DX戦略

日本のデジタル庁は、スタートアップのようにスピーディーに改革を進める覚悟があるか。 菅首相の側近中の側近、内閣府副大臣藤井氏にGAFA研究の第一人者田中道昭教授が切り込む。

2020年9月16日、第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉首相は就任後初の記者会⾒で「デジタル庁」創設を明⾔しました。アメリカや中国と比べ、デジタル化が遅れている日本が、今後どのように諸外国へ追いつき、追い越していくのか。全3回にわたり、内閣府副大臣である藤井 比早之氏と立教大学ビジネススクール 田中道昭教授の対談形式でお届けします。

後編は、「Government as a Startup」というスローガンを掲げる菅内閣デジタル庁が、どのように改革を進めていくのか、特に自動運転というテーマについて、次世代自動車産業の研究者でもある田中道昭教授からの提言を交えて迫ります。

前編はこちらから
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*本稿は対談の要旨であり、実際の対談内容は動画をご覧ください。

日本のデジタル庁は、スタートアップのようにスピーディーに改革を進める覚悟があるか。菅首相の側近中の側近、内閣府副大臣藤井氏にGAFA研究の第一人者田中道昭教授が切り込む。

脱お役所体質。「Government as a Startup」でデジタル庁はスタートアップを目指す。

田中:政府からの発表は「2025年、5年後に」などが多いですが、テクノロジーの世界におけるリーンスタートアップやアジャイルの特徴として、大胆なビジョンを策定した後では、「まずはやってみる」というものがあります。5年後とおっしゃらず、2〜3年後は難しいでしょうか。

藤井:日本全体としてやるということなんで。例えばデジタルのシステムを全部一緒にするのはすごく時間がかかります。そういうところを含めてやれるところからやると。システムが大きければ大きいほどチェンジするのは難しいですから。そこは技術で乗り越えていかなくてはいけないんですけれども。完璧なものを最初に求めるわけではなく、スタートアップでまさしくできるところから一つ一つ、小さなことからコツコツと、小さくないですけど本当は(笑)。進めていくことが大事だと思います。一刻も早く、そのスピード感が求められていますので、この現菅内閣においては。そのスピードアップをしっかりと進めて参りたいと思います。

田中:そのスピーディーさの代表格が副大臣でいらっしゃると思います。そう言う意味では、デジタル庁自体が「Government as a Startup」というスローガンを掲げており驚きました。平井大臣の命名かもしれませんが、デジタル庁創設のスローガンにかける想いを、みなさんにお聞かせいただければと思います。

藤井:はい。略してGASU(ガースー)です(笑)。    
   
どうしても日本の行政っていうのは完璧なものを作って、それでやろうとするわけなんですけれども、いわゆるスタートアップというのは、とにかくできるところから早くやると、そういう思いがあると。

もう一つはデジタル庁自体が新たな省庁として新しくできたものになる、そこからどんどん広がっていくよと。いわゆる最初にできたベンチャー企業のような形でやっていく、という思いが込められていると思います。

ただ、最初にできたものが最終形ではなく、どんどん育っていく。そこに多くの人材が集まってくることが必要だと思います。システムエンジニアの方やセキュリティの対応の方など様々な知見を必要としています。今はとにかく法律を作るということで、法制の専門家が集まっていますけれども、新しく立ち上がったベンチャー省庁に多くの方々が集まって、国、地方にも通じたデジタル基盤を築いていくというところを進めて参りたいと思っています。

毎日が設立の日、「DAY1 カルチャー」を体現する覚悟が菅政権にあるか。

田中:「Government as a Startup」には本当にいろんな意味が込められているでしょうし、やはり言葉はいい意味でも悪い意味でも、できたら独り歩きしていきます。スタートアップと言うと私が一番想起されるのは、Amazonの「DAY1カルチャー」です。ご存知の通りAmazonのジェフ・ベゾスは、GAFAなど色々な競争が起きる中で、いかに継続的にイノベーションを生み出せるかが最も重要だと考えており、イノベーションを生み出すために一番彼が重要だと思っているのがDAY1です。

DAY1は「今日が初日」、「今日が設立の日」という意味ですが、どのくらいこだわっているかというと、97年の上場の時の株主レターの中では、上場したにも関わらず、DAY1「今日が初日」と書かれていました。その株主レターを、毎年のアニュアルレポートに添付したり、自分のデスクがあるビルにはDAY1と付けていたりします。今日が社員総会だとすると必ず言うし、毎日何回何十回でもDAY1と言い続けることができる経営者がベゾスCEO。

