「IT投資動向調査2021」の結果が発表

株式会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、2020年8月から9月にかけて国内企業を対象に実施したIT投資動向調査の一部結果を発表。全調査結果を掲載したレポート『国内IT投資動向調査報告書2021』の販売を開始した。

本調査では、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲の動向の変化に加え、今回の調査では、新型コロナウイルス感染拡大による、売上げへの影響および在宅勤務や緊急対策の取り組み、そしてニューノーマルに向けた企業の戦略・施策と注目されるITソリューションの導入状況などに関して、調査・分析した。調査対象は、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者とし、2,667件の有効回答を得た。

■コロナ禍で減速傾向が続くもリーマンショック時とは異なりIT予算は増加基調を維持

2020年度(2020年4月~2021年3月)のIT予算額は、前年度から「増額」とした企業の割合が36%(2,667社中963社)となり、前年調査時の2020年度予想から微増となった。一方、2020年度に「減額」とした企業の割合は、前年調査時の予想を上回り、2019年度からほぼ倍増し15%に上った。

このIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資インデックス」の動きを見ると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてか、2020年度の実績値は1.93となり、2019年度の2.62から減少したものの、プラスの値、すなわち増加基調を維持しており、リーマンショックの影響を受けてマイナス値となった2009年度とは異なる様相が見て取れた。しかしながら、2015年度以来5年ぶりに2ポイントを下回り、2021年度もプラスは維持するものの、2020年度実績からさらに下降し、IT予算増額の勢いは引き続き減速することが予想される。

<参考資料1> IT投資インデックスの推移(2001~2021年度予想)
出典元:プレスリリース

■DX推進専任部門の設置企業は積極的なIT投資が継続

今回は、前年の調査に続いて、デジタル技術を活用した業務やビジネスの変革である、デジタル変革(デジタル・トランスフォーメーション:DX)の推進部門の設置状況を確認した。DXのための何らかの組織体を有する企業は前年から増えて、7割に迫っている。その内訳は、依然として既存部門が掛け持ちで担当していたり、部門ではなくプロジェクトチーム(タスクフォース)が担当していたりする企業が多数派ではあるが、専任部門を設置している企業の割合も前年から3ポイント増加しており、DXに積極的に取り組もうとする企業の意識が高まっていることがうかがえた。

<参考資料2> デジタル変革の専任部門の設置状況の変化(2019年調査・2020年調査)
出典元:プレスリリース
また、このDX推進のための組織体制とIT予算の増減傾向が密接に関わっていることも確認された。この組織体制の整備状況別にIT投資インデックスを見ると、DXのための何らかの組織体を持つ企業では、指数が軒並みプラス水準となっているのに対し、組織体を持たない企業(あるいはわからないとした企業)はマイナス水準となり、明暗が分かれる結果となった。また、「DXを推進する専任部門が設置されている」企業では、2021年度予想も3.22と2020年度とほぼ同じ増額の勢いを示しており、コロナ禍に伴う厳しい経済情勢下にあっても積極的なIT投資を継続する見通しが示された。

<参考資料3> IT投資インデックス(2020~2021年度予想):デジタル変革の専任部門の設置状況別
出典元:プレスリリース

■コロナ禍でデジタル化が加速すると考える企業ほどIT予算を増額

新型コロナウイルス感染拡大による企業のIT戦略遂行(デジタル化の進展)への影響をどのように認識しているかを調査し、IT予算との関連性を分析した。まず、コロナ禍においてIT戦略遂行(デジタル化の進展)が加速すると考えている企業は半数に上り、減速すると考える企業は2割にとどまった。特に「金融・保険」および「情報通信」においては、デジタル化が加速するとする企業が約6割と高い値となった。

この影響の認識別にIT予算の増減傾向を見ると、デジタル化が加速すると認識している企業ほど、2020年度および2021年度予想ともIT投資インデックスが高く、「大いに加速すると思う」と回答した企業は両年度とも4ポイントを超え、増額の勢いが強いことが示された。一方、「大いに減速すると思う」と回答した企業では両年度ともマイナス5ポイント前後となり、IT予算の減少傾向が顕著に表れた。

<参考資料4> IT投資インデックス(2020~2021年度予想):コロナ禍によるIT戦略遂行への影響認識別
出典元:プレスリリース

■コロナ対応とデジタル・シフトが製品・サービス投資を牽引

今回の調査では、製品・サービスの現在の導入状況と今後の投資計画を、5分野、全110項目について確認した。例年同様、全項目について導入企業における次年度の投資額の増減傾向を「投資増減指数」、次年度において新規で導入する可能性のある企業の割合を「2021年度新規導入可能性」としてそれぞれ算定し、動向を分析した。その結果、2021年度新規導入可能性では「5G(パブリック)」が、投資増減指数では「ビデオ会議/Web会議」がトップとなった。

<参考資料5> 2021年度に新規導入/投資増額が期待される上位10製品・サービス
出典元:プレスリリース
2021年度新規導入可能性で1位の「5G(パブリック)」は、大手通信キャリアが2020年3月下旬に商用サービスを開始したばかりでサービス提供エリアは限定的だが、8K映像のライブ配信、工場や建設現場などでの機械の遠隔操作、医療における遠隔診療・手術などのさまざまな可能性への投資意欲が表れているといえる。次いで2位には「電子契約/契約管理」、3位には「電子署名/タイムスタンプ」と、コロナ禍で多くの企業で課題となった、脱ハンコ関連の製品・サービスの導入を新たに検討している企業が多いことがうかがえる。

投資増減指数で1位となった「ビデオ会議/Web会議」は、導入済み(全体の半数強)の企業においてコロナ禍の在宅勤務対象の従業員が拡大したことを受けて、ライセンス数を増やしたり、クラウドサービスへ移行したりするなど、2021年度も投資が拡大することが予想される。また、AI/IoTとの関連が深い最新技術に先行投資している企業では、投資を増額する意欲が高く、「ローカル5G」「エッジ・コンピューティング」の投資増減指数は順に2位、5位と上位に位置している。また、「RPA」の投資増減指数は、2018年の調査以降、毎年上位にランクインしているが、2021年度も追加投資の継続が予測される。
調査の概要
本調査は、ITRが2020年8月21日から9月1日にかけて実施したもので、ITRの顧客企業や主催セミナーへの出席者ならびにWeb調査の独自パネルメンバーなどのうち、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者に対して、Web経由で回答を呼びかけた。その結果、2,667人から有効な回答を得た。本調査結果の全結果および分析は、『国内IT投資動向調査報告書2021』としてITRのWebサイトを通じて、販売を開始した。

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