新型コロナウイルスの感染拡大によって、不要不急の外出を控えることが推奨されています。とくに緊急事態宣言が発令された大都市部では、通勤・通学の満員電車やオフィスに集まることでの感染リスクが指摘されたことで、通勤せずに自宅などの遠隔地から業務を行うリモートワークを導入する企業が増えました。
Web会議ツールを使えば、離れた場所にいる従業員同士や取引先とも、打ち合わせができるため、営業職や販売職など対面を基本とする職種以外では、普段と変わらない業務が行える環境が整いつつあります。一方で雑談など、社内で気軽に交わされていたコミュニケーションの機会が減ることによって、意思疎通や関係性が希薄になるのではないかと、リモートワークの弊害も指摘されています。そんななか注目を集めているのがビジネスチャットツールです。
とくに「Slack(スラック)」は、誰でも直感的に操作が可能で、扱いやすいことから、日本でもIT企業を中心に採用する企業が増えています。Slackとは一体どんなツールなのか? どんなメリットがあるのか。Slackの主な特徴や使い方を解説します。
そもそもSlackとは何か?
Slackは、2013年8月にアメリカでリリースされたコミュニケーションツールです。日本では現在50万人以上が利用しているといわれており、2019年2月時点で、Slackの有料プランを利用している企業がすでに8万5000社を超えたという報告もあります。その後も利用者が増えたことで、認知度が飛躍的に高まっていることから、今後もユーザー数の増加が予想されています。
ビジネス向けのチャットツール
Slackは、アメリカのSlack Technology社が開発したビジネスチャットツールで、もともとGlitchというゲームの映像配信サービスを開発していたスタッフたちが社内でコミュニケーションを取るために開発したツールだったといわれています。いち早く、Slackに関心を持ったのが、エンジニア関連の部署だったことも、Slackが他社に先駆けて広まった背景かもしれません。
場所を選ばずツールが利用できる
Slackはインターネットに接続できる環境なら、すぐに利用することができます。PCでの利用はもちろん、スマートフォン用のアプリもAndroidとiOSの両方が提供されています。したがって外出先でも利用できる点も、コミュニケーションツールとして扱いやすい特徴となっています。
幅広い環境でアプリが使える
SlackはWebブラウザから利用することもできますが、アプリを活用するほうが便利です。アプリ版はWindowsやmacOSそしてLinux向けのデスクトップアプリに加えて、モバイルアプリもあります。iOSやAndroid、Windows Phoneといった主要なスマホで利用できる環境が整っています。こうした利用環境の幅広さも魅力です。
Slackとは英語でどういう意味?
Slackは英語で「たるんだ」「ゆるい」といった意味になります。一見すると、ビジネスツールにふさわしくないネーミングに思えますが、「余裕」というポジティブな意味も持っています。そのため、気取らない雑談が生まれるような“ゆるい”コミュニケーションツールだと言えます。社内のスタッフ同士のコミュニケーションを円滑にし、リラックスして仕事に打ち込める環境を構築する手助けになります。
Slackでできることとは?
