クラウドサインとは
クラウドサインは電子契約サービスの名称で、電子契約の市場ではシェア8割以上にのぼるサービスです。書類の作成・送付、契約締結がクラウド上で完結するので、印鑑を押すために出社したり、取引先へ出向くということもありません。紙の契約で発生していた郵送でのやりとりや倉庫管理などの手間もなくなり、印刷紙にかかるコストもなくなるので大幅に生産性を上げることができるので、今注目を集めています。
クラウドサインで可能なこと
クラウドサインの電子契約書は、契約締結までの作業が最短数分で完結します。従来の紙での契約書で要する時間と比較すると、大幅に時間を短縮できます。従来の方法では契約を締結する場合、契約書の印刷、郵送、相手の受理、押印、返送…と非常に長い時間が必要でした。相手の都合によっては遠方まで出向かなければならず、数週間かかることもありました。クラウドサインを利用した電子契約書なら、送信と同時に相手に確認してもらうことができます。スマートフォンでも契約書の確認ができるため、外出が多い担当者でも速やかに対応できます。
クラウドサインの特徴① セキュリティ体制
契約書をデジタル化することで、内容を改ざんされてしまうのではと不安の声もあります。しかしクラウドサインは日本最大級の弁護士検索・法律相談ポータルサイト"弁護士ドットコム"が運営していることもあり、不測の事態にも対応できる万全のセキュリティ体制が整っています。クラウドサインの機能のひとつであるタイムスタンプはその代表的な例で、電子契約書の正確性を確固たるものにしました。
クラウドサインの特徴② 充実した連携機能
クラウドサインには無料のプラン、スタンダードプラン、ビジネスプランの3つがあります。スタンダードプラン以上で契約すると、kintone・Slack・Hubble、更にSalesforceとの連携が可能です。Slackを利用した場合は、送った契約書類の状況を確認することができます。締結されたのか却下されたのかなどが通知される仕組みになっています。また、SalesforceとAPI連携を行うと、蓄積された顧客情報を元に契約をSalesforce上で行えます。顧客情報と契約業務の進捗状況が同時に可視化できるので、管理の手間や作業に要する時間が短縮され生産性が大幅に改善されます。
クラウドサインの特徴③ 相手側の面倒が少ない
クラウドサインは、契約書を送付された相手側の作業もとても簡単です。メールで届いたリンクをクリックして契約書を確認し、署名することで契約締結できます。そのため相手側にアカウント登録やクラウドサインとの契約の必要がなく、費用もかかりません。また契約書をPDFで保管しているので、普段は紙の書類を使っている会社でどうしても紙の契約書がないと困るという場合には印刷すればよいですし、印影がある紙の契約書をPDF化することで電子保管もできるので非常に便利です。
クラウドサインの特徴④ チャットサポートの迅速対応
さらに、クラウドサインはチャットサポートが充実しています。管理画面の右下のアイコンからサポートへチャットで問合せができます。ホームページ上では、通常数時間以内に返信されると記載がありますが、実際には数分で返ってくることも多いようです。急いで契約書を作成して取引先へ送付しなければならないがわからないことがあるとき、ビジネスにとっては回答が早ければ早いほどありがたいでしょう。チャットサポートはメールでの問い合わせというよりもLINEに近い感覚なので、小さな疑問でも気軽に問い合わせることができます。
クラウドサインの料金プラン
便利な特徴をご紹介したところで、実際にかかる費用についてご説明します。先ほどもご説明した通り、クラウドサインには3つのプランがあります。1つ目はフリープランで、契約書の送信、保管、検索の基本的な動作のみが可能です。1か月間に5件までの利用となります。次は基本的な機能を備えたスタンダードプラン(\10,000/月)で、多くの会社はこのプランで十分役に立つでしょう。ビジネスプラン(\100,000/月)は、アカウント登録やIPアドレス制限がかけられるため、高度なセキュリティ・リスク管理機能を求める会社におすすめです。
使い方①:契約書類の準備
次に実際にクラウドサインの使用方法を見ていきましょう。まずは契約書類作成する必要があります。テンプレートを使用して作成する方法と、PDFをアップロードする方法があります。公式テンプレートも用意されていて、業務委託契約書や秘密保持契約書、委任契約など、事業でよく使うものが用意されています。テンプレートを使用する場合、内容を確認した上で自社と契約先が入力する箇所を設定していきます。初期設定は「全て自分が記入する」という状態になっていますが、相手の名前や住所、法人名などは取引先に依頼するよう設定を変更することをおすすめします。
