リモート実現・効率化だけじゃない、 ライブ面接/録画面接で人はもっと全機現できる
2020/3/13
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が非対面式の業務オペレーション構築を急ぐ中、採用面接をWeb上で行える動画面接が注目をされている。
株式会社ZENKIGENが提供するWEB面接プラットフォーム「HARUTAKA」は、オンラインでリアルタイムに面接ができるライブ面接と、設問に対して動画を録画してエントリーができる録画面接機能があります。
選考時間を短縮できることはもちろん、候補者の選考参加率が向上するといったメリットもあり、兼ねてからソフトバンクや三菱地所など大手企業も導入している。既に業界をリードするサービスとなっているHARUTAKAの立ち上げに至った背景にはどのような想いがあったのか。そして採用活動はデジタルシフトを経てどう変わるのか。同サービスを提供する株式会社ZENKIGENの代表取締役CEO、野澤 比日樹氏にお話を伺った。
Contents
人事にデジタルを導入し、全機現できる人を増やしたい
師匠として尊敬している人が教えてくれた言葉「全機現(ぜんきげん)」がきっかけでした。社名にもなっている言葉ですね。全機現とは人が持つ能力の全てを発揮することを示す禅の言葉です。
自分の人生を楽しむだけでなく、自分のやっていることを通じて世の中をよくしようと全力で取り組み、輝いている大人は僕の周りにいっぱいいます。子どもたちがそんな大人の姿を見て、大人になるのが楽しみだという夢や希望を持つ社会が残せたらと思いました。
睡眠以外で、大人が一番時間を使うのは仕事です。大人が仕事を嫌々やっているのか、自分から活き活きと取り組んでいるかどうかで、子どもたちが仕事に対して感じる印象は全然変わりますよね。子供たちが、働くことを楽しみに思えるように、人事の領域で課題解決に望み、全機現できる人を増やしていきたいと思ったんです。
具体的なサービス内容は、ビジネスのセオリーに則って、上りのエスカレーターに乗ること、つまり、今後伸びるであろう分野に参入することを考えて決めました。
採用面接の現場はテクノロジーが発達しても、20年も前、自分が学生だった時から全く変わっていませんでした。企業の採用担当者は面接からフィードバックの記入まで毎回労力をかけて行なったり、候補者の方々は片道何時間もかけて面接を受けにきてくれたりしています。
しかし、労働人口も減っている中、もっと効率的にやらなければならなりません。採用活動にテクノロジーを掛け合わせて新しいシステムを作るHRテックという領域は間違いなく伸びると思いました。
そこで思いついたのがWEB面接プラットフォームでした。時代背景的に、4G回線が普及しスマホを持つことが当たり前になり、若い人たちが自撮りに慣れている昨今。WEB面接はスムーズに受け入れられるのではと思ったんです。
間違いなく2、3年の間にブレイクする事業で、だからこそ参入するタイミングは今しかないと思いました。そこで、資金調達をし、一気に事業を立ち上げたんです
極限まで無駄を省き、実現したユーザビリティ
HARUTAKAは採用面接をオンライン上で行えるWEB面接プラットフォームです。遠方にいる応募者に対してリモート面接が可能になることに加え、あらかじめ企業が設問を決めておくことで、候補者は自撮り動画を回答として送ることができます。時間や場所を調整する手間が減り、採用にかかる人的コストと時間を削減できるのです。
応募者にしても交通費をかけ、時間を使って面接会場に行く必要が無くなりますし、動画の場合、撮り直しをすることも可能です。自然と、選考に参加してくれる人数も増えます。
無駄な機能を極力削ぎ落とすことによって実現したユーザビリティです。
採用業界にはすでに流通している採用管理システム(ATS)があり、どの会社も同システムをプラットフォームとして採用に関するデータを管理しています。そんな中、後発のシステムがいくら充実した機能を搭載していてもほとんど使われません。むしろ、その機能があることで操作性が悪くなり、戸惑わせてしまうことになります。
そこで、WEB面接に最低限必要な機能のみを残し、他は既存の採用管理システムと連携するようにしました。質問設計など、Web面接のために必要な設定だけHARUTAKAですれば、他のフローは全部、既存システムでできるように設計し、ATSとの連携を進めてきました。
普通、新しいシステムを作る際は、あれもこれもと余計な機能をつけたくなるものです。ただ我々は戦略として、徹底的に余計なものを削ぎ落とし、採用担当者の方がいかにシームレスに既存のシステムと連携できるかにこだわりました。