では、Slackは日常の業務のなかでどのように活用すれば良いのでしょうか? Slackでできることや便利な機能など詳細について説明していきます。
チャット機能
Slackのメイン機能は、テキストでコメントをやりとりするチャットです。「タイムライン」と呼ばれる時系列で管理され、古い内容から順番に並ぶ仕様となっています。そのためメールよりも直感的に、会話の内容が把握できるという特徴を持っています。もし、チャットの内容を振り返りたいときも、経緯を遡って確認することが容易にできます。
また、チャットは1対1だけではなく、複数の相手とやりとりすることができます。「チャンネル」もしくは「グループチャット機能」という二つのやり方がありますが、前者は部署ごとなど、グループでチャットをしたいときに部屋を作ることで、そこでメッセージのやりとりができるという機能です。後者のグループチャットは、部署のメンバーだけはなく、他のメンバーも加えてチャットをしたいときや、特定のメンバー複数人とチャットをしたい場合に活用できる機能です。メンバーを自由に指定することで、そのメンバーとチャットを開始することができます。
ほかにも「ダイレクトチャット」という機能もあります。これは、いわゆるダイレクトメッセージです。LINEなどの他のアプリよりも、削除や修正がしやすいという特徴があります。
「メンション」は特定の相手にメッセージを送るための機能です。複数のメンバーとグループチャットをしているときに、特定の相手にだけメッセージを送信したいときがあるでしょう。そんなときは、メンション付メッセージを投稿します。メッセージを送った相手に『あなた宛のメッセージが届いていますよ』というプッシュ通知が届くため、より確実にメッセージを知らせてくれるわけです。メッセージが見逃してしまうといったトラブルが回避できます。なお、Slackには、複数のメンション機能があり、@のあとに届けたい相手のアカウント名を入力することで、その相手にメッセージを送ることができますが、@のあとをhereに変えると、ステータスがアクティブになっている人、つまり「Slackアプリを開いている人」にメッセージを届けることができます。@のあとにchannelと入力すると、今度はグループのメンバー全員にメッセージを送ることができる仕組みになっています。
ファイル管理
テキストで会話をするチャットが、Slackの代表的な機能ですが、会話の流れから書類や画像といったファイルを共有したい場合があるでしょう。こんなとき、いちいちメールで送信するなど、別のツールに切り替えて対応するのは面倒です。そこでSlackでは、ファイルのアップロードやダウンロード、ファイルのプレビューなども可能になっています。またSlackのファイル共有機能では、チャンネルごとにファイルをまとめて保存してくれるため、のちのちやりとりしたファイルを確認したいときも、すぐに探し出すことができます。
検索機能
Slackには検索機能も搭載されています。振り返って確認したいメッセージをキーワードから探すことができます。メッセージの内容を覚えていなくても、発言したメンバーを記憶していたら、メンバーでフィルタリングしたり、チャンネルや投稿時期から絞り込むこともできます。「チャンネルごとに絞って検索する」なら、絞り込みやすく、メールソフトでの検索機能よりも精度が高いと言えます。
ビデオ通話機能
チャットだけではなく、直接、音声通話したい場合も、電話やLINEなどに切り替える必要はなく、そのままSlackを利用することができます。「Slackコール」という機能ですが、これはビデオ通話の機能で、オンライン中ならそのまま通話することができます。1対1での通話だけではなく、チャンネル内のメンバーとも通話が可能で、最大15名まで同時に通話ができます。さらにデスクトップ版の有料プランに加入していると、画面を共有したり、共有している画面に書き込みをするといった、他のWeb会議ツールに搭載されているような使い方もできます。
Slackを利用するメリット
多様な機能を持つSlackですが、どんな風に活用すると、よりメリットを享受することができるのでしょうか? ここからは、Slackを利用するメリットについて触れます。
すべての作業をチャンネル内に集約できる
