デジタルシフト未来マガジン〜「THRASIO(スラシオ)」〜
2020/12/3
株式会社オプト上席執行役員の石原氏による連載企画。デジタルを活用した新しいビジネスモデルで、未来を先取りする海外サービスに注目し、その仕組みをお伝えしていきます。今回は、Amazonに展開するD2Cブランドを次々と買収し成長させる「THRASIO(スラシオ)」を紹介いただきます。
突然ですが、その昔、アメリカのゴールドラッシュで一番儲かったのは誰か、みなさんはご存知でしょうか?それは、一攫千金を狙って金を掘りに行った人ではなく、彼らにスコップやジーンズを売った人達なんです。金を掘るのは大儲けが期待できる一方、当たる確率は低い。しかし、スコップやジーンズは金を掘る人全員に必要なので、確実に売上が伸びるというカラクリです。D2Cブランドは、ある程度のソーシャルパワーがあればそこそこ売上を伸ばせますが、大きな事業成功までいける確率は相当低く、まるで「金を掘る」ような事業です。
今回ご紹介する、新しいD2Cプラットフォーム事業の「THRASIO(スラシオ)」は、Amazonに出品されている、ある程度売上のあるD2Cブランドに狙いを定め、買収交渉を仕掛けまくります。簡単に言うと「人気ブランドを買収して、さらに成長させていく」というとてもシンプルなビジネスモデルです。そして、独自のAmazon販促ノウハウを活用することで、再現性を持って買収したブランドの売上と利益を高めていくのです。「一定規模のブランドを見つけ買収し、自社ノウハウを適用する」。THRASIOはこれを繰り返すことで、金を掘るようなD2Cブランド事業で、安定的に利益を生み出すことに成功しています。つまり、「現代のゴールドラッシュ」とも言うべきD2C市場において、THRASIOはスコップやジーンズを売るポジションで実績をあげている企業なのです。それでは、詳しく見ていきましょう。
「THRASIO(スラシオ)」とは
「D2C」とは、「Direct to Consumer」の略称で、消費者に商品を直接販売する仕組みのことです。もともと、商品を作るメーカーは消費者への販路を持たず、卸売業者を通してスーパーや家電量販店などの小売業者に商品を納品し、消費者とつながりを持つ小売業者が販売を担っていました。しかし、インターネットの登場により、販路を持たないメーカーでもECやSNSを通じて直接消費者にモノを売ることができるようになったのです。また、ECやSNSを持たなくてもAmazonや楽天のようなマーケットプレイスに出品することで多くの消費者にアプローチすることも可能です。ここ数年、「D2C」という言葉と共に、様々な領域で多くのブランドが立ち上がっています。多くのブランドが立ち上がる一方で、ブランドにも悩みが生まれます。THRASIOはここに目をつけました。
THRASIO(スラシオ)のビジネスモデル
多くの企業と同じくD2Cブランドも規模が拡大すればするほど、事業が複雑になっていきます。最初は「製品を作って販売する」というシンプルな内容だったものが、顧客の管理や広告出稿・プロモーション、さらなる成長を求めた新商品の開発など、やることがどんどん増えていくのです。D2Cブランドを立ち上げる人は多くの場合、扱う製品のプロであっても経営のプロではありません。そのため、増えるオペレーションに対して、人や資金、ノウハウなどが不足してしまい処理しきれなくなってしまうというのが、ブランド側の実情です。そのため、単体では成長しきれないブランドと、足りないリソースや資金を提供するTHRASIOは補完関係にあり、WIN-WINの買収になるため、ブランドのオーナーはTHRASIOの買収提案を受け入れるのです。
D2Cブランドを成長させるノウハウ、人、資金を持つTHRASIO(スラシオ)
株式会社デジタルホールディングス グループ執行役員
株式会社オプト 上席執行役員
2003年、旧ソフトバンクIDC㈱に入社。ネットワークエンジニアとして従事した後、2006年に㈱オプト(現:㈱オプトホールディング)入社。営業、マーケティング職を経て、2010年にWebマーケ会社の㈱デジミホ(旧オプトグループ)の取締役に就任。SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。