本研究成果は、臨床現場における医療機器AIとしての活用を可能にするだけでなく、AIを扱う医師が医療現場においてAIを信頼して用いる事にも貢献することが期待されるという。なお本研究は国際医療福祉大学医学部循環器内科および立命館大学情報理工学部創発システム研究室との共同研究で行われた。
同社は、AIを用いた心電図解析ソフトウェアの臨床現場における実用化と普及を目指して開発を進めている。従来、ニューラルネットワークをはじめとするディープラーニング技術を用いたAIは、なぜAIがその結果を示すことになったかの根拠を示すことができないブラックボックス性が問題だった。そこで、本研究チームはニューラルネットワークを用いて心電図解析を行うAIについて、使用する医療者に対してAIが検出した根拠を示す技術の開発を行ったとのことだ。
AI-ディープラーニング技術の代表的手法である畳み込みニューラルネットワークを用いた心電図波形の解析に関しては、ここ数年でいくつか報告がされているが、本研究では長時間心電図(ホルター心電図)検査の波形を対象にしたAI心電図解析プログラムの開発を行った。開発に用いた心電図波形の件数は57,273件あり、そのデータに心臓専門医が行った診断データを学習データとして用いた。このAIプログラムの性能評価を行ったところ、代表的な不整脈である心房細動検出精度は、感度97.1%、特異度94.5%、精度95.3%であり、検出精度は心臓専門医に匹敵するものだったという。さらにディープラーニング技術を応用して構築した、説明をしてくれるAI(以下、説明可能AI)が提示する検出根拠部位(図1)の精度を評価したところ、AIが提示した検出根拠部位の94.5%は心臓専門医の目で見て妥当な部位であることが明らかになったとのことだ。
図1:赤い部分が説明可能AIが提示した心房細動の検出根拠部位
心房細動に特徴的な細動波と呼ばれる異常部位を認識していることが分かる (原論文より改変引用)
これまでのディープラーニング技術を用いたヘルスケアにおけるAIは、そのブラックボックス性が利用にあたっての大きな課題だったという。今回開発に成功した説明可能AIは、今後AIを使用する医療者が安心してAIを診断サポートとして活用するためには必須の技術とのことだ。AIが診断サポートだけではなく、医師が注目するべき部位まで説明してくれる技術を取り入れることにより、専門医でなくとも精密検査や的確な診断を行うことが可能になる。このことで増加する心臓病の早期診断を可能にすることで、より多くの患者の医療福祉に貢献することが期待できるとのことだ。