メールなどのコミュニケーションツールのほか、進捗・プロジェクト管理ツール、ファイル共有サービス、Web会議ツールなど、複数のサービスやツールを立ち上げながら業務を行なっていると、かえって効率が悪くなる可能性があります。ソフトを切り替えや、連絡漏れの心配もあります。そこで複数の機能を併せ持ったSlackに集約させることで、ミスを減らすことができます。話し合いたいトピックスや進行中のプロジェクト、チームを分けて専用のチャンネルを開設することで、同時進行でさまざまな案件を進行していく人も、情報や進捗状況を漏れなく把握することができるようになります。
途中参加の人でもメッセージの流れを確認できる
Slackの機能にチャンネルがあります。これはグループチャットのような機能で、複数のユーザーとひとつの会議室を作ることで、そこでテーマやメンバーを絞った情報のやりとりができます。複数のプロジェクトや異なるチームで動いているときも、話題がチャンネルに集約されるので、混乱することがありません。
もし、チャットを見逃したとしても、過去のやり取りなど履歴として保存されるため、途中からメンバーを追加した場合でも、会話のログを追うことができます。経緯や現状を把握して、全体の流れをあとから理解することができるわけです。
通知設定を柔軟にカスタマイズできる
話題やメンバーごとに、Slackのチャンネルを細分化させると、便利な一方で、自分とは関係がないチャットの通知がいちいち飛んでくるのでは?と、心配になる人もいます。実際、そのような通知が煩わしく、まったく使わなくなるツールもあります。その点、Slackでは、チャンネルごとに通知の設定を変えることができます。たとえば自分宛てのメッセージだけを通知させるといった設定も簡単にできます。
わざわざ送信者を選ばなくてよい
メールソフトでは、送信したい相手をアドレス帳から検索したり、過去のメールから相手を探し、返信する形でメッセージを送るのが一般的です。Slackでは、そのひと手間も不要です。該当するチャンネルに発信するだけで、グループチャットに参加している人に発信することができます。メールでも、CCをつけることで、複数の相手に発信できますが、CCをつける際には、誰をCCに入れるか考える必要があります。またメーリングリストを作成するという手もありますが、簡単にチャンネルを作れるSlackとは違い、新たにメーリングリストを作るのは手間がかかります。さらにメールでは、一度、送ってしまったら、取り消すことが基本的にはできません。後からCCに入れ忘れたことに気付いても、再度、メールを転送することが必要になります。
連携できる外部ツールが多い
Slackのメリットのひとつに、外部のWebサービスとの連携が充実している点も挙げられます。GoogleカレンダーやGoogleドライブ、Confluense、JIRA、Trello、Asana、Zendesk、そしてZapierなど連携できるサービスが豊富です。たとえば、Googleドライブのドキュメントに共有リクエストがあった場合には、Slackと連携させておくと、Slackのほうに通知が飛んできます。このように各種WebサービスをSlackと連携させておくことで、Slackを中心に作業を進めることができ、とても効率的です。
検索機能が充実している
チャットツールのデメリットは、会話が流れていき、途中で参加すると、話題を理解しにくい点にあります。また、過去のコメントやメッセージを見つけるのも得意ではありません。その点、Slackは検索機能が充実しており、さまざまな方法で検索が可能です。チャンネルに絞って検索できるのはもちろん、発言者を絞った検索や、期間を絞った検索など、他のビジネスチャットツールより使い勝手が良い検索機能だと言えます。
Slackの利用手順とは?
では実際にSlackを利用する場合、どんな手順を踏めば良いのでしょうか? 利用までの手順を簡単に説明します。
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アカウントを登録する
Slackを利用する場合、アプリをダウンロードするか、Webサイトからアカウントを登録する必要があります。メールアドレスを入力し、「確認する」というボタンをクリックすると、登録したメールアドレス宛に確認メールが届きます。メールには6桁の認証コードが記載されており、それをアプリやWebサイトから入力することによって、認証が完了します。
ワークスペースを作成する
認証が終わったら、パスワードを設定します。これでアカウントの作成は終了で、ログインが可能になります。続いて「社名またはチーム名を教えてください」という画面に遷移するので、判別しやすい名称をつけましょう。ここで入力したものが「ワークスペース」の名前になります。部署やプロジェクトチーム単位で設定すると、利用しやすいので、同じ部署の同僚や協業しているパートナーのなかから、ワークスペースに招待したい人のメールアドレスを入力し、作成したワークスペースへの参加を促します。