それはもう一重に、今日生まれたばかりのスタートアップのような、フレッシュでスピーディーで謙虚な企業DNAじゃないとイノベーションなんて生み出せっこないのがわかっているので、あれだけの大企業がそこにこだわっているんです。

そういう意味では、デジタル庁のメンバー自身、あるいは政府、官僚、それに携わる日本企業も、やっぱりDAY1カルチャーに刷新していかなければいけない。そもそもそれが必要条件だと思っているのですが、いかがでしょうか。官僚主義とか大企業病を打ち破って、DAY1カルチャーに刷新していく覚悟はお持ちですか?

藤井:それはものすごく大切です。その覚悟を持たねば。DAY1ですよね。今回法案準備室を作った時に、私はもう逆に見ていて羨ましかったんですけれども、本当にいきなり56人が集まり、皆さん向いている方向が一緒なんですよね。

田中:向いている方向が一緒。どこを向いているのですか。

藤井:要するに、スタートアップで日本のデジタル化を進めましょうと。実は私も、同じような準備室で法案を進めたことがありますが、たとえば地方分権一括法案室には、地方分権を進めようとする人とこれは国でやった方がよいという人が一緒の部屋にいました。それで省庁再編、それぞれ全部全省庁思惑が違っていて、という部屋でした。で郵政民営化、もうこれ以上は言えません。

そういった中において、今回は経済産業省であったり総務省であったり元々IT戦略室があったり、また、厚生労働省やそれぞれ各省庁の方々が来られていて。それぞれの思いは本当にデジタル化ってことで一緒なんですよね。

まさしくおっしゃった通り、どうしてもですね、お役所っていうのは前例主義になるんです。これは河野大臣、総理がそもそもおっしゃっている前例打破になるんですけれども、やっぱり新しく築き上げるっていうのはすごく、これほど楽しいことはないんじゃないかなとは思います。

田中:そういう意味では、今回一同に会した時に皆同じ方向を向いていた。スタートアップだった。今までと何が違うのでしょうか。

藤井:それは、政権の決意だと思うんです。でなければいきなり不要な押印の見直しが99%にいくことはありません。今までそれが何かの理由で反対されていたのだと思うんです。ずっと規制改革とか行政改革は続けてきましたから。それが、意識が変わったというか菅総理になられて、いやもう本気だというのが皆さんに伝わっているからこそ、やらねばということになっていると思うんです。この機を逃しては、もう周回遅れに遅れた日本のデジタル化はできないという風に思いますので。

田中:本当にその通りですよね。そういう意味では、今週平井大臣とお話させていただいた時に強調させていただいたのは、とにかく「Government as a Startup」「スタートアップ」「DAY1」を言い続けてくださいと。 Amazon のジェフ・ベゾスも結局DAY1だ、DAY1だと1日何十回も言っていて、それでようやくというところです。仕組みももちろん必要ですが、やはりトップが言い続けること。それと合わせて、DAY1、スタートアップ、スピーディーなカルチャーを根付かせる仕組みの両方が必要という話をさせていただきました。

藤井副大臣がいかに、1日何十回でも「Government as a Startupだ」「DAY1だ」と言い続けられるか、DNAから刷新していけるかというところだと思いますが、本当に覚悟はお持ちですか?

藤井:覚悟は持っています。毎日、もう動いているというのが皮膚感覚としてあるんです。毎日こういう議論をして、ここ変えようと、ここも変えようと新しく築き上げています。ある意味では、もう本当に白地で作り上げていくっていうことが、改めて必要ですね。今までこうしていたからっていうことじゃなくて、改めて今この制度って何のためにあるんだろうと。原点として国民お一人一人の目線でもういっぺん見つめ直して、これは必要なんだろうかっていうところからやっていくことが必要なんだと思うんですよ。

それを一つ一つ、本当に素の目で見ていってこうすべきだというのだと思うんですよね。

田中:本当に菅首相もそういうところを含めて、藤井さんを副大臣に任命されたのだと思います。DAY1へのDNAの刷新が生命線ですよね。

藤井:そうですね。そこが生命線なのと、これからの日本の産業を考えた時にAIも本当に遅れていると思うんですよね。5Gも遅れていますし、そしたら次は6Gでは負けないようにするとかですね。

