ローカル5Gってどんなこと?メリットやデメリット、導入事例を紹介
2020/11/9
5Gの普及とともに注目されているローカル5G。大手通信キャリアの5G基地局整備も進んでいますが、ローカル5Gを普及させる重要性も高まっています。ここでは、ローカル5Gの特徴や導入するメリットデメリットについて、詳しく説明します。
Contents
- そもそもローカル5Gとは?
- 限定されたエリアで提供される5G通信
- 総務省がローカル5Gの普及を推進している
- 割り当てられる周波数が決まっている
- ローカル5Gを利用するためには免許を取得する必要がある
- ローカル5Gを導入するメリットとは?
- 独自の5Gネットワークを構築できる
- 大手通信キャリアの動向を気にしなくてよい
- 大手通信キャリアがカバーできないエリアに5Gネットワークを構築できる
- 通信障害や災害の影響を受けにくい
- 広い範囲の通信をカバーできる
- Wi-Fiよりもセキュリティ強度が高い
- ローカル5Gのデメリットとは?
- 遮蔽物に弱い
- 免許取得手続きの手間がかかる
- 導入費用がかかる
- 事業規模によっては必要性が低い
- ローカル5Gの導入事例
- 機械の遠隔操作
- スマート工場への導入
- スポーツやエンターテイメントの配信
- ローカル5Gの特徴を理解しておこう
さらに、基地局1つあたりに接続できるデバイス数が圧倒的に多くなるため、1カ所にたくさんの人が集まる場所で同時にインターネットに接続しても、快適に通信できるようになります。また、IoT機器が普及することによって1人あたりが使用するデバイスするが増えるとも言われており、5G通信が普及することでさらに便利で快適な暮らしを手に入れられると期待されています。
このように、5G通信の普及が話題になっていますが、それと同時にローカル5Gの普及も世間から注目されています。しかし、5Gとローカル5Gの違いが分からなかったり、意味を混同している人は意外と多く、今後の通信技術の進化についていくためには、ローカル5Gの特徴や5Gとの違いを知っておくことが大切です。
そこで今回は、ローカル5Gの概要やローカル5Gを導入するメリットデメリットについて、詳しく説明します。
そもそもローカル5Gとは?
ここからは、ローカル5Gの概要について詳しく説明します。
限定されたエリアで提供される5G通信
ローカル5Gを導入するのは、企業や施設、自治体などさまざまで、それぞれが独自に5Gに対応した基地局を構築することで、その場所に限って5Gを使えるようになります。
総務省がローカル5Gの普及を推進している
ローカル5Gのネットワークを構築するためには、周波数帯の割り当てといったルールの策定が必要です。例えば、ローカル5Gを構築できる人は無線局免許を取得する必要があるということや、無線局免許を取得した他者のシステムを利用することなど、さまざまな取り決めをしなければなりません。さらに、ローカル5Gを利用できる場所や範囲や、構築したローカル5Gを誰が利用できるのかなど、ローカル5Gネットワーク構築後の運用方法についても決めなければならず、ルールの策定が進んでいます。
今後ローカル5Gの導入を検討している企業や施設などは、これらの取り決めにもとづいてネットワークを構築していく必要があります。5Gの普及とともにこれらのルールが更新されることも考えられるため、時代の動向を注視しておくことが大切です。
割り当てられる周波数が決まっている
検討されているローカル5Gの周波数帯には、防衛省の公共業務用システムや固定衛星システムが含まれているため、ローカル5Gとどのように共用していくのか注目されています。その中でも28.2G~28.3GHzに関してはすでに利用できることが決まっており、今後はさらに幅広い周波数帯でローカル5Gネットワークの構築が許可されていくでしょう。
ローカル5Gを利用するためには免許を取得する必要がある
免許を取得することによって、定められた周波数帯でローカル5Gネットワークを構築できるようになります。企業や自治体などでローカル5Gネットワークが構築できれば、5G通信の安定稼働や品質の担保したうえで、便利で快適な社会を実現させられるでしょう。
ローカル5Gを導入するメリットとは?
