スマホ不要の世界へ。大阪・関西万博で導入される生体認証。 日本の最先端を走る日立製作所とNECの取り組みとは?

2025年4月13日から10月13日までの184日間、大阪府大阪市此花区の夢洲で「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が開催されます。今回のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、最先端の技術やサービスが一堂に会する予定です。そのなかでも「生体認証」の導入が注目を集めています。

「生体認証」とは、身体の特徴を用いて個人を認証する技術で、なりすましが難しく確実に個人を特定できることや、利用者側は手軽に認証できるというメリットがあります。

大阪・関西万博では、チケットの購入や日時の予約、各種サービスの利用などに生体認証が活用され、来場者にシームレスな体験が提供されます。そのような生体認証の研究・開発で最先端を走る企業が、株式会社日立製作所と日本電気株式会社(NEC)の2社です。本記事では、この2社の生体認証の取り組みや、ともに日本をリードする姿勢について紹介します。

指静脈認証のパイオニア、日立製作所

日立製作所は、生体認証のなかでも指静脈認証のパイオニアとして知られています。指静脈認証では、指をカメラにかざすことで静脈の存在する部分を検出し個人を認証します。偽造が非常に難しく、高精度な認証を素早く行えることが特徴です。1997年、日立製作所の研究チームが指の静脈を撮影することに成功し、2000年に指静脈認証の基本技術を確立しました。そして2002年には、入退管理システムとして指静脈認証装置を製品化しました。

現在、同社の指静脈認証は、金融機関やオフィスのセキュリティ、行政機関などで広く採用されています。特に銀行のATMでの本人確認や、高いセキュリティが求められる施設での入退室管理で活用されています。また、スマートフォンのカメラで指静脈認証を可能にするなど、日常生活への応用も進められています。

日立製作所は2024年9月、大阪・関西万博の公式ウォレットアプリ「EXPO 2025 デジタルウォレット」にも採用されているWeb3ウォレット基盤「Hash Wallet」を提供する株式会社 HashPortと、「生体認証技術を活用した安心・安全・便利なWeb3ウォレットの社会実装に向けた協業」を開始しており、生体認証の活用の場面をさらに拡大しています。

顔認証技術で世界トップクラスの精度を誇るNEC

NECは、顔や虹彩、指紋などの生体認証技術に加え、そのような複数の生体認証を組み合わせた「マルチモーダル生体認証」を開発してきました。そのなかでも、1989年に研究を開始した顔認証技術は世界トップクラスの精度を誇ります。生体認証の精度を測る、米国国立標準技術研究所(NIST)主催の「顔認証ベンチマークテスト」では、2009年に参加して以来、2024年も含めた複数回、No.1評価を獲得しています。

NECの顔認証技術は、空港での出入国管理やイベント会場での本人確認など、幅広い分野で採用されています。また、最近ではマスク着用時でも高精度で認証できる技術の開発にも成功しており、コロナ禍におけるニーズにも対応しています。

NECは大阪・関西万博でも、顔認証システムを導入する予定です。顔認証を活用した決済サービスを提供し、会場の店舗ではスマートフォンやカードを使用しない手軽な決済を実現します

本システムの登録者数は、NECの国内における顔認証提供事例として最大規模となる120万IDを想定しており、電子マネーと顔認証が紐づく決済運用事例としては、国内最大規模となるとのことです
出典:EXPO 2025 デジタルウォレット  https://expo2025-wallet.com/

日本の最先端技術として、生体認証が世界のスタンダードになるか!?

日立製作所とNECは、それぞれ異なる生体認証技術を専門としながらも、ともに日本のセキュリティ技術を世界に発信しています。大阪・関西万博では、これらの生体認証技術が融合することで、来場者にスムーズで安全な体験を提供することが期待されています。両社は競合というよりも、日本全体の技術力を高めるパートナーとして協力関係を築いています。

2025年の大阪・関西万博で導入される生体認証技術は、日立製作所とNECの長年の研究と努力の結晶です。指静脈認証と顔認証という異なるアプローチながらも、共通の目標である「安全・安心な社会の実現」に向けて両社は歩み続けています。

今後、日本の最先端技術として、生体認証が世界のスタンダードとなる日も近いでしょう。大阪・関西万博での実用化を皮切りに、生体認証がどのように私たちの生活を変えていくのか、非常に楽しみです。
出典:NEC マルチモーダル生体認証  https://jpn.nec.com/biometrics/multimodal/index.html

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