交通が変われば地域が変わる。今の日本で自動運転を一番活用すべきは、ズバリ地方の過疎問題。

藤井:自動運転も、ぼやぼやしていたらっていうことになりますから。日本の自動車産業が完全に古い斜陽産業になってしまっては、もはや日本は取り返しがつかないことになりますから。新しい形で、そういった新規開拓の部分を作っていかないといけないと思うんですね。

田中:そうですね。ちょうど日経新聞の単独取材の記事でも、河野大臣が自動運転をかなりスピードアップして進めていくという話をされていました。今日の藤井副大臣の直前の、デジタルシフトタイムズの経営者対談が、実は日野自動車の下社長でした。下社長はトヨタグループにいらっしゃって、すごく危機感が高い経営者です。

やはり自動運転こそ、国と企業が手を携えてスピードアップしていかなくてはいけないところだと思いますし、そこに色々な地方の社会的課題が解決される鍵があるかと思います。

藤井:ありますね。地方においてスマートシティを作る、まさにその鍵となってくると思います。また、高齢化した社会の中で、これから運転できなくなったらどうしようという高齢者の方に、自動運転を指し示すと。さらに自動車産業自体はものすごく裾野の広い産業ですから、日本の雇用を維持するためにも、お仕事があるような形での自動運転車という世界を作っていかないと。さらに様々な雇用というか産業分野が広がってくると思うんですね。そういったところをしっかりと、もう今こそですね、ずいぶんと遅れてきたので、立ち上がらねばならない、スタートアップせねばならんという時が来ていると。

田中:私は次世代自動車産業も研究の領域で、本も出版しております。自動運転の話がでたので、せっかくなので提言させていただくと、自動運転を日本において一番活用すべきなのは、地方の過疎問題の解決ですよね。

もっとズバリの観点で申し上げると、自動運転について、自動運転ミニバスみたいなものが過疎地に早急に走る必要があります。もともと2020年は、コロナ禍になる前は、世界各国でやはり自動運転、ミニバス元年と言われていました。ちょっと日本もコロナがあり出遅れていますが、ズバリ一番最初に規制改革、行政改革も含めて進めていただきたいのは自動運転です。過疎地の、地方のある特定の地域でもいいのかもしれません。まずはやはり自動運転、ミニバスを走らせるようなことは、当然狙っていただいているところでしょうか。

藤井:それを狙って行かねばならないと思うんですよ。まさしく地方創生の鍵になっていると思うんですよ。とにかく交通弱者と言うか、冒頭で鍛冶屋線が廃線になったという話をしましたけれども、地域の公共交通がなくなれば人は住まなくなるんですよね。もう地域の飲み屋とか全部閉まるわけですよ。

ですから、そういう点を考えますと、やはり一杯ひっかけても家までシュッと帰れるよと、自動運転だよと。これはもう非常にハードル高いです。しかしながらそういった社会を築き上げていかないと。かつそういった形でお一人お一人のプライバシーを守られた車が、いわば電車、バス、タクシーの代わりになるという世界になると。

これで地域が変わってくると思うんですよね。それだったら地域に住もうと。綺麗な空気で、綺麗な水。そして時々野菜作りとか、土いじりしながら、でも職場とか完全に繋がっていてオンラインでしっかり仕事ができる、教育環境もバッチリだと、医療体制も大丈夫だと、そう言った世界を築いていくことが必要なんじゃないかと思います。

今の日本では、AIは未来永劫学習できない? 無秩序でリアルなデータでの実証実験を。

田中:そうですね。先ほどAIというお話が出ましたけど、実は昨年2019年の5月と7月、北京に行った時、私バイドゥの自動運転ミニバスに乗って来ているんです。乗ったからこそわかるのは、やっぱり実際に実証させて走らないと、ビッグデータ×AIで、AIもやっぱり学習しないんですね。

そういう意味では机上の空論ではなくて、非常に難しいのは、まずは実証実験も必要だし、そこも含めてスピードアップが必要ですよね。昨年の段階で、もう既に乗って来ているというところをぜひ意識していただいて、早めに実行していただければと思います。

藤井:そうですね。中国は国家をあげて推進していますからね。AIは使おうと思ったらデータを入れないといけないので、ものすごい人力というかそれを人海戦術でやっていますから、そういう点でももう何周遅れかわからない状況になっていますね。

