リモートだからできる新しい働き方「ワーケーション」を編集部員が試してみた!

近年、リモートワーク制度の普及から注目度が高まる「ワーケーション」。「ワーク(働く)」と「バケーション(休暇)」を合わせた造語で、リゾート地などに滞在しながら仕事をする新しい働き方を指す言葉です。政府もコロナ禍での観光促進を目的に、ワーケーションの普及を目指す方針を発表しました。

しかし、個人で費用を負担するとなると、長期のワーケーションは現実的には手が出しにくいものです。そんななか、企業などでも社員のワーケーションを支援する目的で、福利厚生として導入する動きが出てきています。

今回は、福利厚生サービスとして提供されているワーケーション施設を編集部のスタッフが訪れ、体験してみました。

そもそもワーケーションとは?

どこで生まれた?

ワーケーションという造語は、実は10年以上前から存在していました。2000年代にはアメリカで使われるようになり、日本には2010年代に入ってきたようです。

アメリカでは、長期休暇を取得する文化がありますが、当然全ての人が同じタイミングで長期休暇を取得しているわけではありません。そのため、休暇中にも会社の重要なミーティングなどには参加するなど要所要所で業務を行う必要があり、バケーション中に一定量の仕事をこなすスタイルが「ワーケーション」という言葉で広まっていったようです。近年では、場所に縛られないノマドな働き方という文脈で語られることも増えてきました。

日本におけるワーケーション

昨今の日本でワーケーションが注目されるようになったのは、コロナ禍においてIT企業を中心にリモート勤務が普及・一般化したことで、場所に依存しない働き方ができるようになってきているためです。その意味では、バケーション中に仕事をするという意味合いよりも、観光地などに拠点を置き仕事をするという意味合いが強いと言えるでしょう。勤務日を含むため、あくまで仕事がメイン。余暇時間に普段都会では味わえないような自然や好きなアクティビティを楽しみやすい点が魅力といえます。

リゾート地がワーケーションに最適?

コロナ渦で脚光浴びるリゾート地

実際、国内ではコロナ禍においてワーケーション需要が生まれてきているようです。コロナ禍で客足が遠のくホテルなどもワーケーションプランを発表していますが、3密を避けるため、よりプライベートな空間を求める消費者心理もあってリゾート地などの別荘に対する関心が高まっているようです。

以下は、別荘専門の不動産物件検索サイト「別荘リゾートネット」を運営している、株式会社リゾートノートが2020年8月に公開したデータです。
コロナ禍で別荘の購入などを検討している消費者からの問い合わせが急増しており、7月の問い合わせ件数は、昨年同月比3.7倍。緊急事態宣言が解除された5月25日以降現地への見学予約も増加しているとのこと。

買わずに借りるバケーションレンタル

一方で、別荘を買わないまでも、遊休不動産となっている別荘の物件(もしくは部屋)などを、宿泊施設として借りるバケーションレンタル(いわゆる貸別荘)も需要が伸びています。

世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤー」によると、民泊の仲介サービスを提供するAirbnb(エアビーアンドビー)とエクスペディア傘下のVrbo(バーボ)では、2020年5月17日の予約件数が208万件となり、3月初旬以降の予約数では、今年最高値を記録。予約数が最も少なかった4月5日との比較では127%増だということです。5月末時点で、9月初旬の予約状況は2019年の水準に近いとも書かれており、世界的にも旅行控えがあるなかで、バケーションレンタルに需要が集中している傾向が見て取れます。

参照:https://www.phocuswire.com/airdna-booking-data-surge

バケーションレンタルの認知がそれほど高まっていない日本においても、今後需要が伸びていくことでしょう。

早速ワーケーションを体験!

