常に先手が打てる確度が高い推奨施策を提供する。前述した3つの変動要素の値を計画サイクル毎に前回の値と比較表示することで、推奨施策の値の理由が表現される。これらは人による意思決定の補助材料として提供されると同時に、最終的な在庫最適化調整は人が判断を下すため、運用において想定外の自動化結果が発生することがなくなる。
■推奨顧客
本プロダクトは、事業会社として在庫を持ちながらサプライチェーンを構築・管理している企業に最適である。一般消費財、BtoC製品、製造業、物流業界など、広範な業務に対応する。
■今後の展望
レベルプランナーは、実行系データをデジタルツインとAIで統合し、それを計画系に活用する独自の設計思想を持っている。この技術により、需要変動を吸収する範囲を計画系まで広げ、内部オペレーションに起因する不確実性リスクに対応する(下記図の1)。
さらに、以前のプレスリリースでも述べたように、現在多くのスタートアップが取り組んでいるイノベーションの分野が、発生頻度が低いものの、起きてしまった時にはサプライチェーンに重大な影響を与えうる情報やデータの収集、整理、可視化、予測である(上記図の2)。たとえば、ローカルイベント、気候変動による災害、地政学的なリスクの変化などは、日常的に発生し、後から因果関係が明らかになることが多いものの、リアルタイムでサプライチェーンの計画に反映するのは難しいとされている。コロナウイルス感染や東日本大震災時の原発問題はその代表例で、これらは供給リードタイム内の輸送時間に影響を与える3つ目の変動要素である。
自社で取り組むものと他社のイノベーションと連携するものを区別・整理し、どれだけ効果的にレベルプランナーに組み込めるかが、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の将来保証(Future-Proof)に繋がるため、実現に向けて着実に進めていきたいと考えている。