【事例公開】「生成AI」をいかに現場で活用し浸透できるか 「NexTech Week 2024」イベントレポート【後編】
2024/7/17
生成AIの話題が目まぐるしく世界を駆け巡り、技術の進歩が報じられるなか、その最新情報を届けるべく、「人、企業、世界の『未来』を変革するソリューションとの出会いの場」を掲げる「NexTech Week 2024」が、2024年5月22日から24日に開催されました。今回は、本イベントのなかから、Michikusa株式会社 代表取締役 臼井 拓水氏が登壇した「徹底解説、生成AIの現場活用術|Copilotの今」と、パーソルホールディングス株式会社 グループデジタル変革推進本部 本部長 朝比奈 ゆり子氏が登壇した「エンタープライズ企業の常識を超える。『共創型』の生成AI導入とは」をレポートします。臼井氏は、日本ではまだ語られる機会が少ないという、Microsoft社のAIツール「Copilot」の活用方法を語り、デジタル上で情報を一元管理するために「Notion」の利用を推奨します。朝比奈氏は、パーソルホールディングス独自の社内GPTを開発し、グループ会社全体で浸透できた経緯を振り返りながら、同じく社内で生成AIを活用しようとしているリーダーたちにメッセージを送りました。
Microsoft Copilotの実力
Copilotには、対話型の「Microsoft Copilot」や、チャットボットを作ることができる「Microsoft Copilot Studio」など、複数の種類があります。そのなかでも今回、臼井氏が業務効率化に活用できると紹介した製品が、ワードやエクセル、パワーポイントなどと連携できる「Microsoft Copilot for Microsoft 365」です。具体的な活用方法として、ワードで作成した文章からパワーポイントのスライド資料を自動で作成できることを実演しました。スライド資料の体裁を指定しておけば、それを反映した資料を作成することも可能です。もちろん、手直しが不要な完璧な資料を作成できるわけではありませんが、臼井氏は「社内向けの資料など、そもそも完璧な資料を作る必要がない機会も多いと思う。そのような際にCopilotを使えば、サクッと資料を作ることができます」と語りました。このように、「Microsoft Copilot for Microsoft 365」は、各Microsoft製品と連携し、業務上で活用することに特化しているため、プロンプトを考える必要がある対話型サービスと比べ、わかりやすく使いやすい仕様になっていることもメリットだと強調しました。
Notionなどを活用し、デジタル上で情報の一元管理をする仕組みが重要
パーソルホールディングス、社内GPT活用および浸透の裏側
7月には、「PERSOL Chat Assistant」のプロトタイプを、テクノロジー部門のみならず、グループの法務・コンプライアンス、情報管理部門へと提供します。そして8月、「ガバナンス/ルール」をアップデートし、一般社員向けだけでなく、「企画者向け」など対象者を絞ったバージョンを作成しました。こうすることで、具体的に業務への活用に対応できるようにしたとのことです。また、「PERSOL Chat Assistant」に「プロンプトギャラリー」を追加しました。プロンプトギャラリーは、社員が、自ら作成したプロンプトをアップロードし公開したり、公開されているプロンプトをダウンロードし自分で利用できる場です。ここには何の規制も設けられておらず、非常にバラエティに富んだプロンプトが公開されていると言います。こうした場を用意し、社員が盛り上がることで、「共創」が推進されているのです。朝比奈氏は、「今回、現場がワイワイ盛り上がる状態を意識していた」と語りました。そして、同じく8月に、国内グループ会社に正式提供を開始し、10月には国内グループ会社全社への展開が完了します。11月から12月にかけて、研修やイベントを実施し、「PERSOL Chat Assistant」の愛称を「CHASSU」とするなど、社内GPTの活用を推進する施策を進めました。2024年2月には「生成AIパスポート」の団体受験を行い、グループから200名が参加しました。これは、当時の試験の団体受験で最多の参加者だったとのことです。今後は、事業へ「CHASSU」を適用していくことを中心に進めていくと語りました。
最後に朝比奈氏は、同じく生成AIを社内で活用しようとしている人たちに向けて、自社の取り組みを踏まえてポイントを伝えました。まずは、生成AIを活用しないという選択肢は無いため、推進者が自ら学び、活用していくことが大切だと言います。その上で、生成AIを活用するためには、基礎的な知識が必要であり、生成AIのリテラシーを向上することが重要となります。そして、その際には集団で学びあう「コミュニティラーニング」が有効だと明かします。朝比奈氏は、「やらされている」のではなく、「互いに学びあいながら物事を進めていく」という感覚が大切だと強調しました。
臼井 拓水
Michikusa株式会社 代表取締役
国際基督教大学(ICU)在学中、松尾研究所と共同運営のファンド、PKSHA Capitalにてアソシエイトを経験。代表以外の唯一の日本投資チームのメンバーとして、各社代表との投資面談、デューデリジェンスなどに従事。卒業後、AmazonJapanに入社。セラー事業部にて国内最大手の電化製品事業者の売上拡大を担う。入社初年で部門全体1位の営業成績を達成した他、他部署の業務効率化などにも貢献。その後AI受託開発会社の取締役に就任し、唯一の非開発メンバーとしてビジネスサイドを牽引。2023年10月に、AIの研修事業やDX支援を行うMichikusa株式会社を起業。Microsoft Startup Hub採択他、東証プライム上場含む複数企業と業務提携済み。オンライン学習プラットフォームSchooにてAI授業講師、NewsPicksプロピッカー。Instagramフォロワー16.1万人、X3.8万人、Youtube8.9万人(7/12現在)。
朝比奈 ゆり子
パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部 本部長
外資系プロジェクトマネジメントソリューションベンダーにて、製品開発、マーケティング、経理などを幅広く担当。外資系ITセキュリティ会社2社でのコーポレートIT部門長を経て、2014年、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)入社。アルバイトサービスのIT責任者に就任。2018年、パーソルホールディングスへ転籍し、新規事業創造・オープンイノベーション推進を担う新会社パーソルイノベーションの法人設立に従事。2020年、パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 ビジネスITアーキテクト部 部長としてコーポレートIT部門の組織変革を推進。2021年より現職。