東京から近いリゾート地「那須」

さて、そんな状況のなかで、今回、編集部が訪れたのは日本有数のリゾート地「那須」です。

東京と仙台のほぼ中間に位置する観光と農林業が盛んな那須高原(那須町)は、東京から約180kmの距離。皇室の方が静養する御用邸があることから「ロイヤルリゾート那須」として知られています。

今回編集部は新幹線を利用して、現地に向かいました。
東京駅から那須塩原まで、およそ70分。
そこから、車に乗り継いで30分ほどの距離にあるのが、藤和那須リゾート株式会社が管理する那須ハイランドです。
東京ドーム170個分に相当する約800万m2の広大な敷地。総区画数が約5,000にも及びますが、一つの別荘が200~300坪に分けられるほどの広さです。

今回は、藤和那須リゾートが「那須高原 TOWAピュアコテージ(https://www.pure-cottages.jp/)」として提供している貸別荘に宿泊しました。

ゆとりのある貸別荘

宿泊したのは周囲を林に囲まれた平屋の一戸建て。
屋内の施設もホテルとは異なる趣で、ワンランク上の暮らしといった雰囲気です。
冷蔵庫や電子レンジ、食器類など一通りの生活用品は完備。食材や一部日用品を持ち込んでおけば、数週間宿泊する分には困らなさそうです。
洗濯機は置いてありませんでしたが、コインランドリーが付近にありました。
寝室は2つで、合計5つのベッドがありました。
到着したときは、かなり自然に囲まれた場所にあったので、インターネット環境を心配したのですが、もちろんWi-Fiも完備。携帯の電波も届いています。

ということで、早速業務を開始。PCさえあればできる作業しか抱えていなかったため、特段の不都合はありません。オンラインMTGも問題なく行えました。

ワーケーションならではのワークライフバランス

豊富なワークスペース

せっかく自然豊かな施設に来たので、業務の合間を見て場所を変えながら働いてみました。リゾート地ではあるものの、管理会社が運営するカフェなどが至るところにあり、気分を変えるにはもってこいです。

こちらは、レストランに併設されたカフェスペース。テラス席にもWi-fiが届いています。
こちらは、クラフトワークなども体験できるトレーラーハウスのカフェ。少し肌寒くなってきた頃でしたが、焚火の自然な暖かさが何とも心地よく。まさにリゾート気分です。
こちらの施設では、夜にバーベキューもすることができ、今回は一緒にワーケーションへ行った同僚たちと楽しみました。朝夕の時間で、こうしたイベントを体験できる気軽さがワーケーションならではの時間の使い方ではないでしょうか?

休みを作ってレジャーに挑戦

2泊3日しましたが、一部は半休を取り、こんな施設でも遊んでみました。
木々の間を、ロープを伝って渡り歩く空中アスレチック。
なかなか体力を使います。
このほかにも、付近には遊園地「那須ハイランドパーク」などがあり、子連れのファミリーで滞在するにも良さそうです。

いずれの施設も近くにはありますが、移動には車が必要な点が注意です。

ナスコンバレー構想

今回宿泊した「那須高原 TOWAピュアコテージ」は、バケーションレンタル用に一般に貸し出されていますが、10月からは、株式会社デジタルホールディングスのグループ企業である株式会社デジタルシフトと協業し、企業向けに定額料金での宿泊し放題のプランを提供しています。宿泊できるのは日曜日から木曜日まで。金曜日、土曜日や特定の除外日の宿泊は正規料金が発生するものの、それ以外であれば基本的には同料金で宿泊ができるため、福利厚生としての企業導入を期待しているとのことです。

参照:
https://www.digitalshiftsoken.jp/lp/workation/

デジタルシフト社の鉢嶺代表取締役社長は、「リゾートライフの民主化を図るとともに、企業の経営者や従業員を那須の地に呼び込み、互いの交流を促す『ナスコンバレー構想』を推し進めたい」と話しています。

ワーケーションを軸にした新しい企業間交流や地域活性など、ワーケーションによる地方への長期滞在が一般化することで、新しい経済活動が生まれていく可能性もあるでしょう。

ワーケーション普及の可能性は

今回は、2泊3日でワーケーションを実施しましたが、仕事の面でも、生活の面でも短期間であれば問題なく、むしろ快適に過ごせることを、身をもって実感しました。

一方、個人で費用を負担するとなると長期滞在は現実的に難しくなり、いっそ貸別荘を購入してしまうほうが安いかもしれません。今回のように、場所によっては車が必要になるため宿泊費以外の費用も重なってきます。

それだけに、企業としての福利厚生として導入されるなど利用のしやすさの向上に期待です。ナスコンバレー構想のように、単に働きやすい環境があるだけでなく、ワーケーションによって新しいビジネスが生まれるような仕組みが作られていけば、ワーケーションが広まるきっかけになるのではないでしょうか。

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