田中:日本の場合、最近デジタルツインという概念が流行ってきて、リアルでやらなくてもシミュレーションでみたいなことが行われていますけど、やはり両方、実際リアルの世界でやることも重要ですよね。

藤井:リアルの世界はちゃんとしないとですね、私も地元の三木市の緑が丘というところで自動運転実験やっていて、乗らせていただいたんですけれども、通りに出ていく時に信号のあるところだったら信号を確認してそれに従って自動運転するのですけれども、信号がないところだと、次行くかどうかのところで悩むんですよ(笑)。かつ道路の形状って全部違いますから、道路の形状とか周辺の交通の状況とかそういうの全部わかってないといけない。それは本当にいわゆるリアルの世界で入力してないといけないので、結局そういうところでは手動でしないといけない。いつまでたっても出られない。しかも出る時きゅっと止まったりするから、これ大丈夫かと思ったり。


田中:そうですよね。実際乗ってみるとわかりますよね。北京でバイドゥの自動運転ミニバス乗った時に思ったのは、本当に人がすれすれのところで歩いているんです。それで、そんなに減速もしないんですよね。それをみて良し悪しはともかくとして、人がすれすれのところを歩いているというのをAIに学習させないと、いつまでたっても走れるようにならない。でも日本で、人がすれすれを歩いているみたいな実証実験は認められるのかなと。もしかしたら中国で出来上がったものを輸入するしかないのかなと、その時ちょっと思ったりもしたんですけれども。

藤井:中国は多分それを狙っていると思うんです。こう言ったらなんですけど、日本の方って皆さん交通ルールを守られて礼儀正しくされていますが、全く礼儀正しくない無秩序なところでもリアルなデータを入れないと。そのような状況に対応できてこそ本当に安全なんですよ。赤信号にもかかわらず出てくる人間がいるということも含めてAIが学んで、交通安全を前提とした自動運転車を作らないといけません。日本で実験をすると、皆さんルールを守っておられるので、本当の有事に対応できないという可能性もありますから。そのへんも含めてですから、結構大変なんですね。

田中:実際乗ってきた感想としては、そもそも実証実験で日本ではこんなシーンが認めてもらえないから、未来永劫学習できなくて、出来上がったものを輸入せざるをえないか、それとも他に何か方法があるのか、正直中々策がないなと。でもそこも乗り越えていただかなきゃいけないんですよね。

藤井:本来神は細部に宿るじゃないですが、そういう細かいところは日本人が非常に得意とする分野です。一つ一つのオーダーメイド的なところはしっかりと日本国内でできるようにしないといけない。でも本当にそこの人海戦術はすごいですね。全部データを打ち込み、いろんな人に実証実験をやっていただく必要がある。実際人がどんな動きするかを場合わけすると、物凄い数になるんですよね。そういうのもAIに学ばせてやっていますから。AIというのは、あるものをすぐにできるのではなく、実は経験則、経験値を積み上げたものだということもわかっていただかないといけないですね。

ゲームテクノロジーが日本の隠れたポテンシャル

田中:おっしゃる通りですね、やっぱりリアルな世界での実証実験があるかどうかが非常に重要です。一方で、ソフトバンクも資本提携されているNVIDIAという半導体のGPUのトッププレイヤーの会社がありますが、カンファレンスに登壇させていただいて、その時に見せていただいた画像がすごく衝撃的でした。NVIDIAは自動運転の世界で、半導体の領域だけではなくて、ソフトまで手を伸ばしている、自動運転のトッププレイヤーなんです。それでも、徹底的にシミュレーションをされていて、そのシミュレーションの画像を見た時に非常にびっくりしました。

本当にリアルに走行しているのか、それとも映画の世界なのか、ゲームの世界なのか、もはや全く見分けがつかないくらい、いわゆる今日本でいうデジタルツインと言いますか、本当に目の前で映しているようなものがシミュレーションで行われている。リアルな実証実験ともあわせてそこまでリアルにデジタルでシミュレーションをやっているのです。NVIDIAのような会社はそこまでのシミュレーションをやっているんだということも、ぜひ日本企業・政府の人に理解していただく必要があると強く思いましたね。

藤井:そういう点ではすごく勉強になりまして、最終やはりリアルをどれだけ求めるかと、デジタル化でそこでリアルをどれだけ求めるかっていうことが、すごく今勉強になりました。

