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Google、「新型コロナウイルス感染予測」の日本版を公開

Google Cloud は2020年8月にHarvard Global Health Instituteとのパートナーシップのもとで COVID-19 Public Forecasts を公開した。
このサービスは予測開始日から将来14日間における米国内のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)陽性者数や死亡者数などの予測を提供している。今回、本サービスを日本にも拡張し、COVID-19 感染予測(日本版)の提供を開始する。日本版では予測開始日から将来28日間のあいだに予測される国内の陽性者数や死亡者数等の予測値を表示する。

米国で提供しているCOVID-19 Public ForecastsはAIと膨大な疫学的データを組み合わせ、さらに、時系列の予測を扱う斬新な機械学習のアプローチを採用することで実現。米国向けのこの初期モデルは今年8月に初公開され、現在も無償で予測情報を提供している。この情報はジョンズ ホプキンス大学、Descartes Lab、米国国勢調査局などの一般公開データを基にしており、Harvard Global Health Instituteの監修のもとで更新を続けている。今回、日本に拡大するにあたり、新たに95%予測区間やデータセットの追加に加え、予測対象期間を拡張した他、モデルの強化による予測精度の改善を行った。

今回公開されたCOVID-19 感染予測 (日本版) では、日本全国での感染の広がりに関する予測情報を提供する。このデータは都道府県別に、対象期間である将来28日間のあいだに予測される死亡者数、陽性者数、入院・療養等患者数などを示す。また、全国の予測値は都道府県の予測値を足し合わせている。これらの情報はダッシュボードで見られる他、BigQueryやCSVファイルとして利用できる。このモデルは、医療機関や公的機関をはじめとする新型コロナウイルスの影響を受ける組織が、今後に向けてより適切な対処を検討・準備する上で参考情報の一つとして利用されることを目的に公開しているとのことだ。
出典元:プレスリリース
米国版モデルを日本に対応させるにあたって行った調整

この予測モデルを日本に対応させるに当たり、以下のような調整を行っている。

まず、感染の態様や広がり方(ダイナミクス)の基本条件は、米国版モデルでも日本版モデルでも同じである(例えば、感染は離れた場所よりも近隣の地域で広がりやすい等)という前提のもとに開発されている。その上で、日本版モデルでは、日本のデータセットのみを利用してトレーニングを行っており、使用したデータには厚生労働省が発表している新型コロナウイルス感染症陽性者数および死亡者数等のオープンデータ、Googleのコミュニティ モビリティ レポート、平成27年国勢調査結果などが含まれている。この様に陽性者数や入院・療養等患者数、死亡者数、また人々の移動状況について国内のデータを使用しているため、予測結果には国内の感染状況やそれに対する人々の反応、さらに生活環境といった日本独自の状況が反映されているという。

予測モデルの精度検証では、特定の日付までのデータでトレーニングを行った後、その先28日間の予測データを出力させ、実測値と予測値を比較した。たとえば、10月1日までのデータでトレーニングを行った場合は、10月2日から30日までの予測値を出力させ、そのデータを同期間の実測値と比較する。検証の結果、一般的な疫学的コンパートメントモデルや検証用の米国データで十分な精度を示した簡易版モデルと比較して、この予測モデルの精度が優れていることを確認した。さらに28日間の予測以外の各種指標についても米国向けモデルと変わらない精度であることを確認しているとのことだ。

日本版モデルの開発にあたっては、使用データの包括性、予測結果と国内感染状況との整合性、さらに、モデルの設計及び予測データの検証において慶應義塾大学 医療政策・管理学教室 教授 宮田裕章先生および研究室の先生が監修。宮田裕章先生は以下のようにコメントしている。「この日本版 COVID-19 予測モデルを学術的な観点からも検証しました。あくまでも限られたデータからの予測であるという限界を正しく踏まえて活用することができれば、このモデルは日本のコロナ対策においてとても重要な手がかりとなります。COVID-19 陽性者数、入院・療養等患者数、死亡者数における、タイムリーな予測を行うことで、政府や地方自治体のより素早く正確な現状把握と対応計画に役立ちます。Google が提供する予測モデルのデータや慶應義塾大学が関与している新型コロナ対策の各種アンケート結果といった様々なデータを組み合わせ、照らし合わせて検討することで、迅速かつ効果的な対策を提案することができるようになるでしょう」

この予測モデルは、例えば感染者数の予測値をデータポイントの一つとして参照することで、医療機関における医療資材やスタッフ、スケジュール等のリソースプラニングや、検査実施計画の立案、感染拡大の兆候が見られる地域の早期発見等に活用することができる。繰り返しになるが、あくまで医療機関や公的機関をはじめとする新型コロナウイルスの影響を受ける組織が、今後に向けてより適切な対処を検討・準備する上で参考となる情報の一つとして利用されることを目的に公開しているという。

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