CES2020現地レポート② アマゾンVSトヨタVSソニー
2020/1/8
米ラスベガスで開催されている世界最大級の家電・技術見本市CES(Consumer Electronics Show)の開催初日。今回特に注目されているブースがモビリティの未来を想起させた、アマゾン、トヨタ、そしてソニーだ。見どころを、立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏の解説で現地からお届けする。
TOYOTA
ブースではモビリティサービス専用のEV車「e-Palette」が展示されている。2年前のCES2018にて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの年に「e-Palette」を展開するという発表をしていた。その際発表されたのはコンセプトカー止まりだったが、今年の7月にお台場にて社会実装を始める「e-Palette」がそのまま展示されている。
ブース全体は静岡県裾野市にて着工される「コネクティッド・シティ」をイメージした雰囲気になっており、数あるブースの中でも注目を集めている。「コネクティッド・シティ」の名前に込められた意味として、静岡県裾野市から日本中、世界中につなげていくということで、スマートシティのエコシステムを構築しようという大胆なビジョンが感じられた。
Amazon
今までAmazonは、CESではAlexaの発表などを行なってきたが、今回はEV自動車メーカーであるRivianを担いで、Amazonのブースの中で発表していることが画期的な点。Amazonはテクノロジー企業であり、EC小売企業であり、やはりロジスティクス企業である。ロジスティクス企業として自動運転車やEV車に展開するのは既定路線。その一方でAmazonはサステナビリティランキングでは非常に低評価にとどまっていたが、これからは地球環境問題にも会社の芯から取り組むのだという宣言をし、同時にRivianの電気自動車を10万台購入することを発表している。このタイミングでの導入には、地球環境問題に会社として取り組もうという姿勢が現れており、従来のAmazonとは違う姿勢を見せていて、高く評価できるポイントだと思います。
SONY
着目すべきは、ソニーがここまでの電気自動車を作ってきたということが、すでに自動車業界の業界構造が破壊されていることの示唆の一つであるということ。私自身、非常に度肝を抜かれたし、CESの中でも大きく話題になっている。
非常に嬉しいサプライズである一方、プラットフォーマーまでは狙ってないのかなと感じた。今のソニーの収益構造では、最大のセグメントはゲーム、音楽、金融、半導体となっている。スマホのシェアは1%しか取れなかった。どちらかというとデバイスメーカーや音楽、ゲームメーカーになっているのがソニー。電気自動車、モビリティの業界でどのような戦略を取ろうとしているのかを読み解くと、やはりCMOSセンサーなど基幹的な重要部品で収益をあげる、さらにハードのメーカーとして勝負をかけていくのかと思う。
ただ、次世代自動車であるオートノマスやコネクテドやEV車において、一番重要なのはいかにエコシステムやプラットフォームの領域を獲得できるのか。ソニーはスマホでシェアを取れなかっただけに、部品で儲ける、もしくはニッチな一部の消費者に向けたハードメーカーになるということしか、今回のブース展示ではうかがい知れなかった。日本人としては、日本の代表的な会社であるソニーには、プラットフォーマーとして頑張ってほしいと思う。部品やハードだけではなく、ぜひ次世代自動車のOSやプラットフォームの会社まで狙っていただきたい。