また、ユーザーサイドのユーザビリティにも注力しました。今の学生は自撮りに慣れているとはいえ、面接では緊張するもの。なので、動画を撮ってもらう前に、あらかじめ録画した人事の人の映像を流し「緊張しないでくださいね」「撮り方はこうしてくださいね」と説明していただくようにしています。候補者の心理的なハードルを下げて、なるべく普段通り話せるようにするのが狙いです。
ハードルを下げると応募率の向上に繋がり、応募率が上がれば求人広告費用も下げることができます。実際に我々のお客様の中では、月で500万から800万ぐらい広告費用をカットでき、出張費なども含めると年間で1億ほどコストカットができた企業様もあります。
AI×HRの活用は、“AIによる選考の自動化”ではなく“コミュニケーションの質の良化”のために
今「HARUTAKA」は、効率化の面で役に立つサービスになっていますが、次はAIを活用し、面接の質を向上させる機能を搭載したいと思っています。
世界中でAI×HRというと、AIが人を評価し、判定するサービスが多く、効率化・自動化の方向性で考えがちです。
我々はこのようなAI活用による選考の自動化はやりません。あくまでも人の可能性を見極め、引き出すのは人だと考えているからです。そこで、我々が作っている新しいプロダクトは面接官の方を動画を介して解析し、より良い面接スタイルを身に着けるために必要なアドバイスをする面接官サポートAI「ZIGAN」です。
その背景には、面接を受けたことで、その企業に入社したくないと思ったことのある応募者が85%もいるというデータがあります。その理由として多くの割合を占めるのが面接官の不快な態度や言動です。一方、候補者体験の最良化に取り組む先進的な会社では、面接を受けた人はたとえ落選したとしても、他の人に自分がエントリーした企業を勧めます。我々のサービスで、どの会社も候補者体験を最良化できるようにしたいのです。
面接の質を向上できる「ZIGAN」が完成すれば、その活用は採用シーンにとどまらず、例えば上司と部下との1on1などにも使えます。働く中で元気を失い、鬱になる人の8割は人間関係が原因で、中でも上司と部下の関係性が大きな割合を占めるというデータもあります。コミュニケーションを円滑にし、健全な関係性構築のサポートができれば、多くの人の働くモチベーション向上に繋がると思うのです。
テクノロジーで人はもっと全機現できる
我々がどれだけ恵まれた時代に生まれているのかに気付いたことが大きいですね。
社会人になる前に、自分を鍛えるため世界放浪の旅に出ていました。いろんな国に行くと、明らかに僕より貧しい人たちが、いろんなご馳走を振舞ってくれたりして、ものすごく愛情を感じました。その後、日本に帰ってくると政治家の汚職事件があり、今だけ、自分だけ、お金だけ、のことを考えているリーダーたちを見て怒りが湧いたんですよね。
また、放浪から帰ってきてしばらくして戦時中に特攻隊員たちのお世話をしたおばあちゃんの話を聞く機会もありました。泣きながら話してくれた特攻隊員の人柄のすばらしさや、後に続くを信ず、という想いを聞き、私たちにその想いが託されているように思ったんですよね。
世界放浪で日本人が恵まれていることや、戦時中の話を聞いて現代人が恵まれていることに気づき、自分が人類史上でどれだけ恵まれているのかと強烈に感じました。それに気付いた私は、自分の幸せのためだけに生きていくのではなく、良い社会を作ることに貢献する責任があると思うようになりました。
だからこそ、未来の世代には、働くのが楽しくないと思っている人や鬱の人が多い社会ではなく、みんなが和気あいあいと楽しく働いている社会を残したいのです。
――テクノロジーの進歩が進む中、人の働き方はどうなっていくと思いますか。
オンラインで行う仕事の割合はどんどん増えると思います。AIやロボットが活躍する領域も広がっていくでしょう。そうなった時、本当の人間の仕事はなんだろうかと考えるシーンも多くなると思います。
その答えの一つが共創で、共に働き、創造することこそ人間のやれる最も価値のある仕事だと思っています。そして、共創を実現するため、コミュニケーションの質を高めたり、良い場を作ったりするサポートをするのがテクノロジーの役割なのだと思っています。
我々は、「テクノロジーを通じて、人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョンの達成のために邁進していきます。我々のプロダクトを通じて、個人が「自分の能力を最大限発揮できる」社会を作っていきたいと思います。
インターネットのスピードがもたらす、ライフスタイルの変化にいち早く気付き、1999年に、株式会社サイバーエージェントに入社。数多くの事業立ち上げを担ったのち、東日本大震災を契機に、子どもたちが生きる未来に、原発のない社会を作りたいと想い、2011年、ソフトバンクグループ株式会社に孫氏の誘いを受け参画。再生可能エネルギー比率の高い「自然でんき」を開発。事業立ち上げ後、自らの裁量で、自分の力を活かし、何かを成し遂げたいと2017年ZENKIGENを起業。