使い方②:送付順の設定
契約書類の作成が終わったら、次に送付先を設定します。送付先は複数設定することができ、また確認の順番も決めることができます。いきなりクライアントに送付するとミスやトラブルの原因となる可能性が高いです。まずは社内の法務担当者や上長に目を通してもらい修正や追記の必要がないか確認しましょう。複数担当を経由したあとにクライアントに送付する、といった設定もこの段階で可能です。
使い方③:入力項目の設定
次は入力項目の設定です。委託者と受領者の企業名や、契約する業務の内容などを入力できます。ドラッグアンドドロップなどの感覚的な操作で入力・設定を行うことができます。テンプレートを使用すればまっさらな状態から作成する必要がないので、必要な項目を入れるのを忘れてしまったりすることがなく、作業時間も大幅に削減できます。
使い方④:契約書類の送信
入力項目の設定が終わったら、確認してもらう上司や担当者、そして取引先の担当者のメールアドレスを確認して入力後「送信する」ボタンを押して送付完了です。クラウドサイン上でメールを送付できるので、紙の書類の時のようにメールアプリを開いて文章を作成し、紙の書類をスキャンしたPDFファイル添付して送信する等の一連の手間はすべて不要です。
使い方⑤:契約書類の受信、契約書類の確認・同意
契約書類を受信したクライアント側は、[support@cloudsign.jp]から確認依頼のメールを受け取ります。送付先がクラウドサインを利用していなくてもメールを受信し、書類確認をすることができます。相手が契約書類の内容を確認し必要事項も記入した上で「書類の内容に同意」というボタンを押せば契約完了です。記入した内容が契約書に反映され、PDFデータがメールにて返送されます。送付元はクラウドサイン上で締結済の契約書としていつでも確認できます。
クラウドサインを利用するメリット
クラウドサインを利用すると、契約コストとして直接的な印紙代の削減と、郵送などにかかる時間を含める契約に関連する業務コストの大幅な削減が見込めます。また契約業務の効率化、セキュリティを強化することが可能です。そして忘れがちな部分ですが、契約は交わした後に契約書を7-10年ほど保管しておくよう法律で定められています。紙の契約書のように鍵付きのロッカーに入れて保管する必要もないのです。具体的なメリットとして以下の点を少し詳細に挙げていきましょう。
メリット1・印紙税が不要
書面での契約を行う場合、印紙税法で印紙税の対象は課税文書とされています。現時点では電子データは課税文書にあたらないとされ、印紙の貼付は必要とされません。ただ、デメリットの項目でのちほど説明しますが、クラウドサインは1つの契約書を送付する場合に200円の送付代が発生するため、もし毎月大量に契約書を発行する企業の場合は印紙税のコストを考えるとそこまで大きな削減にはつながらない可能性もでてきます。
メリット2・書類の持参・郵送、保管コスト削減
紙の書類を扱う場合、印刷・製本の手間やコストのほか、取引先へ契約書を持参する交通費・送付する場合の郵送費がかかります。また紙の契約書を保管する場合、鍵付きのキャビネットに入れ台帳で管理したり、専用倉庫に保管する費用がかかります。電子契約ではこれが一切必要ないため、ファイル代や保管用の部屋・場所のコスト削減、また本来保管用のキャビネットを置く場所に他の物を配置できるなどのメリットがあります。
メリット3・契約書の一元管理ができる
クラウドサインでは、利用を開始してからクラウド上で契約した書類だけではなく過去に締結した書面の契約書をインポートすることができます。そのため契約書の一元管理が可能となります。過去の契約書を探したい場合に台帳を見て探す必要がなく、管理画面に打ち込んで検索することができるため探す時間も短縮できますし、定期的に保管場所を整理したりデータを見直すこともしなくてよいので、業務の生産性向上にもつながります。
セキュリティ強化にも効果を発揮
クラウドサインでは、紙の契約書に比べると保管時の紛失・盗難などのセキュリティ・リスクが低い傾向にあります。紙の契約書の場合、災害・盗難など物理的に契約書を紛失するリスクは高く、中小企業では金庫に現金や契約書を置いていたら従業員が持ち逃げしてしまった、という事象もあります。電子契約の場合は、管理画面内での保管が可能なため場所も取らず物理的な紛失リスクもありません。パソコンを無くしたとしてもIDとパスワードを覚えていればスマホからでも閲覧・確認することができます。
