紙と印鑑での契約はもう古い!?契約はリモートでもっと早く・安全に。――クラウドサイン

新型コロナウイルス感染症の影響を受けリモートワークが急速に進むなか、旧来型の契約締結に課題を感じる企業が増えている。例えばIT業界大手の株式会社メルカリやLINE株式会社は印鑑を撤廃し、代わりに電子契約サービス「クラウドサイン」を利用すると発表し大きな話題となった。

クラウドサインを使えば、法律上問題なく契約作業をオンラインで完結させることが可能となる。契約業務のデジタル化は今後どのように進むのか。サービスを運営する弁護士ドットコム株式会社でクラウドサイン事業の責任者を務める橘 大地さんに話を伺った。

安全・円滑な契約実現のサポートを

―まず「クラウドサイン」の概要を教えてください。

クラウドサインは契約書・発注書などの重要書類の作成から署名まで、一連の契約業務をオンラインで完結できるサービスです。お客さまは書類作成後、取引先に確認依頼の連絡をクラウドサイン上で行います。取引先側は、メールで届いた書類に署名をし、最後に社名など必要な情報を打ち込むことで押印ができ、契約締結作業が完了します。契約書の受信側は、クラウドサインのアカウントを持っている必要はありません。
送受信のフロー

送受信のフロー

契約同意画面

契約同意画面

クラウドサインは2015年の10月にリリースしたサービスですが、現時点で8万社以上に導入頂いています。電子署名サービスは、国内外で複数のサービスがありますが、クラウドサインは現在、日本において80%以上のシェアを獲得しています。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、企業では在宅ワークが普及しました。これにより、3月は同年同月比で新規導入企業が1.7倍となりました。幅広い業界の会社さまにご利用頂いており、使い方も多様です。すべての契約書にご活用いただく場合もあれば、アルバイト契約書など一部の業務に特化してスモールスタートし、段階的に広げて活用頂くケースもあります。

お客さまの安全で円滑な契約締結をサポートするのが、クラウドサインの使命だと考えています。

―お客さまから評価されているポイントを具体的に教えてください。

大きく2つあります。一つはコスト削減に繋がること。もう一つは業務効率化に繋がることです。

コスト削減については、元々契約締結において必要だった印紙代や郵送代を節約することができるため、その点にメリットを感じるお客さまが多いです。

業務効率化については、書類作成から、作成した契約書の進捗管理まで全てを一貫して行える点を評価いただいています。また、書類の一括送信機能など、用途に合わせて細かい機能を実装している点も業務の効率化、ひいては契約締結完了までのリードタイムの短縮につながっていると思っています。

最近は、新型コロナウイルスの影響で業務をリモート化したいお客さまからのお問い合わせが増えていますが、我々としては遠隔対応機能にこだわっているわけではありません。あくまでもゴールは、安全で円滑な契約業務のサポートで、リモート対応はその手段にすぎないと思っています。オフィスでも在宅でも、同様の結果が得られるからです。

対面契約の方がスムーズなシーンもあると考えており「クラウドサインNOW」という対面契約を補助するサービスも展開しています。想定しているのはスポーツジムの申し込みやクレジットカードの発行など、その場で申込用紙に変わってタブレット端末に書けば手続きが完了する契約です。お客さまにとっては、メールアドレスの登録もしていない段階で、わざわざPCやスマホにて必要情報を打ち込むのはかえって不便だと思います。

他にも、契約業務にまつわる様々なサービスを展開しています。たとえば、営業担当者の申込書の回収をサポートする機能。これは株式会社テラスカイ様が提供している業務効率化ツールで、Salesforceとも連携する機能として開発しました。

電子契約に切り替えやすい領域から始める

―クラウドサイン立ち上げの経緯を教えてください。

きっかけになったのは過去の体験でした。

私は元々、企業法務専門の弁護士として契約交渉などを行っていました。そこで課題に感じていたのは、双方の当事者が契約内容に合意しているにも関わらず、正式に契約するには相当な時間を費やしてしまうことでした。長い時間をかけて双方の当事者間で契約内容の交渉を完了させ、いよいよ契約締結となったとき、そこからさらに時間がかかることを課題に感じていたのです。海外の取引先だった場合、原本を送付し送り返してもらい、また別の場所に送付する、という作業だけで一か月近くかかるケースもありました。