●大手通信キャリアの動向を気にしなくてよい
●大手通信キャリアがカバーできないエリアに5Gネットワークを構築できる
●通信障害や災害の影響を受けにくい
ローカル5Gを導入することには、上記の4つのメリットがあります。ローカル5Gを取り入れるところはさまざまですが、ローカル5Gのメリットを最大限に活かすことで、より便利な暮らしを手に入れられるようになるでしょう。ここからは、ローカル5Gのメリットについて詳しく説明します。
独自の5Gネットワークを構築できる
ローカル5Gは、企業や自治体などの敷地内といった限られたエリアに対して周波数の割り当てを受けます。そのため、ほかの周波数帯と混線することなく快適に5G通信が利用できるので、5Gのメリットを最大限に活かしたビジネスやライフスタイルを実現できます。
例えば工場の敷地内にローカル5Gネットワークを構築し、工場を自動化する仕組みを整えたり、地域や産業のニーズにあわせてローカル5Gを取り入れて地元の産業を活性化させるといったことも可能です。
もちろんローカル5Gネットワークを構築するためには、ローカル5G提供者が一定の条件を満たしたうえで免許を取得する必要があります。しかし、ローカル5Gを導入することによりこれまでの生活が飛躍的に便利になると考えられるため、ローカル5Gネットワークを構築しようと考えるところはますます増えるでしょう。
大手通信キャリアの動向を気にしなくてよい
各大手通信キャリアは、それぞれ5G基地局の整備数や5G通信の人口カバー率といった目標を掲げています。しかし、新型コロナウイルスの影響などもあり思ったように基地局の整備が進まないこともありえます。
ローカル5Gネットワークを構築すれば、大手通信キャリアの基地局の普及状況を気にする必要がありません。企業や自治体などがそれぞれの運営状況にあわせてローカル5Gネットワークを構築すればよいので、独自のペースで快適な5G通信環境を設定できるのです。
大手通信キャリアがカバーできないエリアに5Gネットワークを構築できる
たとえ近隣のエリアに大手通信キャリアの5G基地局が整備されても、場合によっては5G通信がうまく行えないことが考えられます。5Gは4Gよりも電波が届く距離が短く、コンクリートなどの遮蔽物に弱いのが欠点。基地局から離れたエリアにあるところや、工場などコンクリートの遮蔽物が多い建物などでは、大手通信キャリアが提供する5G通信をうまく利用できないかもしれません。
ローカル5Gネットワークを構築していれば、一定の施設やエリアごとに5G環境を整備できるので、大手通信キャリアの通信品質にかかわらず安定的に5Gを利用できます。
通信障害や災害の影響を受けにくい
大手通信キャリアが提供している5G通信を利用していると、通信障害などのトラブルが発生した場合に、基地局がカバーしているエリア全体で5Gが利用できなくなります。多数同時接続が可能とされている5Gであっても、通信機器の接続数によっては通信品質が低下することがないとは言い切れません。また、災害が発生した際に大手通信キャリアの基地局が利用できなくなっても、5G通信の利用が停止することがありえます。
ローカル5Gネットワークを構築していれば、これらのトラブルが起こっても5G通信を維持することが可能。万が一トラブルが起こったとしても、独自に修理・復旧させられるので、安定的なネットワーク維持しやすいのです。
広い範囲の通信をカバーできる
近年主流になりつつあるWi-Fiなどの無線通信ですが、Wi-Fiでの通信は狭い範囲でしか利用できないというデメリットがあります。そのため、大規模な工場や屋外の広い範囲のように無線通信を利用する範囲が広くなるほど、安定的な通信を維持するのは困難です。
しかし、ローカル5Gネットワークを構築すれば、Wi-Fiよりも広い範囲の通信をカバーできるとともに、5Gの超高速・低遅延・多数同時接続という特徴を活かすことができます。もちろんローカル5Gも利用範囲が限定されていますが、Wi-Fiに変わる無線通信として採用すれば、より便利な暮らしが実現できるでしょう。
Wi-Fiよりもセキュリティ強度が高い
Wi-Fiは2.4/5GHz帯の電波を用いていることから、電波が障害物を回り込みやすく、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まるというデメリットがあります。ローカル5Gを利用すれば、28GHz帯のような直線型周波数であるミリ波を使用することで情報が外部に漏洩するリスクを抑えやすくなります。
また、SSIDとパスワードによって認証するWi-Fiと違い、ローカル5GはAPNとパスワードに加えてSIMカードによる認識も行うため、デバイスへの不正アクセスがしにくいという点も、ローカル5Gのセキュリティ強度が高いと言われる理由です。
ローカル5Gのデメリットとは?