先ほどゲームのようにと仰いましたが、ゲームは日本が一生懸命頑張っている、進んでいる部分なので、プログラマーの方など、優秀な皆様方になんとかお力を借りてなんとか日本らしい、リアルを追求したデジタル化を進めていかないといけないと思います。

田中:そうですよね。ゲームがキーなんです。なぜNVIDIAがAI用半導体でトッププレイヤーになったかと言うと、元々ゲーム用の半導体であるGPUを作っていて、そこが一番進んでいたわけです。そういう意味では日本も潜在力がありますよね。

お役所サービスと感じさせないくらい、スピーディーで快適なカスタマーエクスペリエンスは実現できるのか?

田中:前編では提言としての例えとしてAmazonのジェフ・ベゾスがデジタル庁長官になったら、という話をしましたが、Amazonの中で最重要の概念がカスタマーエクスペリエンス、顧客の経験価値です。デジタルの世界は、最終的にはユーザビリティとか経験価値、本当にスイスイ使える便利さがないと、結局使ってもらえません。今、Amazonのジェフ・ベゾスの頭の中を覗き込むとしたら、どこまで顧客体験の定義が先鋭化しているかというと、顧客へのサービス提供を「〇〇取引をしていることを感じさせない」くらいスピーディーで快適なものにするというところまで来ていると思うんです。    

具体的に、Amazonの本社の近くにある「Amazon Go」に行くと、例えばこれが欲しいと思ったら、ただ単に握りしめてゲートから立ち去るだけなんですよね。もはや、買い物や支払いをしていることすら感じないくらい、スピーディーでもう快適なわけですね。

これをデジタル庁、デジタルガバメントに置き換えたら、お役所のサービスを受けているというのを、「公共サービスを受けていると感じさせないぐらいスピーディーで快適なカスタマーエクスペリエンス」を目指していただきたいと思います。最後に、カスタマーエクスペリエンスについてはいかがでしょうか。

藤井:それは本当に一番大切だと思うんですよね。この地球上で最も顧客中心主義っていうのは、本当に大切だと思います。あと今お話を伺っていて思ったのは、デジタルって言うと今日本で多くの方が考えられているのが、なんとなく機械的とか、一律とか、画一的とか、そういうイメージになるんですよね。ですからむしろ一律にされるんじゃないかと、それについていけない人間は取り残されるんじゃないかと思われるようなイメージがあるんですよ。

でもそうではなく、むしろデジタル化こそがお一人お一人にとってカスタマイズされて、顧客中心といいますか、お一人お一人の国民の皆様中心の世界ができるようになると。これをもう少し的確に表現する方法を考えた方が本当はいいかもしれないです。

田中:そうですね。そこも含めてPR、プロモーションが大切です。

藤井:なんとなくデジタルって冷たい感じがするんですよ。アナログの方が人と人とのリアルで温かい感じがしますが、実は今おっしゃったように、むしろデジタルの方が、お一人お一人に、温かい社会ができるんですよと。これを実現しないといけないですし、デジタルがそういう言葉なんだというところまで持っていかないといけないと思いますね。

田中:Amazonのジェフ・ベゾスは、人間の本能とか、貪欲っていうところにすごくこだわっています。そこから来るところはやっぱり人にとって自然かどうかっていうところなんですよね。だから行き過ぎたものは使われないし、元々人間の本能的に何が一番自然なのかっていうことを徹底的に考えている。やはりいかに自然であるのかというところを相当こだわっています。おっしゃる通り、実はデジタルと言ってもAmazonみたいなところが目指しているのは、いかに自然なのかっていうところなんです。

今や彼は、さきほどもお話しした通り、「〇〇取引していることを感じさせない」ぐらいスピーディーに、プロセスすらなくなるぐらい自然なところを目指していると思います。

そういう意味で、実はデジタルは、そういう使い方もされているんだということをご理解いただく必要がありますよね。

藤井:そうなんですよね。一周回ってかどうか分かりませんが、自然に戻るんだと。むしろ自然に、国民のお一人お一人中心の世界ができるんだというメッセージが必要だなと、今痛感しております。

自動運転が完全に生活と融合した世界では、子どもが道路で遊べた昔の時代の風景が蘇る。

田中: 自動運転の話が先ほども出ました。私も山梨の田舎出身なんですけれども、自動運転が本当に完全に生活と融合した世界って、小学校時代のうちの前の道路みたいな感じかなと思っています。