契約が1ヶ月伸びれば、着金も1ヶ月伸びます。締結するためだけに時間が奪われ、企業として競争力を落としてしまうことは、社会全体で見ても課題だと感じました。そこで、弁護士ドットコム株式会社の新規事業としてクラウドサインをスタートさせたんです。

サービスリリース当初は、IT企業を中心にご利用いただき、徐々に金融機関や不動産会社など、幅広い大手企業様にご利用いただけるようになっていきました。

―サービス立ち上げ後、苦労した点があれば教えてください。

日本では電子契約に馴染みがなかったので、まずはその認知度を上げるのに苦労しました。テレビCMなどマス向けの広告・PR活動に力を入れました。電子契約は契約書作成側のみならず、締結先からもその手法を承認してもらわなければなりません。いくら便利でも、電子契約に抵抗がある企業が多いうちは、サービスが広がりませんでした。

最初は極端な話、100社に営業をかけても9割近くの企業には断られるような状況でした。そのため、まずは使いやすい領域からご活用いただくことにしました。たとえば、他社を巻き込まない雇用契約や業務委託発注書など、自社内で活用いただくケースです。IT企業を中心に利用社数が徐々に増えていった後、ようやく会社間での電子契約にクラウドサインを使っていただけるようになりました。

電子契約への認知が進むに連れ、この領域が盛り上がってきました。今のところ、他の電子契約サービスには外資系の会社やスタートアップ企業がいます。これに対しては、我々だからこそ提案できる機能で差別化を図っています。具体的には、日本の商習慣に基づき、法律や業務フローの設計に精通しているところが弊社の強みだと捉えています。印鑑が必要だった業務フローから、どのように変えていくのかのご提案も含めて、サービスだと考えています。今後も我々の強みを活かし、より良いサービスづくりを行っていきたいです。

トレンドで終わらせず、より良い社会実現のきっかけに

―新型コロナウイルス感染症がサービスの展開に与えた影響はありますか?

導入をご検討いただく企業さまが圧倒的に増えました。

これまでサービスを導入いただく企業さまは、デジタルに対してある程度リテラシーが高いIT業界のお客さまが多かったですが、最近は大企業がすごく増えてきています。野村證券さまや三井住友銀行さまなど歴史ある会社さまの導入も増えました。

電子契約自体に興味を持つ大企業はこれまでも多かったのですが、導入の検討に慎重になっていました。それが最近になって、必要に差し迫られていることもあり、短い検討期間で導入する企業さまが増えました。これまで1年かかっていた検討期間が、極端な例では数日にまで短縮されました。

導入が進みやすいのは、影響範囲の少ない、社内で完結する契約業務の領域です。また、すでにデジタル化が進んでいる企業さまには積極的に導入いただいており、逆に、高齢者を対象としたビジネスや、未だにFAXなどアナログな文化が残る業界などは導入が遅い傾向があります。とはいえ、銀行さまなど、過去の判例を重視する傾向のあるお客さまにも導入いただけるようになり、それなら我が社も、とお問い合わせいただくケースが増えました。

最近爆発的に問い合わせが増えたのは事実ですが、この流れを一時的なトレンドにしてはいけないと考えています。興味を持っていただけている状況をチャンスと捉え、より良い社会を実現するためのきっかけとして活かしたいです。

利用社数を増やしつつ、新たな機能実装へ

―最後に、今後の展望を教えてください。

直近では、印鑑が不要なので出社をせずに契約締結ができたり、どのような環境下においても事業活動が継続できるというポイントをご理解いただき、サービス導入企業を増やしたいです。同時に、過去の契約書を一括管理できる点も訴求し、さらに幅広い領域の企業様に活用いただきたいと考えています。国民的に普及を目指すという意味で、例えば100万社ぐらいの規模での浸透を長期的な目標にし、全国に弊社サービスや、電子契約そのものを浸透させていきたいです。

その先は、新たな機能を実装し、今より広い範囲の業務のデジタルシフトをサポートしていきたいです。例えば、指紋や顔認証技術を利用しての契約締結サービスなど、最新のITを駆使した構想もあります。スピーディーなサービス開発を進めるためにも、技術力のあるパートナーとの提携など、他社とのアライアンスを進めていきたいです。

これからも、より安全に、より円滑な契約業務を目指して、サポートができればと考えています。
クラウドサインの詳細はこちら https://www.cloudsign.jp/

Article Tags

Special Features

連載特集
See More