作業ごとにチャンネルを作成する
次に作業ごとにチャンネルを作成すると、テーマが絞られて、さらにコミュニケーションがしやすくなります。チャンネルを作成するためには、プロジェクト名を入力することになりますが、ここで入力した名称が最初に作られるチャンネル名になります。クライアントとのワークスペースとして活用するのなら、クライアント名を設定しておくとわかりやすいでしょう。そのほか作業やプロジェクト、部署などによって、チャンネルを細かく使い分けることで、効率的に作業が進められるようになります。
タイムラインで発言したりファイルの送受信を行う
チャンネルが作成され、参加者の招待も終わったら、タイムラインに投稿してみましょう。該当チャンネルに参加しているメンバー全員が投稿されたメッセージやファイルを確認することができるようになります。
必要に応じてダイレクトチャットやビデオチャットを行う
チャットだけでも十分にコミュニケーションが取れますが、ダイレクトチャットの機能を活用すれば、個別にメッセージを送ることもできます。もし間違ったメッセージを送ってしまっても、すぐに取り消しや編集もできるため、気軽に投稿することができます。ビデオチャットなら、テキストでのやりとりだけではなく、相手の顔を見ながら会話することも可能になります。
利用状況に応じて詳細設定を行う
Slackを使っているうちにチャンネル数が増えていき、投稿を確認するけれど、通知までは不要というケースもあるでしょう。反対に自分宛のメッセージじゃなかったとしても投稿は確認したいので、逐一、通知がほしいなど設定をカスタマイズしたい人もいるかもしれません。そんなときは、チャンネル別に通知を設定したり、あるいはスターをつけることで投稿を見やすくしたり、検索窓を利用してメッセージを絞り込んだりと、利用頻度や使い方にあわせたセッティングにカスタマイズすることができます。
Slackの料金プランは4つ
Slackは基本的な機能を利用するだけなら、無料で使えますが、より便利に、高度に使いこなしたいユーザー向けに有料プランも設けています。
無料プラン
Slackは無料で利用できます。ただ無料プランには利用制限があり、閲覧できるメッセージ件数が10,000件で、ビデオ通話も1対1のみ利用ができます。
スタンダード
スタンダードは、主に中小規模の企業向けのプランで、1人あたりの月額850円(年払いの場合)を支払うことで、「メッセージ履歴へのアクセスが無制限」「無制限のアプリ」「画面共有機能付きのグループビデオ通話」「Slack コネクトを使って、ほかのオーガナイゼーションと安全に共同作業」といった利用が可能になります。
プラス
スタンダードの上位プランがプラスです。大規模な企業や高度な管理ツールが必要な企業向けですが、1人あたり月額1,600円(年払いの場合)で、「99.99%のアップタイムを保証するサービス品質保証」「ユーザーのプロビジョニングとデプロビジョニング」「SAML ベースのシングルサインオン(SSO)」「すべてのメッセージのデータのエクスポート」といった機能が利用できます。
Enterprise Grid
最上位のプランが「Enterprise Grid」です。こちらは、規制の厳しい業界や、非常に大規模で複雑な組織を持つ企業向けのプランで、1人あたりの月額は要問い合わせとなっています。主な機能には「無制限のワークスペース」のほか「データ損失防止 (Data Loss Prevention=DLP)、e-Discovery、そしてオフラインのバックアッププロバイダーに対応」「専任のカスタマーサクセスチーム」「HIPAA 準拠のメッセージとファイルでのコラボレーション」に加え、「プラス」と同様の「99.99%のアップタイムを保証するサービス品質保証」「ユーザーのプロビジョニングとデプロビジョニング」「SAML ベースのシングルサインオン(SSO)」「すべてのメッセージのデータのエクスポート」が利用できます。
Slackの特徴を活かして業務に役立てよう
Slackはアメリカで開発されたサービスですが、その使いやすさは日本人にもフレンドリーで、導入する企業が増えています。とくにエンジニアにとって作業効率が上がるGitHubなどの他サービスとの連携が優れており、他のサービスと差別化しているものとなっています。個人間での利用でも十分活用できるので、一度Slackを使ってみてはいかがでしょうか。