●免許取得手続きの手間がかかる
●導入費用がかかる
●事業規模によっては必要性が低い
ローカル5Gには、メリットもあればデメリットもあります。具体的には上記の4つがあり、これらのデメリットを知っておくことで、ローカル5Gの必要性を考えながら快適な通信環境を導入できるようになるでしょう。ここからは、ローカル5Gのデメリットについて詳しく説明します。
遮蔽物に弱い
ローカル5Gでは、28GHz帯のようなミリ波が使われます。この電波は直線型の周波数なので、直線上の通信には強い反面、遮蔽物などで遮られてしまうと通信が遮断されやすいのです。
工場などの広い建物内や遮蔽物のない敷地内であれば安定的に5G通信を行えますが、遮蔽物の多い環境下では、5Gのメリットを最大限に活かせなくなることが考えられます。ローカル5Gの導入を検討している場合は、どこでどのような目的で5G通信をしたいのかを明確にしておくことが大切です。
免許取得手続きの手間がかかる
ローカル5Gを利用できる事業者だと認められるためには、総務省が定める要件を満たしたうえで免許を取得しなければなりません。具体的には、土地や建物の、所有者、賃借権や借地権を持つ土地利用者であるか、または所有者からシステムの構築を依頼された事業者であるかといった要件を確認したり、ローカル5Gを導入する予定の土地や建物内に5Gの基地局を申請前に設置するといった準備が必要です。
また、ローカル5Gの免許を実際に申請する際は、申請書以外にも無線局の開設目的、設置場所、使用する無線機の工事設計などを記載した添付資料や申請手数料なども用意しておかなければなりません。実際に手続きするためには総合通信局に足を運ばなければならないといった手間も発生します。申請から免許取得まで2か月弱かかるとも言われているため、誰でも簡単にローカル5Gの免許取得ができるわけではないのです。
導入費用がかかる
ローカル5Gの基地局を設置するためには、数百万円程度かかるケースもあると言われています。設置する場所や使用する場所の改築といった工事も加われば、さらに費用が高くなるでしょう。ローカル5Gの普及に伴い、設置に必要な機器の費用が落ち着いてくる可能性もありますが、ローカル5Gがまだ普及していない段階では、それなりのコストがかかると考えてよいでしょう。
事業規模によっては必要性が低い
例えば小規模ビジネスを限られた敷地内で行っている事業者など、Wi-Fi通信でスムーズに事業を運営できているところは、ローカル5Gをわざわざ導入しなくてもよいかもしれません。また、5G機器を取り入れたビジネスを行う予定がないところも、ローカル5Gの導入が不要だと考えられます。
また、大手通信キャリアが提供する5Gを利用できるエリアに立地していれば、多額の費用を支払ってローカル5Gの基地局を整備する必要がありません。そのため、ローカル5G整備しなくても、5Gの特徴を活かした事業運営をすることは可能です。
ローカル5Gの導入事例
ここからは、ローカル5Gの導入事例について詳しく説明します。
機械の遠隔操作
例えば山間部での建設工事など、大手通信キャリアが提供する5Gが届きにくいような場所にローカル5Gを設定することで、機械を遠隔操作できるようになります。離れた場所から重機の操作などができるため作業員の負担や危険を抑えやすく、安全に工事を進められます。
また、限られた人員で工事を進めることもできるので、人材不足が深刻な現場でも効率的に作業を進められます。事業者にとっては人件費を抑えながら効率的に利益を伸ばせるので、事業をよりスムーズに成長させられると期待されています。
スマート工場への導入
工場内にローカル5Gを設置することで、工場内の機器をリアルタイムで管理できます。最近は幅広い製品を少量ずつ生産することが求められるようになっており、工場のフレキシブルな対応が求められています。5G通信によって工場の生産ラインの変更やロボットの仕様をタイムリーに変更すれば、より柔軟な製品づくりができるようになるでしょう。
このことは、近年深刻化している工場の人員不足や熟練作業員の減少といった問題解消にもつながるため、ローカル5Gの整備とそれに対応した機器の導入を考える事業者が増えています。
スポーツやエンターテイメントの配信
屋外の競技はコンサートなどであれば、大手通信キャリアが提供する5G通信を利用してスムーズにコンテンツを配信できるでしょう。しかし、スタジアムやライブハウスといった遮蔽物の多い場所で行われるスポーツやエンターテイメントでは、5Gの直線的に飛ぶ電波は遮蔽物によって遮断されやすいと言われています。
ローカル5Gをスタジアムやライブハウスなどに設置すれば、それらの空間内で快適に5Gを利用することができます。さらに、1つの場所からたくさんの人たちがインターネットにアクセスしたとしても、多数同時接続できる5Gであれば回線が混雑することなく快適に超光速通信を楽しめます。そのため、今後は遮蔽物の多い施設でもローカル5Gの普及が進んでいくと考えられます。
ローカル5Gの特徴を理解しておこう
5Gに対応したデバイスもこれからたくさん普及してくると予想されるため、ここで説明した内容を参考にして、ローカル5Gの普及状況にあわせて新しい通信技術に対応できるようにしておきましょう。