評価額100億ドルのデカコーン企業、コラボレーションソフトウェア「Notion」〜海外ユニコーンウォッチ #11〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回はコラボレーションソフトウェア「Notion(ノーション)」を取り上げる。

ピクサーやサントリーも利用。コラボレーションソフトウェア「Notion」とは

Notionは、アメリカに本社をかまえるコラボレーションソフトウェアだ。「All-in-one workspace(一体化されたワークスペース)」と謳っているように、Notionという一つのツールのなかに、さまざまな機能が搭載されていることが大きな特徴だ。ドキュメント作成や表・データベース作成、プロジェクト管理など、他のサービスではそれぞれ独立して提供している機能を、Notionでは一括で扱うことができる。複数のツールを行ったり来たりする手間が省けることや、全ての情報をまとめて管理できることが人気の理由だ。個人利用はもちろん、複数人で共有することも可能。実際に、ピクサーやFigma、サントリーなどでも利用されているという。

2016年にNotion 1.0がリリースされ、2019年に100万人だったユーザー数は、2020年4月に400万人、2021年10月には2,000万人を超えている。そのうち、約80%がアメリカ以外のユーザーでありグローバルで利用されるサービスとなった。このような急成長を背景に、2021年10月には2億7,500万ドルの資金調達を発表。評価額は100億ドルに達し、「デカコーン企業」となっている。

日本でもスタートアップを中心にNotionのユーザーは増加している。2021年8月、日本のDAUが前年同月比で約4倍になり、1,000社以上のスタートアップが利用しているという。2021年10月には、日本語に対応した「日本語ベータ版」をリリースした。Notionと日本との間には少なからぬ縁がある。創業者でCEOのアイバン・ザオ氏は、Notionの開発に明け暮れていた2015年を京都で過ごし、その際に受けたインスピレーションがNotionに活かされているというのだ。「なぜ日本を選んだのか」という質問に対して、ザオ氏は「日本には職人の技巧を大切にする文化があり、Notionが目指したい姿が体現されていたから」と答えたとのことだ。

コンピューターの可能性を追求した、Notionの設計思想

Notionの最大の特徴は、さまざまな機能を搭載した「All-in-one workspace」であることだが、ここにはNotionの強い意志がある。登場した頃のコンピューターは「想像力を伸ばす」「知能を高める」と考えられていたのに対して、現在はコンピューターを活用し切れていないと、Notionは指摘する。各サービスはデジタル化されているものの、昔からのツールの延長にあるだけで、根本的なコンセプトとしては、産業革命時代からの進歩が少ししかないというのが彼らの考えだ。Notionは「私たちは、現代のツールから卒業し、先駆者たちのアイデアをよみがえらせたかったのです」と語り、コンピューターの可能性を実現する第一歩として、数多くの機能を集約した「All-in-one」なサービスを提供し始めたとのことだ。2021年10月の資金調達の際、ザオ氏は「Notionのミッションは、ソフトウェアをカスタマイズする力を地球上の全ての人に届けることだ」という趣旨の投稿をしている。豊富な機能の中から何をどのように使うか、ユーザーが自由に決められるNotionの仕様に、提供当初からの一貫した設計思想を垣間見ることができる。

「越境」する競合サービス

ユーザー数が順調に伸び多額の資金を調達したNotionだが、競合サービスも多い。Google、マイクロソフトの存在はもちろん、最近では従来の機能の垣根を越えるサービスもある。2022年9月、デザイン作成ツール「Canva(キャンバ)」は、文書作成機能「Canva Docs」を発表。また、同じ9月にはSalesforce傘下のビジネス向けメッセージングサービス「Slack(スラック)」が、さまざまな情報を収集・整理・共有する新機能「Slack Canvas」を発表した。どちらも、デザインやビジネスチャットという従来の機能から隣接領域へと拡張したサービス展開だ。

このように、今までは複数のツールが必要だった作業を一つのツールで完結できるよう、各サービスが機能を広げるという動きが出ている。一つのツールに複数の機能を搭載するというのは、まさにNotionのお家芸だが、最初からあらゆる機能を包括しているNotionには、「機能が複雑で使いこなせない」という声もある。各サービスが領域を広げ、扱う機能が重なり合うなかで、ユーザー獲得の争いはさらに熾烈を極めることになりそうだ。

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