うちの前は当時まだ舗装されていない普通の地面の道路があって、車も走ってなかったのでそこでみんなが遊んでいたんですよ。昔の道路はそこに人が集まって子どもが遊ぶ場所でもありました。ところが今は子どもが道路で遊ぶなんて考えられなくて、やっぱり自動車中心ですよね。でも自動運転が本当に完全に統合されて自然に使われるようになると、昔のように多分道路で人が、子どもが遊べるようになる。そこを安全に自動運転車が通る。だから昔のような自然な世界に戻る。そういうところに戻していくために、テクノロジーを活用していくということなのかと思うんですよね。

藤井:自然に戻る、リアルな世界に戻るというのは非常に大切な視点だと思います。そこで地方創生という点でも、地域の良さをさらに活かせれば、これに越したことはありません。

田中:今日は本当に長時間に渡ってありがとうございました。最後にデジタルシフトタイムズとプレジデントオンラインをご覧の読者の方々に、副大臣からメッセージをお願いします。

藤井:今日は田中先生にお声がけいただきまして、このように素晴らしい機会をありがとうございます。プレジデントオンライン、デジタルシフトタイムズの皆さん、本当にありがとうございます。河野大臣と平井大臣の下で、菅内閣の一丁目一番地であるデジタル庁、デジタル改革を含めて、行政の縦割り打破、規制改革・行政改革をしっかりと務めさせていただきます。何よりも国民お一人お一人中心のデジタル化、デジタル改革、そして誰一人取り残さない、やさしい自然に戻るデジタル社会を作るために、しっかりと精進して参りますので、よろしくお願い申し上げます。本日は貴重な機会を本当にありがとうございました。

田中:藤井副大臣、本当に今日はありがとうございました。ぜひ日本の競争力復活のために頑張っていただきたいと思います。微力ながら応援させていただきます。今日はありがとうございました。

藤井:ありがとうございました。

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中国EV市場を席巻する、三大新興メーカーを徹底分析。脅威の中国EVメーカー最新事情・後編【中国デジタル企業最前線】

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中国企業の最新動向から、DXのヒントを探っていく本連載。今回は、ガソリン車に代わるモビリティとして期待が高まるEV(Electric Vehicle=電気自動車)と、その核とも言える自動運転技術で世界をリードする中国の強さに迫ります。前編では「EV先進国」の名を欲しいままにしているその理由を、国の政策や技術の面から探ってきました。後編となる今回は、自動車産業に参入してきた新興メーカー3社を紹介するとともに、日本の立ち位置の考察、中国が抱える課題を話題に進めていきます。

デジタル戦略で生まれ変わるカインズ。ホームセンターからIT小売企業への変遷の軌跡【前編】

デジタル戦略で生まれ変わるカインズ。ホームセンターからIT小売企業への変遷の軌跡【前編】

生産労働人口の減少を受け、日本企業はいよいよ生き残りをかけたデジタル化に取り組まなければいけないと言われるフェーズに入ってきました。とはいえ、それができている企業とそうでない企業との差が激しくなっているのも現状です。 そんななか、ホームセンター大手カインズでは、40年かけて積み重ねてきたホームセンターとしてのあり方を見直し、IT小売企業として生まれ変わろうとしています。カインズでデジタル戦略本部長を務め、戦略の指揮をとる池照 直樹氏に、同社のデジタル戦略についてお話を伺いました。 前編は、カインズがどのようにしてデジタル化を実現させていったのか、具体的な取り組みを交えてお届けします。

Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

Facebookも注目の「メタバース」とは何か? スマホ向けメタバース「REALITY」のDJ RIO氏に聞く

Facebookが社名を変更し、中核事業に据えるほど力を入れる「メタバース」。2021年8月にはグリー株式会社が、今後2~3年で100億円規模の事業投資を行い、グローバルで数億ユーザーを目指すと発表しましたが、その中核を担うのが、グリー株式会社の子会社であり、これまでバーチャルライブ配信アプリを手がけてきたREALITY株式会社です。今回は、そんな同社の代表を務めるDJ RIO氏にインタビュー。そもそもメタバースとは何なのか。なぜこんなにも注目が集まっているのか。メタバースは、世界のあり方をどのように変えるのか。メタバース初心者のビジネスパーソンには必読のインタビューです。