理研ジェネシスと日立が、説明可能AIと生成AIの活用により、タンパク質定量解析「Olink™ Explore」サービスを高度化、提供開始

薬効や疾患発症のメカニズム解明および新規バイオマーカー探索を迅速化、個別化医療の発展に貢献

株式会社ジェネシスと株式会社日立製作所は、日立の説明可能なAI「B3*1」および生成AIを活用し、ジェネシスがサービスを提供しているタンパク質定量解析「Olink Explore」を高度化し、アカデミアや製薬会社向けに本日より新たなサービスとして提供を開始した。「Olink Explore*2」は、微量の検体(主に血清・血漿)に対し、多数のタンパク質(現時点で約3000種類~)を網羅的に解析できる技術で、ジェネシスは国内外にサービス提供している。

本サービスは、「Olink Explore」の膨大なアウトプット情報に、日立独自の「B3」および生成AIを活用した解析を組み合わせるもので、薬剤の効果や疾患発症のメカニズム解明、および新規タンパク質バイオマーカー*3の探索を迅速化する。さらに、一般的な血液検査の項目や遺伝子など、タンパク質以外のさまざまな物質データを組み合わせて統合的に解析すること(マルチオミックス解析)も今後可能になる予定である。これにより、個別化医療をはじめとする次世代医療の発展に貢献する。

なお、両社は2024年3月~5月に、「Olink Explore」のアウトプット情報を「B3」および生成AIで解析するPoCを実施し、疾患と遺伝子・タンパク質の相互作用の情報が従来よりも迅速に入手・検索可能になることを確認している。

*1 B3: Black Box Breaker
*2 Olink Explore:オーリンクプロテオミクス株式会社の網羅的タンパク質定量解析のためのプラットフォーム。現在「Olink Explore 3072」と「Olink Explore HT」の2種類のラインアップがあり、一度の解析で検出可能なタンパク質の種類は、それぞれ約3000種類と5400種類。「Olink」はオーリンクプロテオミクス株式会社の商標または登録商標です。
*3 バイオマーカー:病気の診断、治療の効果、医薬品の効果を示す生理学的指標

■背景

同じ病気の患者においても、医薬品の薬効や生活の質を悪化させる副作用の有無には個人差があることから、近年、患者個人の体質や病気の状態に合わせた「個別化医療(オーダーメイド医療)」の実現に向けた研究・開発が進んでいる。こうした中、患者ごとに適切な治療を選択するため、治療の有効性・安全性を適切に評価する、タンパク質や遺伝子などの生体内指標「バイオマーカー」を探索する研究が盛んに行われている。

ジェネシスが受託サービスを展開する「Olink Explore」を活用することで、より多くの種類のタンパク質が検出可能になるが、アウトプット情報から必要な結果を抽出するにはデータクレンジングを入念に行う必要があり、多くの時間を要する。特に、エンリッチメント解析では、結果が膨大になることがあり、解釈に時間がかかっていた。

日立は2019年から、「B3」を用いたLumadaソリューション「Hitachi Digital Solution for Pharma/バイオマーカー探索サービス」を提供しており、「Olink Explore」で測定可能なタンパク質数と同程度の大量データをもとにした遺伝子機能やバイオマーカー探索を支援してきた実績がある。さらに、AIから得られた遺伝子機能と疾患の関連性を調査する作業を生成AIで効率化している。

そこで両社は、ジェネシスが受託サービスを展開する「Olink Explore」のアウトプットデータに「B3」や生成AIを活用して解析することで、さらなるバイオマーカー探索業務の支援が可能になると考え、協業を開始した。

■本サービスの特長

タンパク質定量解析「Olink Explore」に、日立の説明可能なAI「B3」や生成AIを活用した解析をオプションとして提供するサービスである。
1. グローバルで豊富な解析実績を有する「Olink Explore」:微量の検体から数千種類のタンパク質を網羅的に解析できる。
2. AIが導き出した結果を説明可能:「B3」は非線形な解析モデルをシンプルな線形モデルで表現できるため、解釈しやすい。
3. データのサンプルサイズが小さくても解析が可能:「B3」は独自の次元圧縮・過学習抑制の機構を組み込んでいる。
4. マルチバイオマーカーの探索に対応:複数因子を組み合わせたバイオマーカーの探索が可能。
5. 生成AIによるエンリッチメント解析結果の要約レポート作成:エンリッチメント解析で得られた遺伝子機能に関する文献を調査し、まとめたレポートを提供。
6. アカデミアや製薬会社での利用実績:「B3」は国内のアカデミアや製薬会社で利用実績がある。

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