契約書データの自動バックアップ
クラウドサインは強固なセキュリティを保持しています。まず一つ目は、契約書のデータを暗号化して保管することで第3者からの契約書のデータ読み取りを防止しています。さらに契約書データが自動でバックアップされており、不測の災害が起こった際にも複数の施設において複数のデバイスを用いて自動でバックアップを行っているため、データ損失の心配もありません。
不正アクセス防止
外部からの不正なアクセスを防止するため、クラウドサインでは閲覧・確認の都度にユニークURLを発行しています。これは1秒間に1億回ランダムなURLを作成しアクセスを試みた場合でもアクセスすることはできないものです。より強固なセキュリティにするため、アクセスコード(パスワード)を別途設定することも可能です。さらに、外部のネットワークからの不正アクセスや攻撃からデータを守るために、ファイアウォールによって機密情報をインターネットから隔離して保管しています。
アカウント保護・防止、IP制限
最後に、契約したアカウントのパスワード設定時にパスワード強度のチェックを行っているほか、パスワード認証に加えてスマートフォンアプリで発行されるワンタイムパスワードを用いた2要素認証を設定できます。またビジネスプランのみとなりますが、特定のIPアドレスのみクラウドサインへのアクセスを許可することが可能です(複数IPアドレス設定可能)。IP制限を設定することにより、外部からのアクセスを遮断し、第三者による不正利用を防ぐことができます。
クラウドサインのデメリット・注意点
ここまではクラウドサインの特徴やメリットについてご紹介してきましたが、導入を検討する場合にはデメリットや注意点を把握しておく必要もあります。料金体系や実際に使用したことのある企業が感じていることや、使用する場合に注意が必要な点をご紹介していきます。
デメリット1 使用料金について
無料プランの場合、契約書を送付できる数に上限があるためそれ以上を送ろうとすると追加で料金が発生することと、一つのアドレスで複数名が利用することができないので利用する人数が増えるとその分料金がかかります。スタンダード以上のプランでは、契約書を1通送付する際に200円の送付料金が発生するため、間違って送付してしまった場合や、修正・追記が発生し再送するごとに料金がかかってしまうので、コストがかさむというマイナス部分もあります。契約書を発行する前に、別途メールなどで事前に確認すれば防げるかもしれません。
デメリット2 書類のインポートがPDFのみ
クラウドサインでは、締結書類のインポートはPDFのみ対応しています。ワードやエクセルで作成したデータは1度PDFに変換しなければなりません。この理由としては、契約内容の改ざんができないようPDFで送付されているのです。しかし、もしPDFをクライアントへ送付して追記や修正箇所が出てしまった場合、原本をもう一度修正し、PDFへ変換、再度クラウドサインの管理画面上へアップロードして送信する必要があります。この場合は2回送信したことにカウントされますので、その分コストもかかってしまいます。
デメリット3 登録した書類のフォルダ分けができない
クラウドサインではプロジェクトや部署ごとにフォルダを作成して閲覧権限を割り振る、という操作ができません。もし自身の会社に事業部が複数ある場合、自分たちの部署のみが閲覧できるわけではないので、他部署に余計な情報が見られてしまう可能性がでてきてしまいます。さらに、「管理者を通さないと送信できない」などのワークフローを設定する機能は月10万円のビジネスプランでしか使えないので注意が必要です。
他社との比較も重要
このように国内シェアナンバー1のクラウドサインも、利用者が望むすべての機能を備えているというわけではないようです。企業やユーザーが求める機能に合ったサービスを選択することが重要になってくるでしょう。最近はクラウドサインと似たサービスで、先程の注意点をクリアしている「NINJA SIGN」というもサービスも注目を集めています。文書の編集にグーグルドックスを採用しているため、ワードそのままをテンプレートとしてインポートでき、PDFに変換する必要がありません。また定額制なのでそれに伴うコストもありません。企業が求める条件に合わせて、機能面やセキュリティ面も含めてさまざまなサービスを検討する必要がありそうです。