日経クロストレンド「トレンドマップ 2020夏」が発表 技術分野は「DX」が躍進

株式会社 日経BPは2020年9月3日、マーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が作成した「技術」「マーケティング」「消費」の潮流を見極める「トレンドマップ 2020夏」を発表した。本調査は18年夏、19年冬、19年夏、20年冬に続く5回目、新型コロナウイルスの影響が本格化した20年上半期のトレンド変化を踏まえた初の調査結果となる。

株式会社 日経BPのマーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が発表した「トレンドマップ2020夏」調査が対象とする「技術」「マーケティング」「消費」の3分野は、変化が激しく、様々なバズワードが飛び交う。この中から、中長期的に注目すべきトレンド(潮流)の見極めを目的とし、日経クロストレンドの活動に助言する外部アドバイザリーボード約50人と、編集部の記者など各分野の専門家の知見を集約した。その分析結果は、「現時点での経済インパクト」と「将来性」の2つのスコアでマッピングしている。

前回の20年冬調査と比較し、将来性スコアが最も伸びたキーワードは、技術分野では「ロボティクス」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「人間拡張」、マーケティング分野では「チャットbot」「DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)」、消費分野では「ワーケーション(ワーク×バケーション)」「サブスクリプション消費」となった。

各分野でスコアを伸ばしたキーワード(2020年冬調査との比較)
出典元:プレスリリース
また、今回の調査から新たに下表の6つのキーワードを追加。これらの中で、将来性スコアが比較的高かったのは、技術分野の「コンタクトレス・テクノロジー」「フードテック」、マーケティング分野の「デジタル接客」、消費分野の「Z世代」だった。

新たに追加したキーワードの将来性スコア
出典元:プレスリリース
世界経済に激震をもたらしている新型コロナ禍を受け、今回発表したトレンドマップ2020夏の主なトピックスは以下の通り。なお、最新トレンドマップの全キーワードは、2020年9月3日から全3回にわたり、日経クロストレンドのWebサイトで公開される。

■技術分野は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が躍進

技術分野で将来性スコアを大きく上げ、かつ4.00以上の高スコアを獲得したのは、「ロボティクス」(スコア4.31)、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」(スコア4.41)。DXについては、経済インパクトのスコア(3.62)も大きく伸ばす結果となった。

この新型コロナウイルス禍で注目キーワードとして躍進したDX関連で、最も身近で象徴的な出来事はテレワークの急速な浸透だ。ZoomやGoogleハングアウト、Microsoft Teamsなどのビデオ会議ツールを利用した在宅勤務が、すでに一般的に行われるようになっており、多くの企業が働き方の“新常態”として推進している。また、以前より「人が自宅にいる」ことを前提として、小売りではEC(ネット通販)やZoom接客が、外食ではフードデリバリー、店頭ピックアップサービスなどが脚光を浴びている。いずれも各業界のプレーヤーにDX対応を迫るもので、今後もリアルとデジタルの融合はかつてないスピードと危機感で進むことが予想される。

なお、技術分野の将来性スコア上位には、「AI(人工知能)」(スコア4.69)、「5G(第5世代移動通信システム)」(スコア4.54)、「自動運転」(スコア4.48)が、前回調査と同じく挙がっている。

技術分野のトレンドマップ
出典元:プレスリリース

■マーケティング分野は「デジタル接客」が急浮上

マーケティング分野で注目されたのは、今回新たなキーワードとして追加した「デジタル接客」だ。将来性スコアは「EC(ネット通販)」(スコア4.38)に次いで2番目に高い4.19となった。新型コロナウイルスの感染拡大以降、リアル店舗を持つ多くの企業が長期的な休業を余儀なくされる中で、新たな販路としてECの将来性が見込まれると同時に、リアル店舗のリソースを使いながらオンラインを通じて接客するデジタル接客も注目されている。Zoomなどを活用し、大手企業だけではなく中小の飲食店まで幅広い業種が取り組んでおり、リアル店舗の生き残る道の1つとして将来性が評価された形だ。

もう1つの新キーワード「カスタマーサクセス」も将来性スコアが4.00と高水準となった。カスタマーサクセスとは、自社の製品やサービスを利用する顧客に対して、その利用体験を高めるために企業側が積極的に働きかけるマーケティング活動のこと。サブスクリプションサービス市場の拡大とともに、サブスクビジネスの重要指標である解約率の抑制とLTV(顧客生涯価値)の向上に役立つ手法として、カスタマーサクセスの重要性が増している。

なお、マーケティング分野の将来性スコア上位には、「パーソナライゼーション」(スコア4.09)、「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」(スコア4.03)も、前回調査に続いて挙がっている。

■消費分野は「ワーケーション」に注目集まる

新型コロナウイルス禍で多くの経済活動が停滞する逆風下、消費分野で最も将来性スコアを上げたのは「ワーケーション」(スコア3.32)だった。ワークとバケーションを組み合わせた造語であるワーケーションは、自宅などで仕事を行うテレワークよりもさらに発展した概念。また今回、同様に大きくスコアを上げたのが、多拠点生活を意味する「マルチハビテーション」(スコア3.31)だった。コンサルティング会社D4DR社長の藤元健太郎氏は、新型コロナウイルス禍以前に執筆したリポート『消費トレンド総覧 2030』で、2030年のマルチハビテーション市場規模が約37兆5000億円に達すると予測しており、これが今後大きく上振れする可能性も感じさせる結果だという。

一方、消費分野で象徴的だったのが、前回調査比で将来性スコアを大きく落とした「インバウンド消費」(スコア2.97、0.54ポイントダウン)と、「ナイトタイムエコノミー」(スコア3.00、0.42ポイントダウン)だ。特にインバウンドは、20年4月の訪日外国人数が前年同月比99.9%減の2900人という衝撃の数字を記録。いずれも依然として先行きを見通せない状況にあり、それが今回の結果へストレートに反映された形だ。

なお、消費分野の将来性スコア上位には、「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」(スコア4.33)、「キャッシュレス決済(QRコード決済など)」(スコア4.32)、「サブスクリプション消費」(スコア4.24)が、前回調査と同じく挙がっている。

「トレンドマップ2020夏」の分析手法
調査は2020年7月に実施。編集部が選定した技術26キーワード、マーケティング27キーワード、消費27キーワードそれぞれを認知する人に、そのキーワードの現時点での「経済インパクト」と「将来性」を5段階で尋ねてスコアリング。質問の選択肢は下記の通り。
[経済インパクト]
1.どの企業も収益を得られていない/2.一握りの企業(1~2割程度)の収益に影響している/3.一部の企業(3~5割程度)の収益に影響している/4.大半の企業(6~8割程度)の収益に影響している/5.社会全体になくてはならない存在
[将来性(=企業の収益貢献や社会変革へのインパクト)]
1.将来性は低い/2.将来性はやや低い/3.どちらとも言えない/4.将来性はやや高い/5.将来性は高い]

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